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■科学技術書・理工学書<ブックレビュー>■「検証!首都直下地震」(木村政昭監修/技術評論社)

2015-08-04 12:28:55 |    宇宙・地球

書名:検証!首都直下地震~巨大地震は避けられない?最新想定と活断層~

監修:木村政昭

編著:編集工房SUPER NOVA

発行:技術評論社 

目次:プロローグ 3・11の“超巨大地震”は「想定外」ではなかった!?
    第1章 巨大地震の発生はどうして避けられないのか?
    第2章 新しい認識の「日本列島断層」上の地震と首都直下地震
    第3章 東日本大地震を検証し、地震予知の精度を上げる
    第4章 噴火と「地震の目」で読む次の大地震
    第5章 首都直下地震の最新想定と活断層

 阪神・淡路大震災や東日本大震災に見舞われた現在の日本では、比較的大きな地震が発生しても以前ほどの危機感がなくなっているようにも感じられる。一方、1923年の関東大震災の時は、首都東京は壊滅的被害を受けたわけであるが、当時は現在ほど映像情報が発達していなかったため、新聞の写真ぐらいしか知る由もなかった。海外への情報発信もかなり遅れて行われたようで、数日経ってようやく「東京が大地震に見舞われたようだ」というニュースが世界を駆け巡ったという。ところが、現在は、瞬時に映像情報が世界中に伝わる。阪神・淡路大震災や東日本大震災時の映像情報を一度でも見た人なら、少々の地震に鈍感になってしまうのは、しょうがないのかもしれない。

 しかし、油断は禁物だ。2015年5月30日に小笠原諸島沖でマグニチュード(M)8.1の地震が発生し、日本全土を揺らし、関東の陸地でも最大で震度5強となったことは、ご存じの通り。何故このようなことになったかというと、震源の深さが682㎞と、普通の地震よりはるかに深い場所で起きたためだ。この結果、東日本大震災や首都直下地震との関連は薄いということになり、今では人々の記憶から遠ざかっていってしまった。しかし、その後、箱根山の噴火が発生し、首都直下地震の危機が決して去ったわけでないことを人々は思い知らされた。2020年の東京オリンピックに向けた取り組みと同時に、これからますます首都直下地震への警戒を怠ってはならないことを、肝に銘じないといけない、ということであろう。

 この「検証!首都直下地震~巨大地震は避けられない?最新想定と活断層~」(監修:木村政昭、編集工房SUPER NOVA/技術評論社)は、そんな今の日本にとって、避けられない危機を直視するための書籍としての意義は、決して小さくない。この書は、1995年の兵庫県南部地震、2004年の新潟県中越地震、2011年の東日本大震災を事前に予知したことで知られる琉球大学名誉教授の木村政昭氏の「地震の目」理論を中心に、編集工房SUPER NOVA (長谷川隆義代表)が執筆したものである。特に、写真、図表、地震歴が豊富に掲載されているため、大いに理解の手助けとなる。参考文献、索引も充実しているため、常に手元に置いておき、各地で地震が発生するたびに、同書を紐解くと、内容を一層深く理解できるようになるであろう。書名は、「検証!首都直下地震」となっているが、日本全土で地震が発生しない場所はない。その意味から、首都圏以外に住む人々にも参考になろう。

 ところで、誰もが「地震の予知は可能なのであろうか?」という素朴な疑問を抱く。東京大学のロバート・ゲラー教授などは「地震の予知は複雑で予知できない。予知計画は幕を引くべきだ。予知計画は予算獲得のスローガンでしかない」とまで言い切っている。これに対し同書は、「地震の前兆は複雑で予知できない・・・とするのは、多少早計な結論でないか」とする。その根拠となるのが木村政昭氏の「地震の目」理論であり、この書の理論的裏付けとなっている。地震の予知は、①いつ②どこで③どの程度の大きさの地震が発生するのか―という3要素を明らかにすれば、科学的に予知は可能という立場だ。木村政昭氏は、「地震の目」と「噴火と地震の時空ダイヤグラム」などの方法を組み合わせることによって、地震予知の3要素の精度を高める成功している。これらの理論によって、木村政昭氏らは、2007年の太平洋学術会議において東日本大震災の発生を予言していた。当初、木村氏は、東日本大震災の発生時期を2005年±5年と予測したが、結果的には発生時期は多少ずれたが、これは誤差範囲内と見ていいであろう。
(勝 未来)

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