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続・持続可能的計画経済論:総目次

2023-01-22 | 〆続・持続可能的計画経済論

本連載は終了致しました。下記目次各「ページ」(リンク)より全記事をご覧いただけます。


序言 ページ1

第1部 持続可能的計画経済の諸原理

第1章 環境と経済の関係性

(1)科学と予測 ページ2
(2)環境倫理の役割 ページ3
(3)古典派環境経済学の限界 ページ4
(4)環境計画経済モデル ページ5
(5)環境と経済の弁証法 ページ6
(6)非貨幣経済の経済理論 ページ7

第2章 計画化の基準原理

(1)総説 ページ8
(2)環境バランス①:「緩和」vs「制御」 ページ9
(3)環境バランス②:数理モデル ページ10
(4)物財バランス①:需給調整 ページ11
(5)物財バランス②:地産地消 ページ12
(6)物財バランス③:数理モデル ページ13
(7)自由生産領域の規律原理 ページ14

第3章 計画組織論

(1)総説 ページ15
(2)計画過程の全体像 ページ16
(3)世界計画経済の関連組織 ページ17
(4)領域圏計画経済の関連組織 ページ18
(5)地方経済計画の関連組織 ページ19

第2部 持続可能的経済計画の過程

第4章 計画化の時間的・空間的枠組み

(1)総説 ページ20
(2)計画の全般スケジューリング ページ21
(3)領域圏経済計画の地理的適用範囲 ページ22
(4)領域圏経済計画のスケジューリング ページ23

第5章 経済計画の細目

(1)生態学的持続可能性ノルマ ページ24
(2)産業分類と生産目標 ページ25
(3)世界経済計画の構成及び細目 ページ26
(4)領域圏経済計画の構成及び細目 ページ27
(5)広域圏経済計画の構成及び細目 ページ28
(6)製薬計画の特殊な構成及び細目 ページ29

第3部 持続可能的計画経済への移行過程

第6章 経済移行計画

(1)総説 ページ30
(2)経済移行計画の期間 ページ31
(3)「経過制」か「特区制」か ページ32
(4)「貨幣観念」からの解放 ページ33
(5)告知と試行 ページ34

第7章 経済移行計画Ⅰ:経過期間

(1)経過期間の概要 ページ35
(2)基幹産業の統合プロセス ページ36
(3)経済計画会議準備組織の設立 ページ37
(4)消費事業組合準備組織の設立 ページ38
(5)貨幣経済廃止準備 ページ39
(6)土地所有制度廃止準備 ページ40
(7)農林水産業の統合化 ページ41
(8)製薬事業機構等の設立準備 ページ42

第8章 経済移行計画Ⅱ:初動期間

(1)初動期間の概要 ページ43
(2)貨幣制度廃止①:金融清算法人と金融清算本部
(3)貨幣制度廃止②:一元的貿易機構と外貨決済店舗 ページ44
(4)経済計画会議及び各種企業体の設立 ページ45
(5)第一次三か年計画の始動

第9章 経済移行計画Ⅲ:完成期 ページ46

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続・持続可能的計画経済論(連載最終回)

2023-01-20 | 〆続・持続可能的計画経済論

第3部 持続可能的計画経済への移行過程

第9章 経済移行計画Ⅲ:完成期

 経済移行計画の最終段階は、完成期である。これは持続可能的計画経済のシステムが確立された段階を意味するが、問題は何をもって完成したとみなすかである。
 理論上の完成期とは先に『持続可能的計画経済論』で示したような諸制度がすべて出そろい、第二次以降の各次経済計画が動き出した段階であるが、より総括的に、システムが確立されたと言い得る最低必要条件を示すと、次のようになる。


(イ)世界経済計画の確立
 そもそも持続可能的計画経済における「持続可能」とは地球環境の持続可能性を意味しているから、持続可能的計画経済の完成型は世界共同体経済計画機関を軸とする全世界レベルでの経済計画システムである。
 そのため、国際連合に代わる新たな民際統治機構となる世界共同体(世共)の創設及びその専門機関としての世共経済計画機関の設立が完成の前提条件である。そのうえで、世共経済計画機関が策定する世界経済計画に基づいた各領域圏ベースの各次経済計画が運用されるようになって初めて完成型となる。

(ロ)純粋自発労働制の確立
 持続可能的計画経済の本旨は貨幣経済によらない生産と労働にあるから、無償の純粋自発労働制が確立される必要がある。これは貨幣制度が廃止される初動期間から開始されることであるが、確立までには一定の時間を要するであろう。
 その過程で、市場経済下では賃金制に支えられて初めて成り立っていたいくつかの職種がある種の淘汰を受け、消滅する可能性がある。その補充として、適性に基づく職業配分制の導入、ロボットやAIによる自動化の推進、それらが困難な場合は当該職種を当面は市民全員の義務労働とするなどの対策が必要になる。

