“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「超・進化論」(NHKスペシャル取材班、緑 慎也著/講談社)

2023-03-31 09:38:02 |    生物・医学



<新刊情報>



書名:超・進化論~生命40億年地球のルールに迫る~

著者:NHKスペシャル取材班、緑 慎也

発行:講談社

 同書は、NHKスペシャル シリーズ「超・進化論」全3回(第1集「植物」、第2集「昆虫」、第3集「微生物」)を書籍化。加えて、番組に登場する研究者の方々のインタビューを収録。生命誕生40億年のあいだに出来上がった地球の生き物の見えざるルールが、最先端科学で次々と解明されている。常識が180度くつがえる、生き物のネットワークや知られざる能力。なぜ、生き物はこんなに多様なのか。そこから進化の秘密も見えてくる【目次】プロローグ 「生物の多様性」その本当の尊さとは 第1章 植物──植物のメッセージが命あふれる地球を作った 第2章 昆虫 全生物を支えてきた奇跡の能力 第3章 微生物 見えない生物が進化の駆動力だった エピローグ 異種間のネットワークはまるで3次元の系統樹
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●科学技術ニュース●富士通と大阪大学、量子コンピュータの実用化を早める新たな量子計算アーキテクチャを開発

2023-03-31 09:37:33 |    情報工学
 富士通と大阪大学量子情報・量子生命研究センターは、このたび、量子コンピュータの実現に不可欠な量子エラー訂正に必要な物理量子ビット数を大幅に低減することで、現行コンピュータの計算性能を超える量子コンピュータの実用化を早めることが可能な高効率位相回転ゲート式量子計算アーキテクチャを開発した。

 従来の誤り耐性量子計算(FTQC:Fault-Tolerant Quantum Computationの略語で、量子エラーを訂正しながら誤りなく量子計算を実行すること)アーキテクチャでは、量子エラー訂正に大量の物理量子ビットが必要になるため、100万以上の物理量子ビットを有する量子コンピュータでなければ実用化が困難と言われている。

 そのため、物理量子ビット数が今後1万程度に到達した段階で量子エラー訂正を実行しても、計算可能な規模は極めて小さく、現行のコンピュータの処理能力を超えることは不可能と考えられていた。

 これまでのアーキテクチャでは、量子エラー訂正した4つの基本量子ゲートの組み合わせにより量子計算を実行しており、そのうち1つの基本量子ゲートには量子エラー訂正に大量の物理量子ビットが必要であったが、今回両者は、その基本論理ゲートを代替する手法を開発し、従来の1割の物理量子ビットで量子エラー発生を大幅に抑えられることを確認した。

 これにより、1万物理量子ビットがあれば、現行コンピュータにおける最高性能の約十万倍に相当する64論理量子ビットの量子コンピュータを構築することが可能となる。

 両者は今後、同量子計算アーキテクチャを発展させてEarly-FTQC時代(1万程度の物理量子ビットしか実装できておらず、FTQCが実現できないと考えられている時代)の量子コンピュータ開発を主導していくとともに、材料や金融領域などの実問題への早期適用を目指していく。<富士通>
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●科学技術ニュース●NIMS、ソフトバンクとオハラ、リチウム空気電池のサイクル寿命を大幅に向上させることに成功

2023-03-31 09:37:05 |    電気・電子工学
 物質・材料研究機構 (NIMS)は、ソフトバンク、オハラと共同で、各種先端分析技術を駆使することで、高エネルギー密度なリチウム空気電池の劣化反応機構の詳細を解析し、負極の金属リチウム電極の劣化がサイクル寿命の主要因であることを明らかにした。

 金属リチウム負極の劣化を抑制するために、軽量な保護膜を導入することで、高い重量エネルギー密度を維持しながらサイクル寿命を大幅に向上させることにも成功した。

 同研究成果は、リチウム空気電池の実用化に向け、大きな一歩となるもの。

 リチウム空気電池は、理論重量エネルギー密度が現行のリチウムイオン電池の数倍に達する「究極の二次電池」であり、軽くて容量が大きいことから、ドローンや電気自動車、家庭用蓄電システムなど幅広い分野への応用が期待されている。

