“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―  科学技術研究者  勝 未来

科学技術書・理工学書の新刊情報およびブックレビュー(書評)&科学技術ニュース   

●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「宇宙検閲官仮説」(真貝寿明著/講談社)

2023-02-28 09:39:21 |    宇宙・地球



<新刊情報>



書名:宇宙検閲官仮説~「裸の特異点」は隠されるか~

著者:真貝寿明

発行:講談社(ブルーバックス)

 すべての物理法則が破綻する「特異点」は、ふつうの宇宙であれば必ず発生する。物理学者にとってショッキングなこの事実を証明したのが、ロジャー・ペンローズの「特異点定理」だった。しかし彼は、一方ではこんな「仮説」も提唱した。本当に厄介な「裸の特異点」は、宇宙検閲官がブラックホールで覆い隠してくれている、だからきっと大丈夫だ!はたしてこの仮説は、定理となりうるのか、それとも願望にすぎないのか? 物理学の存亡をかけた検証が始まった。2020年ノーベル物理学賞の対象となった「特異点定理」を一般書で初めて解説し、一般相対性理論はみずから破綻する「宿命」であることを示しながら、宇宙検閲官仮説が本当に成立するか否かをスリリングに検証。そこからは、宇宙創成の謎解きにつながる数々の最先端の理論も「副産物」として生まれてくる。映画『インターステラー』に描かれたブラックホールと特異点のリアルな姿がここにある。【目次】第1章 一般相対性理論とは 第2章 アインシュタイン方程式の解 第3章 特異点定理 第4章 宇宙検閲官仮説 第5章 特異点定理と宇宙検閲官仮説の副産物
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●科学技術ニュース●三菱電機、直流遮断器の開発などを手掛けるスウェーデン社を買収し高電圧直流送電事業を拡大

2023-02-28 09:38:58 |    電気・電子工学
 三菱電機は、再生可能エネルギーの普及に貢献する高電圧直流送電(High Voltage Direct Current:HVDC)システムにおける直流遮断器(Direct Current Circuit Breakers:DCCB)の技術開発や事業競争力強化のため、DCCBの開発などを手掛けるスウェーデンのサイブレーク社の全株式を取得する株式譲渡契約を締結した。

 カーボンニュートラルの実現に向けて、風力発電などの再生可能エネルギーの導入が世界中で拡大している。特に洋上風力発電では、洋上の発電所から電力需要地をつなぐ長距離送電において、交流送電よりも電力損失が少なく低コストなHVDCが用いられている。

 今後も、欧州の洋上風力発電を中心に、HVDCによる電力のネットワーク化、多国間流通がさらに進展し、それに伴い電力系統を保護するために重要な役割を担うDCCBの需用拡大が見込まれる。

 HVDCには、数ミリ秒での高速遮断が必要で、DCCBの小型化や低コスト化への対応が求められており、各社が技術開発を強化している。

 サイブレーク社は、DCCBにおける世界最高レベルの遮断速度や小型化で高い技術力を持っている。

 三菱電機は今回、株式取得によりサイブレーク社の技術やノウハウを同社グループに取り入れ、DCCBの早期製品化を実現し、グローバルでHVDCシステム事業を強化していくとともに、再生可能エネルギーのさらなる普及を通じたカーボンニュートラルの実現に貢献していく。<三菱電機>
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●科学技術ニュース●兵庫県立大学など、光をあてて温度を変えるだけで反応途中の酵素を観る新手法を開発

2023-02-28 09:38:25 |    生物・医学
 兵庫県立大学大学院理学研究科の城宜嗣特命教授、久保稔教授、武田英恵(大学院生研究当時)、理化学研究所(理研)放射光科学研究センター生命系放射光利用システム開発チームの當舎武彦専任研究員、佐賀大学堀谷正樹准教授、神戸大学木村哲就准教授らの共同研究グループは、生体触媒である酵素の反応途中を観るための新手法を開発し、一酸化窒素還元酵素(NOR)の反応機構の解明に迫った。