(ハ)無償供給制の確立
 賃金労働が廃され、労働と生活が分離される持続可能的計画経済下で日常生活を支える物資及びサービスの無償供給制が確立される必要がある。これも初動期間から運用が開始されているが、初動では物資不足や流通不全などの欠陥が発現する可能性がある。完成期には、そうした欠陥の修正がなされ、無償供給制が円滑なシステムとして運用される状態が確立されていなければならない。
 それまでは無償供給制の外部で行われる物々交換による自由供給慣習で補充される可能性があるが、持続可能的計画経済はこうした慣習を違法な「闇経済」とはみなさず、完成期においても合法的な自由交換経済として並行的な存続が認められる。

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続・持続可能的計画経済論(連載第44回)

2023-01-16 | 〆続・持続可能的計画経済論

第3部 持続可能的計画経済への移行過程

第8章 経済移行計画Ⅱ:初動期間

(4)経済計画会議及び各種企業体の設立
 経済移行計画の初動期間には、初めの一歩となる第一次3か年計画を策定・施行するうえで不可欠な制度である経済計画会議の創設及び経済計画の主体となる企業体(計画企業体)の設立がなされる。
 これは、経過期間において設立されていたそれぞれの準備組織が正式の組織として立ち上げられることを意味している。計画企業体としては、経済計画の主体でもある各種の生産事業機構や消費事業組合が正式に発足する。

 同時に、計画対象外の自由生産を担う生産事業法人や生産協同組合、協同労働グループといった新しい自由生産企業体(拙稿)の設立も、初動期間に集中的に行われる。
 その点、資本主義経済体制下では多くの民営企業体が株式会社形態を取っているところ、貨幣経済の廃止を前提とする持続可能的計画経済体制下ではそもそも株式による資金調達という営為がなくなるので、株式会社や株式市場の存在余地はない。そこで、株式会社(その他の営利企業形態も同様)は上掲三種の企業形態のいずれかに一斉転換されることになる。
 もっとも、まだ貨幣経済が残存している経過期間にあっては株式会社形態も存置されているが、各企業の判断による経過期間中の企業形態の変更も可能となるよう経過措置法を用意することが望ましい。

(5)第一次3か年計画の始動
 経済移行計画における初動期間の最終段階は、第一次3か年計画の始動である。これはまさに持続可能的計画経済における初めの一歩であり、その成否が計画経済全般の成否を分けることになる重要な第一歩である。
 ただし、先述したように、初動段階では貨幣による対外貿易が残存していることが想定されるため、第一次3か年計画にはそうした貿易計画も盛り込まれる点で、経済移行計画が終了する完成期における経済計画とは異なる特質がある。
 その意味で、第一次3か年計画はまだ経過期間の要素を残した過渡的な内容となり、海外情勢によっては、第二次以降の後続3か年計画でもなお貿易計画が残存する可能性もあるであろう。
 いずれにせよ、第一次3か年計画は初動期間の集大成であるとともに、持続可能的経済計画の完成期へ向けた推進力となる起点でもあり、同時に後続経済計画の先例ともなるため、慎重かつ精緻に策定する必要がある。

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続・持続可能的計画経済論(連載第43回)

