極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

トベラと消えた成長モデル

2009年11月21日 | 政策論



母ひとり されど母なる もの多し 荒ぶ海辺に トベラがひとつ



【蜜月後の新政権の課題】

今年もいろいろな1年間の総括の時期にきた。リー
マンショックの金融危機の黒い影は、家族も地域に
も職場も覆い尽くした。百年前と異なるのは、生活
水準が、科学技術が格段に(その影の部分が世界気
象変動が喫緊)発展しているため生理的な緊迫感が
薄れているが、その代わりに国民的な精神的圧迫感
は増していると考えられる。これは危険な前兆だが
その回避性の可否は新政権に担われている。そんな
ことはない、政治の力を借りなくとも自立して切り
開けるだと言って退ける国民は少ないだろうと思う。
それ程に高度な分業社会と隔絶して生活できるはず
もない。その意味で<貨幣>がすべてだとも象徴でき
るような社会に住んでいる。



まず、新政権の性格について、ダイヤモンドオンラ
インのみんなの党の渡辺喜美が「
主党政権のステ
ルス司令塔は財務省。公務員制度改革で官邸政治を
取り戻せ
」の論旨を皮切りに考察してみよう。

(1)財務省が公務員制度改革に抵抗するための「
  ステルス司令塔」になっている。自民党がそう
  だったように、民主党政権も実質的に財務省に
  よって下支えされている
(2)財務省は人事権を一手に握り、予算・給与制
  度をテコに、公務員制度を内側から仕切って公
  務員制度改革に抵抗している
(3)郵政民営化は、郵便貯金を特殊法人への財政
  投融資に使い、天下りを温存してきた官僚シス
  テムの廃止にあったが、政府主導の「巻き戻し
  」が本格化すれば、傘下企業219社、天下り職員
  二千名という巨大な「郵政ファミリー」が温存
  される
(4)権力二重構造があるところに「官僚政治」
  がはびこる。特に総理官邸ではなく、党本部に
  官僚とパイプを持つ権力者がいる状況では真の
  政治主導はあり得ない
(5)官邸に人、政策、おカネの権限を集中するこ
  とこそが真の政治主導だ。
(6)将来的には、「内閣予算局」を設置し、財務
  省から予算作成事務を移管することも大きな目
  標の1つだ
(7)抜本的な中小企業金融対策として損失補填や
  独立性の尊重を保証し、債権の買い取り要請力
  を持たせる「日銀法改正案」の立法化を計画

これらは、(1)は財務省(旧大蔵省)と他省庁と
の内部の覇権抗争、角福抗争の残滓であり55年体
制・財政投資・経済成長期の旧形態の残滓の問題化
(要観察)。(3)は相当の知恵を絞った
再建案
を示さない限り国民の支持は得られない
(要観察)。
(4)は参議院選決戦第一主義の小沢一郎の腹ひと
つで分水嶺となる。(5)は形式の問題で枝葉末節。
(6)は不要(政治家は非規路労働→官僚は規路労
働)。(7)はマクロ政策ならわかるが個別債権買
い取りなら問題と整理できるが、公務員制度問題の
本質は、①経済実態の激変→規路労働の変容、②政
治主導の側面と「組織の自己増殖」側面があり、後
者について、最適配置と労働条件見直しがある。特
に、
平均所得格差が民間より公務員が50%も突出し
ている有り様の是正
喫緊で、そこで削減(→仕事
を削減するのではなく、あくまでも、労働総量を増
やす成長戦略。ワークシュアリングでもない)され
た税金を、医療介護などの他分野への産助資源配分
に振り向けなければならないと考えている(『
実葛
と電子マネー
』)











ところで、公務員と民間人との有り様といえば「官
民尊卑」という言葉を耳にすることがなくなった。
代わりに「政治主導」という言葉をよく耳にすると、
かつて、レーニンの官僚や公務員平均賃金が民間レ
ベルを150%以上超えてはならないとの原則が破られ
ていく過程やトロッキーが旧体制軍人の登用に躊躇
なかったなどの『ロシア革命史』(→如何に反革命
へと転落していったか)を思い出す。この直感がど
の様に関連するのか、わたしを含めた大衆の選択と
いう重みを咀嚼し、政権交代に託した思いの先の、
低成長時代のリアリティに向き合う政治的意識の、
その先の
政事像とどう絡むのかを『現代思想-特集
政権交代』、青土社、09年10月号を元に考えてみた。


