“科学技術書・理工学書”読書室―SBR―                 科学技術研究者   勝 未来

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■科学技術ニュース■三菱重工とJAXA、「放射性物質見える化カメラ」のプロトタイプを共同開発

2012-11-30 10:53:06 |    物理

 三菱重工業(MHI)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、放射性物質の分布状況を可視化する特殊なカメラ装置「放射性物質見える化カメラ」のプロトタイプ機「ASTROCAM 7000」を共同開発した。

 これはJAXAが中心となって開発に成功した「超広角コンプトンカメラ」をベースに改良したもので、感度、画像、視野角などでこれまでにない優れた性能を実現した。

 現在、JAXA、MHIに名古屋大学を加えた開発チームが、「先端計測分析技術・機器開発プログラム」を推進する科学技術振興機構(JST)の協力を得て、プロトタイプ機の更なる高感度化と早期実用化に向けた開発に取り組んでおり、その成果をもって今年度内にMHIが商用機「ASTROCAM 7000HS」を市場投入する。

 超広角コンプトンカメラは、JAXAが中心となってMHIと共同で開発を進めてきた「衛星搭載用ガンマ線検出器」の技術を応用したもの。JAXAと日本原子力研究開発機構(JAEA)は、本年2月、このカメラが地上での放射性物質の分布の可視化に非常に有効であることを実証しており、この実証が「放射性物質見える化カメラ」開発の起点となった。

 「放射性物質見える化カメラ」は、放射線の飛来方向とそのエネルギー(波長)をリアルタイムで同時に測定可能で、放射性セシウム134(Cs-134)、同137(Cs-137)、放射性ヨウ素(I-131)など、ガンマ線を放出する物質の識別ができるのが特徴。

 具体的には、ガンマ線が粒子の性質を持つことによるコンプトン散乱の原理を活用することにより、1~5マイクロSv/h程度の環境下で、環境バックグランドの数倍の強度のホットスポットをほぼ180度という広い視野で検出できる。

 測定は20~30mの距離から可能で、家屋の屋根や敷地など広範囲に集積した放射性物質の分布状況を簡易に画像化することができる。

 JAXAとJAEAが本年2月に行った実証試験では、計画的避難区域で線量測定や撮像などが実施され、放射性セシウムの分布状況の高精度画像化などで所期の目的を果たしている。

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■科学技術ニュース■生理学研究所、“報酬”の量を予測し“やる気”につなげる脳の仕組みを発見

2012-11-29 10:55:35 |    生物・医学

 生理学研究所の橘 吉寿助教は、米国NIH(国立衛生研究所)の彦坂興秀博士と共同で、サルを用いた研究によって、"報酬"の量を予測し"やる気"につなげる脳の仕組みを発見した。これは、大脳基底核の一部である腹側淡蒼球と呼ばれる部位が、強く関わることを明らかにしたもの。

 私たちの行動や運動における“やる気”は、予測されうる報酬の量により、強く影響を受ける。しかし、これまでの研究では、脳のどの部位が報酬の量を予測して、行動・運動に結びつけるのかは、よく分かっていなかった。

 研究グループは、情動と運動を結びつける神経回路を持つとされる脳の大脳基底核の一部である腹側淡蒼球に注目。サルに、特定の合図のあと、モニター画面上である方向に目を動かすように覚えさせ、うまくできたらジュースをもらえるようにトレーニングし、そのときの腹側淡蒼球の神経活動を記録した。

 腹側淡蒼球における神経細胞の多くが、合図をうけてからジュースをもらえるまで、持続的に活動し続けることを見つけた。予測される報酬(ジュースの量)が大きければ大きいほど、目を動かすスピード(運動)は速く、腹側淡蒼球の神経活動も大きくなった。

 この神経細胞こそ、得られる“報酬”を予測して、“やる気”をコントロールする脳の仕組みの一部であると考えられる。

 

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■科学技術書<新刊情報>■「これが物理学だ!」

2012-11-27 10:54:52 | ●科学技術書・理工学書 <新刊情報> ●


<新刊情報>

 

書名:これが物理学だ!―マサチューセッツ工科大学「感動」講義―

著者:マサチューセッツ工科大学教授 ウォルター・ルーウィン(東江一紀・訳)

発行:文芸春秋

 ビッグバンはどんな音がしたか。虹を自宅の庭でかけるには? ネットで世界中に公開され人気を博する物理の授業。NHKでも放映。

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■科学技術テレビ番組情報■NHK「サイエンスZERO」/BS朝日「BBC地球伝説

2012-11-26 11:10:52 | ◆科学技術 <TV番組情報>◆

 

<テレビ番組情報>

 

NHK Eテレ  サイエンスZERO 午後11時30分~0時00分

  12月2日(日) <アンコール放送>  ヒッグス粒子! 素粒子の不思議ワールドへの招待

       ヒッグス粒子。テレビでずいぶん取り上げてたけど「結局よく分からなかった…」というあ
        なたへ。実はヒッグスは「粒じゃない」! 素粒子の不思議ワールドへご招待!