2023-01-06 | 〆続・持続可能的計画経済論

第3部 持続可能的計画経済への移行過程

第8章 経済移行計画Ⅱ:初動期間

(3)貨幣制度廃止②:一元的貿易機構と外貨決済店舗
 前回も記したように、貨幣制度廃止は条約に基づき一斉に実施するほうが徹底し、混乱も最小限に抑制できるが、実際上はそうした一斉の適用が至難とすれば、貨幣制度廃止が世界に波及するには時間差が避けられない。
 そうした場合、まだ貨幣制度を廃止していない外国との間の貿易関係に支障が出る。このことは、とりわけ輸入依存率が高い領域圏にとっては大きな問題となる。ただ、前回も見たとおり、さしあたり廃止されるのは自(国)通貨であり、外貨は廃止されない。
 そこで、貨幣制度廃止を担う中央銀行は貿易決済に必要な外貨準備を保有したうえ、当面継続される対外貿易に投入できるようにする必要がある。その場合、輸出入に関わる貿易会社を統合し、あるいはより緩やかに合同したうえで、一元的な貿易窓口となる暫定的な貿易機構を設け、対外貿易を継続することになる。
 なお、本来の「貿易」には当たらないが、個人が海外から物品を外貨で購入する場合も、この一元的貿易機関が仲介する仕組みを備えることが考えられてもよいであろう。
 この件とは別に、貨幣制度の廃止がタイムラグを伴う場合に発生し得る現実的な問題として、まだ貨幣制度が廃止されていない海外から無償で物品を取得しようとする外国人のツアー客が殺到しかねないということがある。 
 このような海外からの「爆買いツアー」現象は市場経済下にあっても見られ、需給関係を攪乱する要因となっているが、貨幣制度が廃止されて物品が無償供給されるようになれば、情報を聞きつけた海外からのツアー客が押し寄せることは充分に予測できる。
 これにより初動期間の計画経済が攪乱される事態を防止するためには、さしあたり永住者や所定期間の長期滞在者は別として、一時滞在外国人に対しては原則として無償供給を禁じたうえ、一部の外貨決済店舗でのみ物品の購買を認める特例をもって規制的に対応することになるだろう。
 こうして、貨幣経済が廃止された初動期間にあっても、貿易の継続と合わせて、対外的な関係ではなお貨幣交換を伴う商品形態が一部残存することになるので、この期間は持続可能的計画経済の完成にはいまだ至らない。

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続・持続可能的計画経済論(連載第42回)

2023-01-02 | 〆続・持続可能的計画経済論

第3部 持続可能的計画経済への移行過程

第8章 経済移行計画Ⅱ:初動期間

(1)初動期間の概要
 第7章で見た経済移行計画の実施プロセスにおける経過期間を過ぎると初動期間に入るが、初動期間はまさに持続可能的計画経済の開始段階に当たる。ここでの中心的なイベント(出来事)は第一次経済3か年計画の始動である。
 その前提として、持続可能的経済計画の核心でもある貨幣制度の廃止も大きなイベントであり、結局、貨幣制度の廃止及び第一次3か年計画の始動の二つが初動期間における二大イベントとなる。
 初動期間は周到に計画された経過期間における種々の準備行為に基づいて展開されるため、相当量の複雑な移行作業を要する経過期間に比べて単純であり、如上二大イベントに集約され、初動に伴う混乱も最小限度に抑えられる。


(2)貨幣制度廃止①:金融清算法人と金融清算本部
 初動期間におけるイベントの中でも重大なものは、貨幣制度の廃止である。ここで言う貨幣とは国家が発行する通貨を指す。よって、正確には通貨制度の廃止である。後に改めて言及するように、私的団体が発行する私的通貨はここでの廃止対象に含まない。
 通貨制度及び通貨による交換経済の廃止はほとんど文明史的な転換を意味するため、経過期間においては経済混乱を避けるためにもなお基本的に存置されているが、初動期間においてはその全廃が目指される。
 その点、全世界に及んでいる通貨制度を混乱なく全廃するには、条約に基づき全世界一斉に実施することが望ましいが、それは理想型ではあれ、実現は至難であるので、ここでは個別的な領域圏ごとの法令に基づいて行うケースを想定する。
 通貨制度廃止法令は公布即施行され、それに基づき既存通貨は将来に向けて失効する(遡及しない)。ただし、外貨は別であり、外貨については当該外貨を発行する外国政府(または領域圏)が通貨を廃止するまでは有効である。
 通貨制度の廃止とは既存の金融システムの清算作業であるから、そうした作業の主導機関は中央銀行がふさわしい。中央銀行は近代的な貨幣経済にあっては通貨制度の番人であるとともに、通貨制度の清算人ともなり得るからである。
 具体的には、法令に基づき市中銀行及びその他全種別の金融機関の清算法人を立ち上げたうえで、それらを中央銀行内に設置された金融清算本部に包括的に接収し、全金融口座を整理する。
 これらの清算口座内の預金はすべて中央銀行の管理下で封鎖・無効化されるが、上述したとおり、領域圏ごとに通貨制度を廃止する場合、いまだ通貨制度を維持する諸国の外国人(法人を含む)名義の口座については引き出し・返還の手続きを進める必要がある。
 中央銀行は通貨制度廃止の全プロセスを見届けたうえ、最終的に自らも清算・廃止されることになるが、金融清算本部は分離され単立機関となった後、通貨制度廃止後の残務処理機関としてしばらく存置される。
 なお、金融機関に預金されていないいわゆるタンス預金のような手元貨幣も通貨廃止法令に基づき失効するため、改めて供出を求めたり、押収したりする必要はなく、現在における古銭と同様に古物化し、所持者の私的所有に帰することになる。

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続・持続可能的計画経済論(連載第41回)

