「横尾忠則 『ふたつめの壺/温泉主義』」 SCAI/西村画廊

SCAI THE BATHHOUSE台東区谷中6-1-23
「横尾忠則 ふたつめの壺」(第二期)
3/7-4/5

西村画廊中央区日本橋2-10-8 日本橋日光ビル3階)
「横尾忠則 温泉主義」
3/11/4/12

共催というわけではありませんが、現在、都内二カ所の画廊で開催中の横尾忠則の新作個展です。先日、谷中(SCAI)から日本橋(西村)とハシゴする形で見てきました。



「ふたつめの壺」と題したSCAIの展示では、旧作の並んだ「横尾忠則の壺」(3/1終了)に続き、ただ一点を除いて、全て新作の絵画が紹介されています。導入に旧作の「真実が現実になる時」(1994)を掲げ、それ以降は派生する、かのシュールでコテコテの横尾ワールドがこれ見よがしに展開されていました。ちなみに今挙げたものは、オーロラのように靡く紫の空の下、一隻のボートに乗る黒い帽子をかぶった怪し気な男たちが、とある裸婦を、サメの泳ぐ海へと落とそうとせんばかりに勇ましく立つ様の描かれた作品です。そしてそれらを洞窟の中のような場から見つめているのは、どこか場違いな感もある二人の男女でした。またこの裸婦のモチーフは後、新作の「酔いどれ舟」(2008)や「気まぐれ」(2008)などにも、ほぼコピーするかのように頻出します。さながらデルヴォーに記号の如く現れるセクシャルな裸の女性のようです。



そのような女性像がまたぴったりと場にハマるのが、日本橋の西村画廊で開催されている「温泉主義」の展示でした。こちらでは実際に横尾が国内の各温泉地を歩き、それぞれに得たインスピレーションをもとに描いた絵画が紹介されていますが、彼の見た温泉地が、自身の記憶や時間体験などとごちゃ混ぜになって提示され、シュールさを通り越したカオスな温泉場が鮮やかなモチーフに変身して表現されています。お馴染みのY字路の構図をとる「下田幻想」(2007)は、何と温泉地自体が海底へ沈み、魚や沈没船とともに酸素ボンベをつけた人々がそぞろ歩きをするという破天荒な作品です。また軍用機の行き交う「白浜」(2006)では、昭和を風靡したかの温泉地の記憶が、古びた集合写真とともに残像のようにして伝えられています。そしてかの裸婦は「城崎幻想」(2006)に登場しました。もはやモニュメントです。(上DM画像作品。)

「温泉主義/横尾忠則/新潮社」

旧作も新作も全く枯れることのない力強さ、または変わらない、良い意味での既視感が横尾の魅力かもしれません。なお4月19日からは、世田谷美術館にて「冒険王・横尾忠則 初公開!60年代未公開作品から最新絵画まで」が開催されます。そちらも合わせて楽しみたいです。

SCAIは4月5日、西村画廊は同月12日まで開催されています。
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