 NIMSは科学技術振興機構 (JST) が高容量蓄電池の研究開発加速を目的に発足したプロジェクトである先端的低炭素化技術開発ALCA特別重点技術領域「次世代蓄電池」 (ALCA-SPRING) の支援の下、基礎研究を進めてきたが、2018年にソフトバンクと共同で「NIMS-SoftBank先端技術開発センター」を設立し、携帯電話基地局やIoT、HAPS (High Altitude Platform Station) などに向けて実用化を目指した研究を行ってきた。

 NIMS-SoftBank先端技術開発センターは、2021年に現行のリチウムイオン電池の重量エネルギー密度を大きく上回る500Wh/kg級リチウム空気電池を開発したが、そのサイクル寿命は10回以下であり、実用化に向けてはサイクル寿命の向上が課題となっていた。

 同研究チームは、これまで確立してきた様々な先端分析手法を用い、負極の金属リチウム電極の劣化が過電圧の増大を引き起こしていることを突き止めた。

 これまで、酸素正極反応の高い過電圧が、サイクル寿命が低くなる原因として考えられてきたが、このたびの研究結果は従来の定説を覆す重要な発見と言える。

 さらに、同研究チームは、金属リチウム負極の劣化を抑制するために、軽量性と柔軟性を兼ね備えた厚み6 μmの固体電解質膜を開発し、負極の保護膜としてリチウム空気電池に搭載した。その結果、高い重量エネルギー密度を維持しながらサイクル寿命を大幅に向上することに成功した。

 今後は、現在開発中の新規材料群をリチウム空気電池に搭載することで、サイクル寿命のさらなる向上を実現し、NIMS-SoftBank先端技術開発センターでのリチウム空気電池の早期実用化につなげる。<物質・材料研究機構 (NIMS)>
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「証明作法」(石原 哉著/共立出版)

2023-03-31 09:36:37 |    数学



<新刊情報>



書名:証明作法~論理の初歩から証明の実践へ~

著者:石原 哉

発行:共立出版

 同書は、「よい証明はわかりやすい」、「よい証明を書きたかったらよい証明をたくさん読むべきである」をモットーとして、数学の授業でオンザジョブトレーニングで学ぶことの多い証明の書き方について解説する書籍。前半では、まず論理への導入を行い、それから自然演繹と呼ばれる形式化に基づいて、日本語表現に近い形で証明の構成法をできるだけ丁寧に説明し、述語についても述べる。証明の構造の理解が容易になるよう、プログラミングで用いる字下げを活用している。後半では、前半で学んだことをベースとして、集合に関係する様々な問題に証明を与えていく。集合演算の基本的性質など、直観的に明らかな命題にも証明を与える。関係、写像、同値関係、順序について説明し、有向完備順序についても簡単に触れ、圏論で締めくくる。大学で証明を必要とする学生のみでなく、証明の書き方を学びたいすべての人にとって大変重宝する書籍となろう。
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「宇宙ベンチャーの時代」(小松伸多佳、後藤大亮著/光文社)

2023-03-30 09:35:58 |    宇宙・地球



<新刊情報>



書名:宇宙ベンチャーの時代~経営の視点で読む宇宙開発~

著者:小松伸多佳、後藤大亮

発行:光文社(光文社新書)

 宇宙開発の分野はこれまで政府が主導していたが、今、民間企業がイニシアティブをとった「ビジネス」として急速に生まれ変わりつつある。そして、「宇宙ベンチャー」と呼べる民間ベンチャー企業がこの流れを加速させている。転機となったのは2021年。アメリカの起業家イーロン・マスク氏が創設したスペースXなど複数社が宇宙旅行を成功させたことで、この年は「民間宇宙ベンチャー元年」と称される。日本でも、スタートアップや宇宙系以外の大手企業が続々と参入している。なぜ、民間宇宙産業が活況を呈しているのか。ベンチャー・キャピタリストとJAXAのエンジニアが「宇宙ビジネスの展望」を綴る。【目次】 第一章 宇宙ビジネス概観 第二章 3つの導線 第三章 3つの革新 第四章 宇宙ビジネスの注目8分野 第五章 政府事業から民間商業へ 第六章 スペースXが「宇宙ベンチャーの雄」となりえた理由 第七章 高い株価 第八章 動く日本第九章 リスクとどう向き合うか
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●科学技術ニュース●関西電力、国内最大のバイオマス発電所となる相生バイオマス発電所の本格運転開始