2022-12-06 | 〆続・持続可能的計画経済論

第3部 持続可能的計画経済への移行過程

第7章 経済移行計画Ⅰ:経過期間

(8)製薬事業機構等の設立準備
 薬剤は最広義の意味における食品に分類できるが、一般の食品とは目的・性質が大きく異なるため、通常の消費財に係る消費計画とも、また基幹的な産業分野の生産計画Aや農林水産分野の生産計画Bとも区別された製薬固有の生産計画Cに基づいて生産される(拙稿)。
 その点、薬剤は原則として世界のすべての個人の生命・健康を保持するべく普遍的に供給されるべき性質を持つことから、基軸的な薬剤については世界共通計画のもとに製造・供給されることが本則である(拙稿)。
 そのうえで、各領域圏ごとの生産計画は、製薬企業体を統合した製薬事業機構が自主的に立案し、施行することになる。経過期間においては、製薬事業機構の設立準備として、個別の製薬企業の統合化が目指される。
 とはいえ、既存の製薬企業すべてを統合化する必要はなく、医師の処方箋医薬品となる代表的な疾患の治療薬やワクチンなどの基本薬剤及び少数の難病治療薬としての特殊薬剤の製造を担う企業の統合をもって足りる。
 しかも、既存企業の全社的な統合である必要もなく、一部部署を分社化したうえでの統合であっても差し支えない。統合されない残部署、処方箋医薬品の製造に関わらない製薬企業はそのまま自由生産企業として存続する。
 ちなみに、製薬事業は薬剤の有効性及び安全性の事前・事後の審査を行う独立かつ中立の薬剤規制監督制度の存在と不可分であるから、製薬事業機構とは完全に別立てとなる規制監督機関の設立準備も並行して実施される。
 この機関は企業体ではなく、基本的に行政機関の性格を持つが、事前的な有効性・安全性審査機関と事後的な安全性審査機関とを分立するべきである。
 そのうち、後者の事後的な安全性審査機関は患者からの具体的な薬害の訴えを審理し、被害者の救済や関係者の処分も行う護民司法的な機能を備えた機関とするため、医学者・薬学者のみならず、薬事法に精通した法曹も参与する機関となる。

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続・持続可能的計画経済論(連載第40回)

2022-12-05 | 〆続・持続可能的計画経済論

第3部 持続可能的計画経済への移行過程

第7章 経済移行計画Ⅰ:経過期間

(7)農林水産業の統合準備
 持続可能的計画経済にあっては、食糧生産に関わる農林水産業は基幹産業分野の生産計画Aとは区別された生産計画Bとして別立てとなるが(拙稿)、計画の立案と実施は農林畜産事業機構または水産事業機構といった統合企業体自身によって行われる。
 経過期間においては、そうした生産計画Bの計画主体となる統合企業体の設立に向けた準備過程が遂行される。中でも、農林畜産分野は土地制度とも密接な関連を有するので、前回見た土地所有権制度の廃止過程とも重なる。
 すなわち、農林畜産業の生産要素となる農地や林野、牧草地もすべて所有権観念から解放され、無主物として公的な管理下に置かれることが前提である。その点でも、しばしば社会主義的な「農地改革」政策として実行される農地の接収と分配とは全く異なるプロセスとなることに留意される必要がある。
 そのうえで、経過期間開始時に農林畜産業がいかなる経営形態を採っているかにより、準備過程の様相も異なる。自営的家族経営形態が主流を占めている場合は、統合企業体の設立はゼロからのスタートとなるため、各経営家族への告知と試行を通じた慎重な過程となる。
 自営的家族経営形態を前提としながら、協同組合組織が定着している場合は、それらの協同組合組織を合同して統合企業体を結成することは比較的容易である。その場合、協同組合の中央組織が核となる。
 いずれも場合も、旧来の農林畜産業者は将来の農林畜産事業機構の現地管理者または農林畜産労働者に対する業務指導員として包摂されることになるため、そうした地位の変更に伴う研修も必要となる。
 一方、経過期間開始時に未だ半封建的な大土地所有制が存残している場合、土地所有権を喪失した旧地主のうち、不在寄生地主ではなく、自ら現地で農林畜産経営に従事していた者は、農林畜産事業機構の現地管理者として再雇用される余地がある。
 以上の基本的なプロセスは水産分野にもほぼ妥当するが、水産分野で土地に相当する水域は元来、個人的所有権の対象ではないため、農林畜産分野のような所有権廃止と関連した準備は要しない。
 ただし、経過期間開始時に漁船所有者による網元制度のような半封建的な漁業経営形態が依然として残存している場合は、そうした旧制の解体プロセスが先行し、然る後に統合企業体の設立過程に入ることになろう。

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続・持続可能的計画経済論(連載第39回)