 同研究で開発した手法は、生体内で機能する様々な酵素に適用可能であり、高効率で行われる酵素反応の仕組みを理解することに貢献すると期待できまる。

 酵素は生体内において代謝や生合成に関わる化学反応を温和な条件下で行うことができる優秀な触媒。そのため、酵素が持つ高効率の仕組みを解明することは、生命現象の理解だけでなく、高機能の触媒を設計するうえでも重要。

 酵素が機能する仕組みを理解するためには、酵素の反応途中にみられる反応中間体を観測することが必要になる。しかし、酵素の反応中間体は、マイク
ロ秒からミリ秒(1/1,000,000~1/1,000 秒)程度の短い時間で消失してしまうため、その観測は、容易なことではない。

 今回、同共同研究グループは、光照射により基質が放出されるケージド化合物を用いて、酵素の反応中間体を捕捉・観測する新手法を開発した。液体窒素温度(約-200℃)でケージド化合物に光を照射し、基質を放出させた後、温度を-110℃程度まで上げると酵素と基質がゆっくりと反応し、反応中間体を捕捉できるという手法。

 この手法を用いて、これまでの実験では、一瞬で消失してしまう NOR の反応中間体を捕捉・観測することに成功した。

 同研究で開発した手法は、様々な酵素タンパク質が機能する様子を観測することに適用することができる。ケージド化合物には、酵素やタンパク質の反応開始に利用可能なケージド電子、ケージド酸素やケージド ATPが入手可能であり、種々の酵素やタンパク質の反応に適用可能。

 また、捕捉した短寿命反応中間体の分析においては、ESR 分光法以外にも各種分光計測法が利用できるので、短寿命反応中間体の詳細な構造解析が可能となる。更には、同手法を結晶試料に適用すれば、X 線結晶構造解析による反応中間体の構造解析も夢ではない。

 このように、同研究成果は、今後の酵素やタンパク質が機能する仕組みを理解することに大きく貢献すると期待できる。<兵庫県立大学>
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「リスク解析がわかる」(藤川 浩著/技術評論社)

2023-02-28 09:37:51 |    数学



<新刊情報>



書名:リスク解析がわかる

著者:藤川 浩

発行:技術評論社(ファーストブックシリーズ)

 「リスク」という単語は日常生活でもよく用いられており、感染症関連の話題でもよく聞く単語だが、公衆衛生における有害物質による健康被害や病原体の感染などに関して,統計を使ったリスク管理方法がWHO等によって確立されている。産業においても製品の故障や不良などに関する統計による品質管理、リスク管理に関してISO等によって定められており、医薬品や食品、工業製品などで導入されている。同書では統計学の基礎からリスク解析の際に主に使われるベイズ統計を解説。そしてリスクに関して具体例や問題とともに安全管理や品質管理の手法について、数量的な扱いを学んでいく。ExcelやRを使った解析についても紹介。
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「日本の電機産業はなぜ凋落したのか」(桂 幹著/集英社)

2023-02-27 09:35:11 |    企業経営



<新刊情報>



書名:日本の電機産業はなぜ凋落したのか~体験的考察から見えた五つの大罪~

著者:桂 幹

発行:集英社(集英社新書)