2023-03-30 09:35:30 |    ★バイオニュース★
 関西電力は、同社が出資する相生バイオエナジーが、2020年2月から木質ペレットを主燃料とする「相生バイオマス発電所」の建設を進めてきたが、2023年3月24日、本格運転を開始したと発表した。

 同発電所は、発電出力20万kW、国内最大のバイオマス発電所となる。

 バイオマス発電は、大気中のCO2を吸収しながら成長する植物に由来する燃料を使用する、カーボンニュートラルな発電方法のひとつ。

 同発電所の年間発電量は約13.5億kWhであり、一般の家庭に換算して約43万世帯分の年間使用量に相当し、年間約55万tのCO2削減を見込んでいる。

 同社グループは、2040年までに国内で再生可能エネルギー500万kWの新規開発、累計900万kW規模の開発に取り組んでおり、今後も引き続き、ゼロカーボン社会の実現を目指す。<関西電力>


事業者:相生バイオエナジー株式会社
出資会社:関西電力(60%)、三菱商事クリーンエナジー(40%)
所在地:兵庫県相生市相生柳山5315番地46
発電出力:200,000kW
発電電力量:約13.5億kWh/年
主 燃 料:木質ペレット
売 電 先(FIT 分): 関西電力送配電
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●科学技術ニュース●NIMSとクイーンズランド大学、粘土だけで室温近傍で化学反応を加速できることを発見

2023-03-30 09:34:44 |    化学
 物質・材料研究機構(NIMS)とクイーンズランド大学からなる研究チームは、粘土だけで、加温にも触媒 (希少金属を含むことが多い) にも頼らずに室温近傍で化学反応を加速できることを見出した。

 これはエネルギーも希少金属も必要とせずに反応加速する、新しい手段の提案であると言える。

 化学反応を加速するためには通常、反応系の温度や反応物質の濃度を上げる。または触媒 (活性化エネルギー <反応に必要なエネルギー>を低くする物質) の導入で反応を加速できる場合がある。

 しかし、物質の安定性などの問題で温度を上げられない、溶解度が低いなどの理由で濃度を上げられない、触媒となるものが見つかっていない反応も数多く、その様な反応を効果的に加速する方法は知られていなかった。

 同研究では、赤血球のヘモグロビンの活性中心に似た環状有機色素分子ポルフィリン (POR) を粘土表面に吸着させることで、PORが亜鉛イオンを取り込む反応を23倍に加速することに成功した。

 この反応速度定数 (反応物が増減する速さを表す量、k) の温度依存性 (直線の傾き) から、粘土の有無で活性化エネルギーはほとんど変わらず、粘土に触媒としての機能はないことがわかる。

 一方で、PORと金属イオンの衝突頻度の尺度 (頻度因子) が3桁程度増える事を明らかにした。

 種々の分光測定の結果、粘土の表面 (負に帯電) に吸着したPORの外側 (粘土の反対側) で電子密度 (負電荷) が増大することがわかった。

 POR分子表面の負電荷の増大が、静電的な相互作用により金属イオン (陽イオン) との衝突を効率よく起こすことで反応の加速につながったと考えられる。

 粘土は地球上に遍在する、環境負荷の低い材料。今回、この材料の新しい活用法を見出した。

 今後、より難易度の高い化学反応、より需要の高い化学反応をこの方法で加速する方法を最適化する。さらに、粘土以外の表面を利用して同様の効果を観察することを目指す。<物質・材料研究機構(NIMS)>
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「コンピュータビジョン最前線 Spring 2023」(井尻善久、牛久祥孝、片岡裕雄、藤吉弘亘編/共立出版)