2022-11-25 | 〆続・持続可能的計画経済論

第3部 持続可能的計画経済への移行過程

第7章 経済移行計画Ⅰ:経過期間

(6)土地所有制度廃止準備
 移行期における貨幣制度廃止準備と並ぶ関門は、土地所有制度の廃止準備である。すなわち、土地を何者にも属さない無主物として管理するシステムへの移行である。
 ここで留意すべきは、このプロセスは従来しばしば社会主義的土地政策として諸国で施行されることもあった土地の国有化とは全く異なるということである。土地の国有化は、土地の所有権主体を私人から国に移転させるのみで、土地所有という観念をなお残している。
 しかし、ここで言う土地所有制度廃止とは、そもそも土地を「所有」という観念から解放し、野生の動植物と同様に所有権主体を有しない自然物とすることを意味している。言わば、地球そのものを元の自然状態に戻すことである。
 従って、土地の個別的な接収のように有償ではなく無償の法的措置となるが、国その他の公共団体が私有地を強制的に無償で接収する社会主義政策とも異なり、単に法的観念のうえで土地所有権を消滅させるものである。
 もっとも、このことは土地を原始的な無管理状態で放置することを意味しないから、各領域圏ごとに土地を公的に管理するシステムを構築しなければならない。そうしたシステム構築の準備は移行期に開始される。
 その第一段階は、土地所有権消滅法の制定である。これは土地所有制度廃止の法的根拠となる法律である。ただし、混乱を避けるため、土地所有権の消滅は遡及的でも即時的でもなく、将来の期日を定めた将来効とする。
 第二段階は、将来の土地管理機関の前身となる組織の設立である。土地管理機関は無主物化された土地の公私の利用や処分全般に関する事務を所掌する公的機関であるが、その前身組織としては現行の土地登記機関(登記所)を統合して設立することが簡明であろう。
 登記所は土地所有制度を前提に私有地の現況を公示する登記の事務を所掌する機関であり、現状では登記の形式的な事務のみを扱うが、錯綜した土地の所有に係る情報を包括的に把握している公的機関であるから、これを移行的に土地管理機関に再編することは合理的と考えられる。
 なお、将来の土地管理機関は土地の侵奪や押領などを取り締まる警察機能を備えるので、その前身組織にも法執行部署を設置し、不動産事犯の取締り態勢を準備する。

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続・持続可能的計画経済論(連載第38回)

2022-11-20 | 〆続・持続可能的計画経済論

第3部 持続可能的計画経済への移行過程

第7章 経済移行計画Ⅰ:経過期間

(5)貨幣経済廃止準備 
 移行期にはまだ連鎖的な貨幣交換で成り立つ資本主義は完全には廃されず、その相当部分が残されたままである(残存資本主義)。しかし、この時期からほとんどの人にとって未知の新経済システムに適応するための試行を展開することは、円滑な移行を達成するうえで不可欠である。 
 こうした貨幣経済廃止準備は移行過程における最大の眼目であるとともに、最大の難関でもある。これに失敗した場合は、経済の混乱と物資不足、飢餓さえもあり得るので、最も慎重な熟慮のもとに遂行する必要がある。
 その点、貨幣経済廃止の到達点は通貨制度の全廃にほかならないが、これは経過期間を過ぎた初動期間の達成課題となる。その手前の経過期間では通貨制度は残存したまま、デノミネーションのようなショック措置も行うことなく、試行的な準備措置が採られる。
 経過期間における準備措置としては、以前見た経済計画会議準備組織も、経過期間を通じて貨幣交換によらない経済計画の策定について予行演習を行うが、これはもとより計画経済の対象範囲に含まれる基幹的生産活動における机上演習である。
 それに対して、市民の日々の暮らしに直結する消費財の貨幣交換によらない無償供給に関する予行演習は、先述した消費事業組合準備組織を通じて行われる。こちらは机上演習ではなく、主に食糧を中心とした日常必需品及び一部の雑貨的有益品の取得数量規制付きでの無償供給を実際に試行するものである。
 いかなる品目で試行するかは政策的な問題となる。こうした部分的な物資の無償供給は戦時/災害時の配給制に似ているが、配給制のような時限的な臨時措置ではなく、来る貨幣経済廃止に向けた準備措置であるから、経過期間の進行に合わせて、対象品目は次第に拡大していく。
 なお、電力やガスのような基本的光熱サービスの供給事業はエネルギー産業分野として経済計画会議準備組織の所掌事業に含まれるが、消費財の無償供給と合わせ、経過期間の段階から、こうした基本的光熱サービスの無償供給試行を開始することも想定される。

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続・持続可能的計画経済論(連載第37回)