 かつて世界一の強さを誇った日本の製造業。しかし、その代表格である電機産業に、もはやその面影はない。なぜ日本の製造業はこんなにも衰退してしまったのか。その原因を、父親がシャープの元副社長を務め、自身はTDKで記録メディア事業に従事し、日本とアメリカで勤務して業界の最盛期と凋落期を現場で見てきた著者が、世代と立場の違う親子の視点を絡めながら体験的に解き明かす電機産業版「失敗の本質」。ひとつの事業の終焉を看取る過程で2度のリストラに遭い、日本とアメリカの企業を知る著者が、自らの反省もふまえて、日本企業への改革の提言も行なう。この過ちは日本のどこの会社・組織でも起こり得る! ビジネスパーソン必読の書。【目次】第1章 誤認の罪 「デジタル化の本質」を見誤った日本の電機産業 第2章 慢心の罪 成功体験から抜け出せず、先行者の油断から後発の猛追を許す 第3章 困窮の罪 円高対応とインターネット・グローバリズムへの乗り遅れ、間違った”選択と集中”による悪循環 第4章 半端の罪 日本型経営の問題点──経営者、正規・非正規、ダイバーシティ、賃上げ、エンゲージメント──はなぜ改善できなかったのか 第5章 欠落の罪 人と組織を動かすビジョンを掲げられない経営者 第6章 提言 ダイバーシティと経営者の質の向上のためには
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◆科学技術<テレビ番組情報>◆NHK「サイエンスZERO」/BSフジ「ガリレオX」他>

2023-02-27 09:34:50 |    ◆TV番組◆



<テレビ番組情報>




コズミック フロント  NHK‐BSプレミアム  毎週木曜日 午後10時~11時00分

3月2日(木) 海洋酸性化

 静かに迫る危機

地球ドラマチック  NHK‐Eテレ  毎週土曜日 午後7時~7時45分

3月4日(土) 海のスーパーハンターたち」(選)

 多種多様な海の生きものたち。彼らの狩りの戦術は常に進化し、環境の変化に応じて驚異的な方法が編み出されてきた。泡を噴き出して獲物を囲い込み、華麗なチームプレーをみせるザトウクジラ。高度な狩りの技を子どもたちに伝授するシャチ。そして、時に種を超えて協力しあう生きものたちも。変化し続ける環境に適応しながら、頭脳と技を駆使する、海のハンターたちの姿を追った。(フランス2020年)

ガリレオX  BSフジ  毎週日曜日 午前11:30~12:00分(隔週新作)

3月5日(日) 休止

サイエンスZERO  NHK‐Eテレ  毎週日曜日 午後11時30分~0時00

3月5日(日) 人類の未来を救え!ここまで来た核融合発電

 太陽がエネルギーを生み出す“核融合反応”を人工的に作り出す核融合発電。去年12月、アメリカの研究所が、投入エネルギーを上回るエネルギーを取り出すことに初めて成功。一方、フランスでは、日本も参加する巨大な核融合実験炉「ITER(イーター)」の建設が進む。実現はいつ?安全性は?青森で開発中の核融合発電に不可欠な装置にも注目。人類の英知を結集させてエネルギー問題解決に挑もうとする巨大プロジェクトに迫る。
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「入門セキュリティコンテスト」(中島明日香著/技術評論社)

2023-02-27 09:34:33 |    情報工学
<新刊情報>



書名:入門セキュリティコンテスト~CTFを解きながら学ぶ実戦技術~

著者:中島明日香

発行:技術評論社

 この書は、セキュリティコンテスト「CTF(Capture The Flag)」についての入門書。CTFは情報セキュリティ技術を競う競技で、同書で扱う「クイズ形式」のCTFでは、情報セキュリティに関係するさまざまな分野の問題が与えられ、参加者は多様な技術(解析技術や攻撃技術)を駆使し、問題の答えとなる「flag」と呼ばれる文字列を見つけ出す。同書ではSECCONなどのCTFの過去問を解きながら、CTFの流れや定石を学びつつ、問題を解くのに使う「暗号」「脆弱性」「リバースエンジニアリング」といった、セキュリティに関する実践的な知識についても解説。各章では次の勉強につながるよう参考文献も紹介。CTFへの参加を考えている方にも、実践的なセキュリティ技術を身につけたい方にもお勧めできる1冊。
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●科学技術書・理工学書<新刊情報>●「線虫 1ミリの生命ドラマ」(長谷川 浩一著/dZERO)