BS朝日     BBC地球伝説 午後8時~9時

  11月26日(月) 神秘の太陽系 Episode2 土星の環
  11月27日(火) 神秘の太陽系 Episode3 大気の秘密 
  11月28日(水) 神秘の太陽系 Episode4 惑星の運命
  11月29日(木) 神秘の太陽系 Episode5 地球外生命体


    神秘の太陽系(5回シリーズ):太陽系は、どのようにして生まれたのか?太陽系に存
    在する惑星や衛星では、いま何が起きているのか?物理学者のブライアン・コックス教
    授が、地球のさまざまな場所を訪れ、地球と他の惑星を比較しながら、太陽系の謎に
    迫る。

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■科学技術ニュース■国立天文台など、アンドロメダ座κ(カッパ)星を回る巨大なガス惑星を発見

2012-11-23 11:05:20 |    地球

 国立天文台を中心とする国際研究チームが推進する系外惑星・円盤探査プロジェクト「SEEDS(シ−ズ)」の直接撮像観測より、アンドロメダ座κ(カッパ)星を回る巨大なガス惑星が発見された。

 地球から170光年離れたこの恒星の高コントラスト画像にとらえられた惑星は、木星の13倍もの質量を持ち、太陽系の海王星の軌道より少し遠い軌道を回っている。主星(恒星)の質量は太陽の2.5倍と重く、今までに撮像された太陽系外惑星の中では主星の質量が最も重いもの。
 
 今回発見された巨大なガス惑星「アンドロメダ座κ星 b」は、2012年の1月と6月の観測で、4つの赤外線の波長帯においてその存在が確認された。

 2回観測したことによりこの天体が主星のまわりを回っていることがわかり、偶然に同じ方向にあった天体ではなく、重力的につながっていることが確認された。

 近赤外線の4つの波長帯での明るさを比較して得られた惑星の色は、これまで撮像された10個程度の巨大ガス惑星とよく似ていることも判明した。

  研究チームは「これらの追跡研究は、重い恒星周囲での惑星形成、特に重い惑星の生い立ちを解き明かす上で有用な手がかりをもたらしてくれるだろう」と述べている。

 

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■科学技術ニュース■スーパーコンピュータ「京」、HPCチャレンジ賞 3部門の第1位を獲得

2012-11-22 11:05:10 |    情報工学

 理化学研究所、筑波大学および富士通は、スーパーコンピュータ「京(けい)」で測定した、スパコンの総合的な性能を評価するHPCチャレンジベンチマークの実測結果により、2012年「HPCチャレンジ賞」の4部門中3部門で第1位を獲得した。

 HPCチャレンジ賞で第1位を獲得したのは、①大規模な連立1次方程式を解く演算速度②多重負荷時のメモリアクセス速度③高速フーリエ変換の総合性能 の3部門です。京は、昨年の4部門第1位に引き続き、汎用スパコンとしての総合的な性能において高い評価を得たことになる。

 京は、開発当初から、広く内外の研究者、技術者の利用に供することを念頭に、高い演算性能と幅広い範囲のアプリケーションに対応できる汎用性を兼ね備えたスパコンを目指して開発を進めてきた。昨年の4部門第1位に引き続き、今回の結果はそれを実証するものであり、京の汎用スパコンとしての総合的な能力の高さを示すもの。

 

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■科学技術書・理工学書ブックレビュー■「電気回路がよくわかる」(藤瀧和弘著/技術評論社)

2012-11-20 10:39:12 |    電気・電子工学

書名:電気回路がよくわかる―絵で見てなっとく!