2022-11-13 | 〆続・持続可能的計画経済論

第3部 持続可能的計画経済への移行過程

第7章 経済移行計画Ⅰ:経過期間

(4)消費事業組合準備組織の設立
 持続可能的経済計画の二本目の柱として、広域的な地方圏単位での消費計画がある。これは持続的計画経済システムが完成された段階では、地方圏ごとに組織された日常消費財の供給にかかる協同組合組織である消費事業組合自身が策定する地方的な経済計画となる(拙稿)。
 経過期間においては、こうした消費事業組合の前身組織となる包括事業体が設立される。この事業体は基幹産業分野における包括企業体と類似した構制を持つが、将来の消費事業組合は同時に経済計画機関でもあるため、消費事業組合の前身事業体は計画機関を見据えた準備組織でもある。
 すなわち、将来の消費事業組合は貨幣経済によらない計画的な無償供給システムの中核を担う組織ともなるので、経過期間における消費事業組合準備組織はそうした無償供給システムの構築に向けた準備と予行という重要な任務を担う。
 こうした消費事業組合準備組織は発達した資本主義経済体制下でもしばしば商業的な小売流通資本と併存している生活協同組合組織に類似しており、既存の生協組織を再編することによって設立することも可能であろう。
 生協組織が存在しない場合、または存在する場合でも、現代の資本主義体制下で小売流通の中核を担うスーパーマーケットやコンビニエンスストアといった小売流通資本の統合が図られる必要がある。その統合過程は、基幹産業分野における包括企業体のそれに準じて考えることができる。
 ただし、併存する営利的な小売資本と生協組織という法的性質が相容れない事業組織を統合する場合は法的に困難な点もあるが、消費事業組合準備組織としての包括事業体は営利/非営利の対立を止揚した特殊な移行事業体として統合される。
 なお、準備組織は将来の広域的な地方圏単位で設立される消費事業組合の前身組織となるものであるので、広域圏ごとに分立する必要があるが、広域圏の区割りが未定の段階では、区割りを先送りして、さしあたり全土的な組織として暫定的に発足させてもよいであろう。

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続・持続可能的計画経済論(連載第36回)

2022-10-23 | 〆続・持続可能的計画経済論

第3部 持続可能的計画経済への移行過程

第7章 経済移行計画Ⅰ:経過期間

(3)経済計画会議準備組織の設立
 計画経済の対象範囲に含まれる基幹産業を統合した包括企業体を創設した後は、将来の計画経済の策定・実施機関となる経済計画会議の前身を成す経済計画会議準備組織(以下、単に準備組織)の設立に入る。
 持続可能的計画経済における経済計画機関は行政的な中央指令機関ではなく、計画経済の対象となる生産事業機構自身が共同して運営する合議機関であるので、その前身組織となる準備組織もまた同様の構成を有し、生産事業機構の前身となる包括企業体の合議組織(協議会)として構成される。
 そのため、発足当初の準備組織はある種の財界団体のような様相を帯びるであろうが、この準備組織はまさしく将来の経済計画活動の準備を目的とするから、経済計画の策定と実施に必要な物的・人的基盤の整備に努めることがその主任務となる。
 経済計画の策定と実施に必要な物的基盤としては、計画に投入される大型コンピュータ・システムが代表的なものである。後に補論として改めて触れるように、経済計画は精緻な計算科学の基盤の上に成り立つからである。
 一方、人的基盤としては、経済計画の実務において環境学的な観点から経済分析・予測をする必須の専門職である「環境経済調査士(エコロノミスト)」や環境経済学的なデータの収集・分析を行う「環境経済分析員」の養成と配置が中心である。
 将来的に完成される経済計画会議は、政治問題を審議・議決する民衆会議と並ぶある種の経済議決機関として民衆会議とは二院制のような両輪を成すことになるので(政経二院制)、準備組織も単なる社団法人のような組織ではなく、特殊な公共団体としての法的地位を持たせる。
 そのため、準備組織は各包括企業体の担当役員を代議員とする協議会として組織され、経済移行の経過期間内は、将来の正式な第一次経済計画の策定に向けた経済計画の机上演習を実施することも重要な任務である。

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続・持続可能的計画経済論(連載第35回)

