ザ・コミュニスト

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年頭雑感2010

2010-01-01 | 年頭雑感

昨年の漢字は「新」。これは、8月の総選挙で戦後初の完全なる政権交代が成った昨年にふさわしい選字と言える。たしかに、昨年の選挙結果は、長年の自民党優位が岩盤化した戦後日本にあっては、投票箱を通じた革命と呼んでもよいほどの「新」ではあった。

しかし、冷静に考えれば、これは2008年世界大不況の余波現象と言える。敗戦直後の破綻を除けば、戦後で例をみないほどの不況に陥ったショックが冷めやらない中で、レジームチェンジへの願望が高まったことが大きい。

それに加えて、自公連立の麻生内閣の不人気、さらにはその麻生内閣が解散総選挙を先伸ばして、支持率が落ち込んだ時に解散するという政治日程上のミスを犯した敵失にも助けられている。完全なる政権交代は、民主党を中心とする野党連合の完全なる自力で勝ち得たものではないことには留保が必要である。

他方、アメリカでも政権交代があったが、こちらの新しさは政権交代そのものではなく、史上初めてアフリカ系のバラク・オバマ氏が大統領に就任したことである。これは、黒人奴隷制と人種差別の黒歴史を持つアメリカではまさしく革命的な出来事であった。

だが、ここでもいくつか留保が必要である。まずこの政権交代はやはり2008年大不況の余波であること。アメリカはその震源地として最も破局的影響を被っていることが、レジームチェンジ願望を生んだ。

もう一つは、オバマ氏は黒人奴隷の子孫ではなく、アフリカからの直接移民の子弟であり、かつ母親は白人であるということである。つまり、アメリカにおける典型的な黒人―黒人奴隷の子孫にして混血していない黒人―ではなく、移民かつ混血であるということ。その意味で、彼をアメリカ史上初の黒人大統領と呼ぶことは、半分だけの正解である。

このように日米において昨年生じた「新」には慎重な留保が必要であり、どちらも今年以降の展開を見極める必要がある。「新」と見えたものがまさに見かけだけであったり、速やかに「旧」に復してしまうことは、歴史上しばしばあることだからである。

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