著者:藤瀧和弘

発行所:技術評論社

発行日:2011年9月5日 初版第1刷

目次:PART1 電気回路の素朴な疑問
     電気の由来
     電気の正体 ほか
    PART2 電気と磁気の深い関係
     磁気の正体
     電流と磁気 ほか
    PART3 電気をつくる
     電気をつくる
     電気を送る ほか
    PART4 電気回路の基礎
     回路の基礎
     回路素子 ほか
    PART5 電気を利用する
     電気を光に変える
     電気を熱に変える ほか
    PART6 動力を制御する
     モーターの回転制御
     モーターの運転制御 ほか
    PART7 電気の安全対策と電気計測
     屋内配線の安全対策
     電気を計る

 福島第1原子力発電所の事故は、今後のわが国のエネルギー政策を根本的に考え直す契機となった。原子力発電を、このまま続けるとどうなるのか。まず、挙げられるのは、原子力発電所直下の活断層の有無である。現在専門家が現地調査を行い、危険性を調査中であるが、そう簡単に結論は出そうにもない。さらに使用済み核燃料の処理の問題もある。現在のところ、有効な処理方法は見当たらず、とりあえず100年ほどの期間をメドに貯蔵し、その後は、技術革新の進展を期待して、新しい処理方法を考えるしかないようだ。このような問題を抱える原子力発電ではあるが、では今すぐ、火力発電に切り替えると、液化天然ガスなどの安定供給は必ずしも保証されているとは言えず、今後価格の高騰も懸念される。

 そこで、環境省は、再生可能エネルギーの発電能力を高める目標を策定した。これによると、2030年までに、洋上風力発電、地熱発電、バイオマス発電、海洋発電などの新しい4種類の発電能力を合計1941万キロワットと2010年の約6倍に引き上げようとしている。しかし、仮にこれが実現したとしても再生可能エネルギーが占める割合は、全体の約1割ほどにしかならない。再生可能エネルギーが話題に上らない日がない昨今ではあるが、将来はともかく、当面のエネルギー源として再生可能エネルギーは、そう期待できないと言うのが本当のところ。それではどうすべきか。結論の一つは、エネルギーの消費を抑えることだ。エネルギーの種類は、核、光、化学、熱、力学、それに電気エネルギーなどに分類できる。

 これらの中で、電気エネルギーは、我々が生活している中での役割が、かつて考えられないほど、高まっていることに気づく。停電が起きた時、電気エネルギーが我々の日常生活に、いかに深く入る込んでいることに誰もが気づくはずだ。昔は各家庭の暖房は、ストーブやコタツが主流であったが、今や電気エネルギーを使ったエアコンが主流となった。このエアコンを家庭に普及させた技術は何かというと、直流を交流に変換して自由に温度の制御を可能にしたインバーター技術なのである。テレビのコマーシャルでインバーターエアコンと聞かされているので何となく分った気でいるが、その原理を知ることは、結果的には、エネルギーの消費を抑えることにも繋がる。最近の新しい家庭の配電盤は、単相3線式の200V対応になっている。単相3線式となると、何故200Vが可能となるのかも、知っておかねばならない。

 この「電気回路がよくわかる―絵で見てなっとく!」はそんな、電気の基礎知識が見開き2ページにわたって、図解つきで平易に解説されているので、これを読めば最低限の電気の知識を身に付けられる。しかし、単に初心者向けだけではなく、技術的にしっかりとした解説が付いているので、電気以外の技術者が電気の基礎を学びたいというときにも相応しい内容となっている。また、技術系は苦手という人でも、難しい個所は飛ばして読めば、電気回路の基礎を身に付けることができる。現在既に、電気エネルギーがあらゆる場面で、基本のエネルギー手段として活用されており、今後さらにその傾向は強まる。今後のわが国のエネルギー問題を考える時、知っておきたい電気の基礎知識は、誰もが持っておきたいもの。そのための教科書としても同書は最適である。(勝 未来)

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■科学技術テレビ番組情報■NHK「サイエンスZERO」/BS朝日「BBC地球伝説」

2012-11-19 10:54:39 | ◆科学技術 <TV番組情報>◆

 

<テレビ番組情報>

 

NHK Eテレ  サイエンスZERO 午後11時30分~0時00分

  11月25日(日) SF世界が現実に! プロジェクション映像技術の衝撃

       ビルが突然崩れ落ちたり、車の後ろが透けて見えたり、透明人間になれるマントまで!
      プロジェクターを使った驚異の映像技術は、まさにSF! 知られざるカラクリに迫る!