2022-10-09 | 〆続・持続可能的計画経済論

第3部 持続可能的計画経済への移行過程

第7章 経済移行計画Ⅰ:経過期間

(2)基幹産業の統合プロセス
 経済移行計画における経過期間において最初の関門となるのは、基幹産業の統合である。持続可能的計画経済における基幹産業とは、計画経済の対象範囲となる業種である。
 何をもって基幹産業とみなすかは産業分類に関わることであるが、その項でも述べたように、環境的持続可能性の確保を主旨とする持続可能的計画経済における基幹産業とは、環境的負荷の大きな産業分野を意味する。
 具体的には、鉄鋼、電力、石油、造船、機械工業に加え、運輸、通信、自動車等々、資本主義経済体制下でも大企業として経済界の基軸となっている産業分野が含まれてくることになるだろう。なお、一般の生産計画とは別立てとなる製薬分野もこれに準ずる。
 これらの産業分野は持続可能的計画経済の完成期においては社会的所有企業としての生産事業機構として統合されるが(拙稿)、そうした将来の生産事業機構の前身となる包括企業体を設立することが、経過期間における基幹産業の統合の眼目である。
 ここで基幹産業の統合とは、しばしば社会主義的経済政策の定番としてかつて見られた民間企業の強制的接収を通じた「国有化」とは全く異なるプロセスであることが確認されなければならない。
 持続可能的計画経済は国という政治主体を想定していないから(拙稿)、「国有化」はそもそもあり得ない。むしろ、資本主義経済体制下では多くの場合、株式会社形態で存在している基幹産業企業体を業界ごとに統合し、一つの会社に再編することを意味する。
 その点、今日の資本主義経済体制にあっては、各業種ごとに同業競合会社が何らかの業界団体を結成しており、協調的行動を取る。
 もっとも、この業界団体は協調的に生産活動そのものを展開するのではなく、多くの場合、業界全体の利益を保持するため、政界に働きかけるある種の圧力団体として機能し、しばしば汚職温床ともなる利権団体でもある。
 これに対して、将来の生産事業機構の前身を成す包括企業体は、協同的に生産活動を展開することを目的とした協同事業会社であり、資本主義下では独占禁止法で禁じられるようなトラストを形成することになる。従って、こうした前身的な包括企業体を解禁するために、既存の独占禁止法を改正する必要が生じる。
 包括企業体の法的地位は、その発足時点においては、株式会社ではなく、特殊な移行会社である。従って、その内部構造としても、将来の生産事業機構に準じた経営委員会や労働者代表委員会などの機関(拙稿)を擁する。
 こうした企業統合のプロセスは法律に基づき命令的に実施されるもので、各企業体が任意の合意(契約)に基づいて行う企業合併とは全く異なることにも留意される必要がある。

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続・持続可能的計画経済論(連載第34回)

2022-09-25 | 〆続・持続可能的計画経済論

第3部 持続可能的計画経済への移行過程

第7章 経済移行計画Ⅰ:経過期間

(1)経過期間の概要
 最終的に全世界での貨幣経済の廃止に至る持続可能的計画経済体制の構築を目指す経済移行計画における三つの段階の出発点を成すのが、経過期間である。この時期は、資本主義市場経済を脱却する初めの一歩に相当する最も重要かつ機微なプロセスである。
 歴史上見られた経済システムの全般的な移行事例においても、この経過期間に相当する初めの一歩で大きな混乱が生じやすい。それは、移行を急ぐ政治主導で、しばしばショック療法的な一気呵成の移行が強行されるからである。
 そうした混乱を避けるためには、妥協なき漸進的な手法による計画的・段階的な移行準備のプロセスを確立する必要がある。ここで、漸進的な手法と言うと、しばしば妥協的と同義となり、移行が不完全になることが多い。しかし、漸進と妥協は同義でない。ここで言う漸進とは性急さを避けた着実な前進を意味している。
 具体的に言えば、持続可能的計画経済の柱を成す計画経済システムの構築及び貨幣制度の廃止へ向けた着実な準備を進めることが、この経過期間における最大の眼目である。
 その際、最も究極的かつ難関でもある貨幣制度の廃止に先立って、まず計画経済システムの構築を優先することが合理的である。その入口は、計画経済の対象となる基幹産業の統合である。
 その詳細は後述するが、簡単に言えば、現状ほとんどが株式会社形態で存在している基幹産業を業界ごとに統合した単一の包括会社に束ねるとともに、将来の経済計画機関の前身となる準備組織を設立することである。
 それに対して、貨幣制度の廃止は最も慎重に取り扱うべきプロセスとなるが、経過期間の段階では、まず消費財の貨幣交換によらない無償供給の試行から開始する。
 特に食品を中心とした日常必需品と一部の雑貨的有益品を対象とした物資の無償供給であり、この段階では市場経済と併存する配給制に類似するが、配給制よりも対象品目は多く、経過期間を通じて対象品目を漸次的に拡大していく。

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続・持続可能的計画経済論(連載追補)