【政治体制の総括と展望】

議論がブレぬ様に予め、消去法にてこれまでの政事
経過から抽出できる基本的了解事項を列記しておく。

(1)高度経済成長型モデル→人口増、供給重視、
  財政出動型政治システムが終焉
(2)少子高齢化、産業構造変化、地球環境変化に
  よる低成長条件の肥大化と対応の遅れ
(3)財政出動モデルの経済成長戦略の破綻
(4)(3)を是正した小泉-竹中構造改革の成長
  戦略の破綻

 渡辺治

今回の政治劇は、新自由主義に対する怒りと変革を
求める声が産助したことは間違いない。それが民主
党へと集中したという点で新自由主義転換のはじめ
一歩。(1)
もともと、新自由主義(ゼロ・サム→
成長)は、生じた矛盾を吸収する内部のメカニズム
がない
。欧州的福祉主義あれば(労働運動の賃金上
昇→教育、介護、福祉分野への富裕層或いは法人か
らの税徴収→成長)、国内市場は拡大発展しいくと
渡辺治指摘(『鳩山政権と新自由主義の行方』)。



1995年、日経連が提出、政治により推進した構造改
革。特に労働者派遣法の99年の改正で業種を原則自
由化し、04年の産業部門である製造業への派遣も解
禁され、最後に、貧弱な補完的な社会保障制度も、
高齢化などで支出が拡大するに伴い企業の法人税負
担が増加を理由の下、大胆なリストラが行われた。
95年、日経連の出した『新時代の日本型経営』で正
規従業員は3分の1、残りを柔軟雇用型、専門能力
活用型の非正規雇用にする方針を打ち出し、小泉構
造改革で未曽有の企業利潤率を確保→派遣切りやリ
ストラで企業からは放り出され、新貧民階層が大量
に生み出されされ、自殺や餓死、犯罪(秋葉原事件)
が発生→反貧困運動が起きた。これらを背景に、最
も重要な財源問題である消費税増を『政権交代』の
中で「言わない」民主党は、第二保守政党として育
てようとした財界の目論見を超え
安保問題でも保守
政党の枠組みを逸脱し、財界と米国に非常に強いプ
レッシャーを与えたとも。



【新自由主義の行方】

渡辺治の論旨を要約すると次のようになる。

(1)マニフェストをめぐる戦い→新自由主義の是
  正、再編か→公共事業投資の古い政治に戻るの
  か→子ども手当、生活保護の母子加算の復活、
  後期高齢者医療制度の廃止障害者自立支援法の
  廃止、農家戸別所得補償の達成度は?
(2)財源問題-人的拡充か、削減か→公務員人件
  費の二割削減、無駄の排除→地方と国家の公務
  員制度改革の進捗は(みんなの党の党是)?

しかし、渡辺の小沢的な勢力が社会保障関係の公務
員たち切り捨てられることへの憂慮は、わたし(た
ち)の論点では雇用条件が変わるだけで、寧ろ仕事
は増加する→成長戦略であり杞憂と思える。


次に「国家戦略局の狙い」で次の論点から、新たな
試みで、潰される可能性があり、また、実行できた
としてもうまく機能するのか未知数だと指摘する。

(1)新自由主義を基盤とした大企業支援型国家を
  目指すのか、反新自由主義国家を目指すのか?
(2)個別政策では非常に福祉国家的な観点を打ち
  出しているが、国家構想という点で、新自由主
  義国家に適合姿勢を示す→経済財政諮問会議の
  領域拡大が国家戦略局→トップダウン型推進?

さらに「地方主権の意味するもの」では、次のよう
な観点から「社会福祉切り捨て」に繋がるのではと
指摘している。

(1)国家戦略局以上に大事なのが、地方主権国家
  で、分権は天皇制国家を経験した日本の近代主
  義的な志向からは、ポジティブなものとして捉
  えられ、国家構想という観点だ
(2)しかし「地方主権国家」の名の下で地方の住
  民の意志を反映する構想は全くない
(3)構造改革の決定はトップダウンで行い、実行
  は地方でやらせ、地方に構造改革の責任を委ね、
  都道府県間で競争させて改革を促進する狙い
(4)小泉の三位一体改革と同じ→補助金と地方交
  付税交付金を切り捨てる代わりに、地方が自主
  的に使えるカネを、絞って与える→判断権だけ
  は地方に与える