2023-03-30 09:33:59 |    情報工学



<新刊情報>



書名:コンピュータビジョン最前線 Spring 2023

編者:井尻善久、牛久祥孝、片岡裕雄、藤吉弘亘

発行:共立出版

 【最新動向サーベイ】・イマドキノ植物とCV:植物分野にとってCVは非常に重要な要素技術であり、隣接分野の1つともいえる。本稿では植物分野におけるCVの現状を紹介しつつ、植物特有の興味深い挑戦性から生み出される新たなCV研究の方向性について考える。【論文フカヨミ】・フカヨミEmbodied AI:言語と視覚情報を同時に扱いながら行動に結び付けるEmbodied AI のタスクの中でも難易度の高い、もの探しタスク(ObjectNav)について解説。・フカヨミマテリアルセグメンテーション:車両の自動運転・運転支援という文脈においては、マルチモーダル計測を活用した統計的機械学習に基づく素材認識は行われておらず、そのためのデータセットも存在していない。このような現状を打破すべく、マルチモーダル計測を備えた新たなMCubeSデータセットと、それを活用した素材認識ネットワークMCubeSNetを紹介。・フカヨミデータ拡張:画像データにおける一般的なデータ拡張から、モデルやデータに合わせて適切なデータ拡張方法を探索し、最適化するデータ拡張探索/手法について解説。【チュートリアル】・ニュウモンニューラル3次元復元:ニューラル3次元復元の大きな枠組み、すなわちフレームワークを理解できるようになることを主な目標し、入力と出力の関係や要素技術の利点、問題点を整理する。その上で、それらのフレームワークを使いながら、どのように要素技術を組み合わせるべきなのかを解説。その他、4コマ漫画「不思議な鏡」、CV分野の学会・研究会・国際会議の開催日程や投稿日が一挙にわかる「CVイベントカレンダー」を掲載。
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「元素118の新知識<第2版>」(桜井 弘著・編/講談社)

2023-03-29 09:35:22 |    化学



<新刊情報>



書名:元素118の新知識<第2版>~引いて重宝、読んでおもしろい~

著・編:桜井 弘

発行:講談社(ブルーバックス)

 「読む元素事典」の決定版が、「国際標準の最新元素周期表」に完全対応。元素とはなにか──? ・各元素の性質の違いはどう決まる?・周期性があるのはなぜ?・天然の元素と人工元素の違いとは?・元素の数はどこまで増える?・元素発見ランキングの第1位は誰?・原子量などの重要データはなぜ変動する?・・・ほか、元素番号1番「水素」から118番「オガネソン」まで、「万物の根源」をなす全元素を徹底詳説。同書が支持される4大理由とは?1:「元素の本質」をいきいきと描き出す。2:全118元素の特性や用途など、重要ポイントが一目瞭然。3:生命と元素の関わりがよくわかる。4:充実した元素データ。
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●科学技術ニュース●NTTとKDDI、IOWN(アイオン)など光ネットワーク技術のグローバル標準化に向け基本合意書を締結

2023-03-29 09:34:12 |    通信工学
 NTTとKDDI は、光伝送技術やモバイルネットワーク技術ならびにその運用管理技術など、両社が共に強みを生かせる光ネットワーク分野の標準化に向け基本合意書を締結した。

 今後、世界にオールフォトニクス・ネットワークを中心とした革新的通信技術を広めるため、世界中のパートナーと共にオープン・イノベーションを推進し、標準化をめざす。

 Beyond 5G/6G時代では、社会の情報化がますます加速し膨大な情報処理が必要となる。そのため、既存の情報通信システムに対するさらなる伝送能力の拡大や処理能力の高速化と、カーボンニュートラルに求められる低消費電力化が必要となる。

 またこれらの課題を解決し、世界中で革新的なサービスを利用できるようにするためには、世界中のパートナーとのオープン・イノベーションを活用して光ネットワークに関わる最新技術の研究・開発を迅速に進めるとともに、標準化による普及を進めることも必要となっている。


 NTTとKDDIはこれまで培った通信技術、経験を基に、課題を解決するオールフォトニクス・ネットワークのグローバルレベルでの実現を進めていく。

 Beyond 5G/6G時代の課題解決に向け、NTTとKDDIは持続可能な大容量の光ネットワークの実現をめざす。また、光ネットワークの研究・開発は、オープン・イノベーションで検討を加速し、世界に革新的通信技術を広めるとともに、1. 高速化と品質維持を両立するオールフォトニクス・ネットワークの伝送方式の標準化、2. モバイル通信におけるオールフォトニクス・ネットワークの標準化、3. オーケストレーション技術の標準化をめざす。

 標準化活動を進めるにあたり、オープン・イノベーションの推進の場として、Innovative Optical and Wireless Network (IOWN) Global Forum などの活用の仕方なども含めて検討を行い、将来的にITU-T (International Telecommunication Union-Telecommunication Standardization Sector) などでの技術の標準化をめざす。<KDDI>
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