2022-06-08 | 〆続・持続可能的計画経済論

第三部 持続可能的計画経済への移行過程

第6章 経済移行計画

(5)告知と試行
 およそ経済体制の抜本的な移行は、生産・流通・消費の全サイクルに大きな影響を及ぼすため、経済的な混乱が生じやすい。一挙に移行するショック療法的な方法によった場合は特にそうであるが、漸進的な方法による場合でも、混乱は生じ得る。
 そうした移行期特有の混乱を完全に防ぐ技術的な手立ては存在しないが、混乱を可能な限り最小限にとどめるためには、移行の各段階において告知と試行の手順を踏むことである。
 告知と試行とは、移行過程におけるプロセスの全体像と個別の具体的な施策を解説し、情報開示を十全に行ったうえで、各施策を試験的に施行しながら、移行過程を進行させていくことである。
 中でも、情報開示の意味を持つ告知は、移行過程での混乱を最小限とするうえで重要な鍵となる。個人を含めた経済主体は、告知によって先行きを予測し、準備することができるからである。そうした意味で、告知されることはすべての経済主体にとっての権利であるとも言える。
 告知には大別して、各産業界向けのものと各世帯向けのものとがあるが、いずれも公報や公式ウェブサイト等に一括公開する告示では足りず、書面化して個別に配布する必要がある。それゆえの「告知」である。
 産業界向け告知は、持続可能的計画経済の仕組みと移行過程を詳細に解説した通達文書を通じて、各事業主体に対し、移行に向けた自発的な準備を促すものとする。
 各世帯向け告知は、持続可能的計画経済のもとでの生産と労働、生活全般の仕組みを平明に解説した冊子を全世帯に配布することにより周知徹底し、不安の解消を図るものとする。
 こうした告知を前提に移行過程における個別の施策が計画的に施行されていくが、この移行施策にも、机上演習にとどまる場合と実際に実施される場合、後者にも部分的に実施される場合と全面的に実施される場合とがある。
 その意味で、移行期における施策は試行的であるが、経過期間→初動期間→完成期という移行過程の三段階の中でも、過渡的な経過期間は試行性が最も強く、その後、初動期間から完成期にかけて、全面的な施行へ進んでいくイメージである。

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続・持続可能的計画経済論(連載第33回)

2022-06-05 | 〆続・持続可能的計画経済論

第3部 持続可能的計画経済への移行過程

第6章 経済移行計画

(4)「貨幣観念」からの解放
 貨幣経済を廃する持続可能的計画経済への移行過程にあっては、円滑な移行を担保する技術的な諸政策も重要であるが、人々がほとんど無意識のうちに前提としている貨幣という観念から意識的に解放されるというある種の意識革命を促進することも不可欠である。
 現代世界では、あらゆる物やサービスを貨幣と交換で取得するという貨幣交換システムが強固に定着しており、人々は呼吸する空気とほぼ同等レベルで貨幣を無意識の前提としているため、貨幣交換に基づかず、無償または物々交換で回っていく経済システムを想定することができなくなっており、そうした提案を聞いても一笑に付するであろう。
 その点、生物としてのヒトが誕生してからいかにして貨幣交換の観念を習得していくのかは十分解明されておらず、誕生後の母語言語習得のプロセスと同様に謎である。家庭や学校で系統的に貨幣教育を実施しているといった事実はないから、母語言語と同レベルの無意識的な習得過程を経て、ある程度の年齢に達すれば自然に簡単な買い物はできるようになっているというのが大半のヒトの成長過程である。
 そのようにして自然に習得された貨幣観念から人々を解放することは容易でなく、貨幣観念の習得は無意識的に行われるとしても、それからの解放は逆に意識的かつ習練的に行われる必要がある。その過程や方法の考察は、これまでのところほぼ未開拓の行動経済学的な課題である。
 ここでも、ショック療法的に貨幣経済の廃止を即行する策を採るならば、一部の人々は反動から独り占めを狙った大量取得に走り、深刻な物資不足に陥る恐れがある。人間の物欲は貨幣経済下では貨幣の持ち高によって不平等に規制されているが、非貨幣経済下では別のより公平な方法で規制される必要がある。
 物欲が後天的に習得された欲望なのか、生物としてのヒトが生得的に備える欲求なのかは別としても、そうした物欲コントロールも、持続可能的計画経済にあってはその成否に直接関わる重要な課題であり、貨幣観念からの解放と表裏一体の行動経済学的な課題となる。
 それらの課題を負いつつ、貨幣観念からの解放も経済移行計画に組み込んで進めていく必要があるが、大枠として、出発点は情報提供と啓発、次いで限定的な非貨幣経済の試行、最終的には非貨幣経済の完全施行という段階を経過することが最も円滑な移行を保証することになるだろう(詳細後述)。

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