2023-02-24 09:33:31 |    生物・医学



<新刊情報>



書名:線虫 1ミリの生命ドラマ

著者:長谷川 浩一

発行:dZERO

 すべての道は「線虫」に通ず。3億年以上にわたって繰り広げられてきた驚くべき精緻な「生と死」の営み。著者は日夜顕微鏡と向かいあう線虫一筋の生物学者。2020年に、中部大学の裏山に生息するゴキブリの腸内から新種の線虫を発見。「チュウブダイガク」と命名し、注目された。線虫は、ほかの生物が生存不可能な極限環境でも生き、ほかの生物に寄生するものもいれば、自活するものもいる。生殖のあり方も多様で、雌雄同体も。昆虫以上に種類も数も多い。人類の健康問題を解決するためのヒントや、人類が自然と共存していくためのヒントを線虫から得ることもできる。線虫には果てしない可能性がある。この一冊で線虫のすべてがわかる。
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●科学技術ニュース●岡山県の「MASC」、人を乗せ高度30mまで浮上し「空飛ぶクルマ」の試験飛行 に成功

2023-02-24 09:33:09 |    輸送機器工学
 岡山県の中小企業などで作る一般社団法人「MASC」は、大分市の協力のもと、大分市内の海岸で「空飛ぶクルマ」の試験飛行を行い成功した。

 使用されたのは、MASCが所有する中国のメーカーが製造した「EH216」。

 同機は、幅は5メートル60センチ、高さは1メートル70センチで、プロペラが16枚備えられた2人乗り。

 試験飛行は、操縦者は乗らず、MASCの関係者2人が乗り込み、あらかじめプログラムされたルートを自動で運航し、高度30メートルまで3分半の飛行に成功した。

 日本国内において、国の許可が必要な屋外で「空飛ぶクルマ」が人を乗せて飛行するのは、今回が初めて。
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●科学技術ニュース●理研、睡眠中の脳の学習理論を構築

2023-02-24 09:32:45 |    生物・医学
 理化学研究所(理研)脳神経科学研究センター数理脳科学研究チームの吉田健祐研修生、豊泉太郎チームリーダーの研究チームは、睡眠中の徐波の間に起こる神経活動と神経回路の変化(シナプス可塑性)、記憶の定着や忘却に関する複数の実験結果を「情報量最大化」によって統一的に説明する理論を構築した。

 同研究成果は、睡眠中に脳内で起こる情報処理の解明や睡眠の効果を組み込んだ学習アルゴリズムの開発に貢献すると期待できる。

 今回、同研究チームは、睡眠中のシナプス可塑性が神経細胞間の情報伝達を最大化するように起こると仮定した(情報量最大化学習則)。

 この学習則は神経細胞の平均発火率による影響を受け、睡眠中に観測される徐波(脳波などの低周波数成分)のアップ・ダウン状態や空間スケールに依存して変化した。その変化は、これまで実験的に報告されていた徐波のアップ・ダウン状態とシナプス可塑性の関係、徐波の空間スケールと記憶再編成(覚醒中に学習した内容の定着や忘却)の関係と合致した。

 同研究では、ノンレム睡眠中の徐波、シナプス可塑性、記憶再編成の関係を情報量最大化の観点から統一的に説明する理論を提案した。特に、これまで十分に明らかになっていなかったアップ・ダウン状態の役割の違い、徐波の空間スケールに応じた役割の違いを提案した。徐波はノンレム睡眠と記憶再編成の関係を明らかにする上で実験的にも着目されてきた歴史があり、今回構築したモデルは今後実験的検証とともにさらに発展していくと期待できる。

 また、同研究は、睡眠の機能を「情報量最大化」のような原理から説明した点が特徴的で、睡眠の意義は何かという問いに対して、「情報伝達の向上」という新しい可能性を提案しているといえる。

 睡眠は非常に多くの動物で保存されている現象であり、今回の理論が今後より高度な人工知能を開発することに役立つ可能性がある。また近年、意識に関連した脳の高次な機能を数学的に記述するような「脳の理論」を構築しようという試みがされているが、同研究が提案した「睡眠中の学習理論」は、より一般的な脳の理論を考えることへとつながっていくかもしれない。<理化学研究所(理研)>
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