BS朝日     BBC地球伝説 午後8時~9時

  11月19日(月) キリスト3つの名画の謎 ~その誕生に隠された真実~
    1.レオナルド・ダ・ヴィンチ「最後の晩餐」 
  11月20日(火) キリスト3つの名画の謎 ~その誕生に隠された真実~
    2.サルバドール・ダリ「十字架の聖ヨハネのキリスト」 
  11月21日(水) キリスト3つの名画の謎 ~その誕生に隠された真実~
    3.ピエロ・デッラ・フランチェスカ「キリストの復活」 
  11月22日(木) 神秘の太陽系 Episode1 太陽の謎

    神秘の太陽系(5回シリーズ):太陽系は、どのようにして生まれたのか?太陽系に存
    在する惑星や衛星では、いま何が起きているのか?物理学者のブライアン・コックス教
    授が、地球のさまざまな場所を訪れ、地球と他の惑星を比較しながら、太陽系の謎に
    迫る。

 

 

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■科学技術ニュース■理化学研究所、世界で初めて植物の細胞成長を止める仕組みを証明

2012-11-16 10:52:10 |    生物・医学

 理化学研究所は、植物の細胞成長を抑制する転写調節因子GTL1(GT2-LIKE 1) の機能を解明し、植物細胞の大きさが決まる仕組みを明らかにした。植物の細胞成長を積極的に止める仕組みがあることが証明されたのは、世界でも今回が初めて。

 今回の発見で植物の細胞成長が一方的に促進されるだけではなく、適度に抑制されることで組織や器官がかたち作られていることが示された。

 また、GTL1の発現を特定部位で減少させることにより、農作物やバイオマス作物の増産が可能になると期待できる。

 これは、理研植物科学研究センター細胞機能研究チームの杉本慶子チームリーダー、クリスチャン・ブラウア特別研究員、河村彩子テクニカルスタッフと、米国オハイオ州立大学、奈良先端科学技術大学院大学との共同研究グループによる成果。

 植物の花や葉、実などの器官は多数の細胞から構成されており、その細胞が分裂して数を増やしたり、またその後の伸長成長(細胞成長)によって体積を増大させたりして大きくなる。一つ一つの細胞はある一定の大きさに達すると成長を止めるが、最終的な細胞の大きさがどのように決まるかはまだ分かっていない。

 理研細胞機能研究チームは、2009年に「GTL1」と呼ばれる転写調節因子が植物細胞の細胞成長を抑制することを見いだしていたが、GTL1が具体的にどう機能するかは謎のままであった。

 共同研究グループは、まずシロイヌナズナを用いて全ゲノムレベルでの解析を行い、GTL1によって直接的に転写制御を受ける182個の関連遺伝子を発見した。

 植物の細胞成長には、染色体の倍加現象による細胞内のDNA量の増加が深く関わっている。共同研究グループは、これらの関連遺伝子のなかから染色体の倍加を促進する遺伝子「CCS52A1」を見つけ、GTL1がこの遺伝子の発現を抑えることによって細胞成長を止めることを突き止めた。

 さらにGTL1遺伝子の発現量を人為的に増減させることで、細胞の成長を抑制したり促進したりして、細胞の大きさを自在に変えることにも成功した。

 今後、GTL1やその関連因子の機能をさらに解明することで、植物の成長が正と負の制御バランスによって厳密に調節される詳細な仕組みが明らかになると考えられる。 

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■科学技術ニュース■国立天文台などの国際研究チーム、原始惑星系円盤に過去最大級のすきまを発見

2012-11-15 10:45:08 |    地球

 国立天文台、プリンストン大学、神奈川大学、ミシガン大学、工学院大学、オクラホマ大学などの研究者を中心とする国際研究チームは、すばる望遠鏡と世界最高性能の惑星・円盤探査カメラHiCIAOを用いて、PDS 70と呼ばれる太陽くらいの質量を持つ若い天体(年齢約1000万年)の近赤外線観測(波長 1.6マイクロメートル)を行った結果、PDS 70を取り囲む原始惑星系円盤に、太陽クラスの軽い質量の星としては過去最大級のすきまが存在していることを初めてつきとめた。

 原始惑星系円盤は惑星が生まれる現場であり、今回鮮明に撮影された巨大なすきまは、生まれたばかりの惑星の重力の影響で作られたと考えられる。しかも、ひとつの惑星では円盤に小さなすきましか作られないため、いくつかの惑星によって作られた可能性がある。

 今回の観測結果は、円盤のすきまという模様を詳細に撮影することで、太陽に似た若くて軽い恒星の周りに複数の惑星が生まれた可能性を示す、初めての直接観測だと言える。

 研究チームは今後、生まれたての惑星を一度に複数発見できるかもしれないと期待している。

 

 

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