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●科学技術ニュース●ATR、世界初の人・AI共進化実験環境「ロボットスケートパーク」を整備

2024-05-03 09:34:11 |    ロボット工学
 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業」において国際電気通信基礎技術研究所(ATR)は、世界初の試みとして、人がスケートボードなどスポーツを実施する時の脳波・筋電・モーションキャプチャなどのデータ収集と、ヒューマノイドロボットによる学習実験を並行・連携して実施できる「ロボットスケートパーク」環境をATRに整備した。

 ATRは、京都大学、産業技術総合研究所(産総研)と共同で、同環境を活用し、実環境において人と共に学びながら協働作業ができる人工知能(AI)搭載ヒューマノイドロボットの実現に向けて、ロボット搭載用AIの俊敏な身体制御能力(身体性)と瞬間的な判断能力(実時間意思決定能力)を評価する研究に取り組む。

 今後、NEDOとATRは、「ロボットスケートパーク」の環境拡充を加速し、さまざまな分野の研究者が人・AI共進化の共同研究などを実施できる拠点を目指す。

(1)世界初、「ロボットスケートパーク」環境の整備

 スケートボード実施時の人の脳波・筋電・モーションキャプチャといったデータの同時計測と、ヒューマノイドロボットによる学習実験を並行・連携して実施できる実験環境「ロボットスケートパーク」を、ATR敷地内(京都府精華町)のロボット実験棟(床面積486.92平方メートル、高さ7メートル)内部に構築した。「ロボットスケートパーク」には、人やロボットのためのスケートボードランプ、人やロボットがスポーツをする際の安全設備、人やロボットの動きを計測するシステム、人の筋肉や脳の機能を同時計測可能とするワイヤレス計測システム、などが設置されている。こうした人とロボット(ロボット搭載用AIを含む)のデータ収集、学習を同時に行うことができる実験環境は世界初となる。

(2)「ロボットスケートパーク」環境の活用成果

 今回整備した「ロボットスケートパーク」にて、ATRが開発中の「サイボーグAI」を搭載したヒューマノイドロボットにより、曲率に変化があるような複雑な環境内において、人の俊敏な運動をまねる動作の生成を達成した。また、人が同様のスケートボード運動を行っている際の脳波・筋電などの生体信号を計測した結果、ポンピングやキックターンなどの運動が脳活動に関連があることも分かった。これは脳が制御する運動の単位に関わる可能性があり、ロボットが人をまねて学習する際に利用可能な要素であるだけでなく、人のスポーツの熟練度などの評価の目安となる可能性がある。さらに、人とロボットの運動を計算機上のサイバー空間で比較し、両者の類似性を視覚的に評価可能なソフトウエアを構築した。

 NEDOとATRは、京都大学、産総研との連携の下、同事業において、「ロボットスケートパーク」環境を拡充しつつ活用することで、「サイボーグAI」に関する基本技術の開発加速を図るとともに、さまざまな分野の研究者が人・AI共進化の共同研究などを実施できる拠点を目指す。

 また、2024年度には「NEDO懸賞金活用型プログラム」の中で「ロボットスケートパーク」環境にて収集したデータを活用したコンテストの開催を予定しており、連携して同コンテストのデータ整備のための調査を実施している。<新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)>
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