【低成長時代の政治意識】

この社会の停滞が明確になり選挙民の政治意識が変
化し、政治制度の改編が求められ立ち竦んでいる。
そこのところを萱野稔人に炙り出してもらおう(『
低成長時代の政治意識』)。

kayano.jpg 萱野稔人

五千万件もの「宙に浮いた年金」にみられるような
年金記録問題にこの停滞が逆照射していると指摘す
る。「噴出する年金問題に対してまごついてしまっ
た自民党の姿は、経済成長を前提としなければいか
なる政策決定もできないその体質を露呈させてしま
った」「自民党は、まず経済成長ありきで、そのた
めには開発独裁的なパターナリズムも許されるとす
る政党なんですね。そうした統治の原資がなくなっ
てしまったことの結果です」と。


 

そして、今回の民主党の大勝の背後の「低成長時代
のリアリティに向き合う政治的意識がここにきてよ
うやく確立した」「低成長時代では経済成長戦略を
いくらやっても効果はなく、ほかの政策モデルによ
って国民生活をまもっていかなくてはならない」と
指摘する。それはどの様なものかの疑問に、再分配
政策の「結果」として内需拡大がおこり経済成長が
もたらされることを志向するような政策モデル→成
長戦略をまずおこない、その果実を再分配するとい
う自民党の政策モデルとは逆にすれば良い言う(こ
れは、このブロブで再三再四書いてきたことだが)。




もう少し彼に語ってもらおう。「高度経済成長をモ
デルにした政策のツケが莫大な財政赤字
として具体
的にあらわれているのです。おそらくフォーディズム
に象徴されるような後期産業資本主義において、高
度経済成長は一度しかおこりえないものなのでしょ
う。たとえば、それまでテレビがなかった社会にテ
レビが供給されれば、それは設備投資も含めてたい
へんな需要を生みだします。しかし、すでにテレビ
がいきわたったところでは、いくら商品に付加価値
をつけたところで需要の伸びはたかが知れている。
80年代から起こったデジタル化の波(アナログレコ
ードがCDにかわったり、コンピューターやインタ
ーネットが普及したり、テレビがアナログ放送から
デジタル放送に移行すること)も、とりわけアメリ
カで金融資本主義を発達させITバブルをもたらし
たものの、実体経済のレベルではそれほど大きな経
済効果をもちませんでした」。


■ 

そして、「経済成長への野心をもたない経済行為
どのように資本主義と折り合わせていくのか、とい
った問題にますます向き合わなくてはならなくなる
でしょう。強い上昇志向も消費性向ももたない若者
が大量に生まれているといわれているのは、そのあ
らわれかもしれません」「自民党は新たな経済成長
の戦略として構造改革路線に舵を切るようになりま
した。政府の支出を抑えながら、それにもかかわら
ず経済的な活力を生みだすために規制緩和をおこな
い、資本が利潤を得やすいような環境を整備してい
くという政策ですね。こうした構造改革路線は成功
しませんでした。というのも、その経済成長は、ア
メリカのバブル経済によってもたらされた外需拡大
に完全に依存したものだったからです」「
小泉構造
改革期の経済成長は、グローバリゼーションのもと
で日本の資本市場も労働市場も国際化したという状
況のなかでもたらされたものです。だから、外需と
直接むすびついたトヨタのようなグローバル企業は
とても儲かるけれども、ドメスティックな市場しか
相手にできない中小企業はその恩恵をまったく受け
ることができなかった。アメリカでの不動産バブル
や中国などの新興国での経済発展によって世界の経
済成長が牽引されていても、その果実は構造的にグ
ローバルな大企業しか受け取ることができなかった
のです」という彼の言葉はわたし(たち)の心の
奥処までに届く重いものだ。


トベラ(扉、Pittosporum tobira)はトベラ科トベラ属
の常緑低木。東北地方南部以南、韓国、台湾、中国
南部までの海岸に自生する。潮風や乾燥に強く、つ
やのある葉をに密生することなどから観賞用あるい
は街路樹として道路の分離帯などに栽培される。雌
雄異株。芳香ある白色花「トベラ」。花言葉は「偏
愛」「慈しみ」。


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