「山水に遊ぶ - 江戸絵画の風景250年 - 」(後期B) 府中市美術館

府中市美術館府中市浅間町1-3
「山水に遊ぶ - 江戸絵画の風景250年 - 」
3/20-5/10(後期B 4/28-5/10)



前期展示に引き続き、府中市美術館で開催中の「山水に遊ぶ - 江戸絵画の風景250年 - 」へ行ってきました。

「山水に遊ぶ - 江戸絵画の風景250年 - 」(前期) 府中市美術館

前期の人気者、若冲の展示こそ終了していましたが、後期も蕭白に蘆雪らと、何ら不足しないラインナップで楽しませてくれます。(出品リスト)以下、後期出品の作品で印象深かったものを挙げてみました。

鈴木其一「漁楽図」
遠目では其一とは分かりませんが、良く目をこらすと、コントラストに明快な色の表現、もしくは事物の丸みを帯びた造形などに琳派の系譜を思わせます。海辺にて漁を終えて忙しなく魚を積み替える漁師たちと、その向こうで一人で釣り糸を垂らす老人ののんびりした様が対比的でした。

墨江武禅「錦帯橋図」
遠近法が独特なのか、実景に基づきながらも、どこかあり得ない夢の世界を描いたような景色が広がります。アーチ状の橋の連なりは、まるであの世へと進みゆくかのように奥へと伸びていました。一度渡るともう帰ってくるのが難しそうな恐怖感さえ覚えます。

狩野栄信「雪月花図」
狩野派の手にかかると雪月花の主題も厳格な風景画へと変わります。凍え震えるような木々にのしかかる『雪』、湖上に満月が悠々と浮かぶ『月』、そして花がうっすらと木を彩る『花』と、そのどれもがまるで隠れるようにひっそりと描かれていました。


池大雅「近江八景図」
大雅は飛行機にでも乗ったことがあるのでしょうか。上空からの超俯瞰的な視点でぐるりと一周、竹生島から瀬田の唐橋までの琵琶湖周辺の景色を描いています。

曾我蕭白「比叡山図」
まるで活火山のような岩山と化した比叡山です。手前の琵琶湖、そして湖畔の田園、そしてその奥でそそり立つ山が「奇景」となって描かれていました。

曾我蕭白「山水図」
途中で描くのをやめてしまったのでしょうか。全く描き足りない、裏を返せばある意味でシュールな山水図です。ぼつぼつと突き出す山の稜線だけが簡潔に示されていました。


曾我蕭白「月夜山水図屏風」
後期最大の目玉は本作に他なりません。精緻に表されたまるでタワーのような岩山に、山口晃風の楼閣や建物群、そして反面の狩野探幽を思わせるような墨の濃淡だけで示された草木など、使い分けられた表現技法が一枚の巨大屏風に同居していました。蕭白は何でも描けてしまいます。

円山応挙「海辺老松図襖」
東博所蔵の襖絵が府中に出張中です。応挙らしい見事な空間構成が映えています。岩場に迫る波、そして雪松図ならぬ遠近感を思わせる松などに、彼らしい表現を見て取れました。


長澤蘆雪「蓬莱山図」
後期のトリはこの作品です。中央の砂州を軸に右下から亀の群れが、そして右上からは仙人の乗る鶴が飛来しています。前期の若冲の「石峰寺図」同様、彼岸の国を旅して今回の展示は終わりました。

2007年は『動物』、そして今回は『風景』でした。少し気が早いですが、次の展示のテーマは一体何が来るのでしょうか。余所には真似出来ない、魅惑の「府中・江戸絵画シリーズ」にこれからも強く期待したいです。

10日までの開催です。お見逃しなきようご注意下さい。
コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (すぴか)
2009-05-07 23:43:36
こんばんは。
府中美術館、山水に遊ぶ、ほんとに遊ばせて
もらいました。
最初に江戸の洋風画に興味を持ってたもの
ですから司馬江漢・小田野直武・佐竹曙山などで
たのしみ、そして正統的な山水画、江戸時代って
すごいですね。
 
 
 
Unknown (一村雨)
2009-05-08 05:17:01
私も全体を通して、司馬江漢の絵の印象が
強かったです。
日本絵画ブームの昨今、異能な絵師、司馬江漢の
浮世絵から油絵まで、大規模な展覧会を開けば
ヒットするかもしれませんね。
 
 
 
所蔵品展 (mizdesign)
2009-05-08 08:23:46
こんにちは。
ここは所蔵品展も良いですね。
松本俊介に牛島憲之と見所満載で楽しめました。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2009-05-08 21:30:36
@すぴかさん

こんばんは。早速のコメントをありがとうございました。

>最初に江戸の洋風画に興味を持ってたものですから司馬江漢・小田野直武・佐竹曙山などでたのしみ

司馬江漢あたりは府中も所蔵品があったのではないでしょうか。
この辺の企画展になると滅法強いですよね。

本当に楽しめました。


@一村雨さん

>異能な絵師、司馬江漢の浮世絵から油絵まで、大規模な展覧会

そう言えば司馬江漢単独の展覧会はありませんでしたね!
それは受けるかもしれません。見たいです!


@mizdesignさん

こんばんは。

>松本俊介に牛島憲之と見所満載

松本の作品は私も印象に残りました。府中が持っていたとは知らずに…。

仰るように府中は常設も楽しめるのが良いところですね。
企画展と連動した作品などもあって面白かったです。
 
 
 
Unknown (もか)
2009-05-09 12:35:16
こんにちは。
↑の皆様のように通ではありませんが江戸絵画初心者でも楽しめました。
前期を見逃してしまい、今更ながら残念です。
前期のエントリーではろるどさんが予告?されていた通り、
図録も既に完売で、これまた残念でした。。。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2009-05-10 11:43:29
もかさんこんにちは。

後期へ行かれたのですね。
図録は前回の江戸絵画展ではもっと早く売り切れてしまいました。
テキストも充実していましたし、記念にと思って買われた方も多かったのでしょうね。
再版していただけると嬉しいのですが、残念ながらそうした例はこれまでないそうです。

次回の江戸絵画もまた期待したいと思います!
 
 
 
Unknown (oki)
2009-05-10 23:43:34
こんばんは。
府中、江戸絵画シリーズとはいいですね。
板橋は江戸絵画シリーズ、文字通りやってますが、それに対抗できそうですね!
図録の完売は惜しまれます、目黒の石内展、図録の再販売はじめたとサイトにありましたが、府中も考えていただきたいです。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2009-05-11 21:26:39
okiさんこんばんは。

>府中、江戸絵画シリーズとはいい

そういえば同時期の開催でしたね。(今回はやはり府中に軍配でしょうか。

>目黒の石内展、図録の再販売はじめたとサイト

それは知りませんでした。
石内さんの図録は一般書籍なのでしょうか。
どうも素人からすると図録は不便ですよね。(売り切れるとそのまま終わってしまいますので…。)
全て一般図書として流通にのせてほしいと思います。
 
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