函館市とどほっけ村

法華宗の日持上人にまつわる伝説のムラ・椴法華。
目の前の太平洋からのメッセージです。

秋の日はビル・エヴァンスと椴法華音頭

2018年10月15日 08時13分13秒 | えいこう語る

▼昨日のブログで、1980年51歳で亡くなったモダンJAZZのピアニスト、ビル・エヴァンスのことに触れたので、ちょっぴり彼についての話をしたい。

▼スーツ姿でポマードの匂いが漂う、知的で紳士的なJAZZピアニストというイメージがあるエヴァンス。そんなCDの表紙と、ヒッピーのように髪ぼさぼさのエヴァンスのCDを私は持っている。

▼もちろん先のイメージが好きなのだが、なんでぼさぼさになったのかを調べようともしなかった。しかし、今読んでいる宮本輝さんの「真夜中の手紙」という本に、エヴァンスのことが書かれていたので、インターネットで検索してみた。

▼彼の父親は英国ウエールズの相当な身分の人物だったという。初めはクラッシックから始まるという、JAZZメンとしての王道を歩く。だが、若い頃から、飲酒と麻薬を常用し、後半は身体がボロボロになり、歯が欠けたり肌がボロボロになったので、長髪にし隠していたそうだ。

▼永年内縁関係だったエレインに別れ話を持ち掛けたのは、ザザーラという恋人ができたためだ。エレインは地下鉄に投身自殺をする。ザザーラと結婚し子供をもうけるが別居し、20歳以上も年の離れた若いウエイトレスと愛人関係になる。その間、兄が拳銃自殺をしている。

▼彼の死を、JAZZ評論家で生前のエヴァンスと親しかったジーン・リースは【彼の死は時間をかけた自殺というべきものであった】と述懐している。

▼そんなエヴァンスのまさにJAZZぽい生涯を想い、2枚のCDを店(私の妻の店)で聴いていた。そこに、私の母の同級生のおばさんが娘に連れられやってきた。

▼大正14年生れの満93歳だ。会話ははっきりし地元で一人暮らしをしている。先日の胆振東部地震で、外に逃げようとしたが停電していたため、ベットの角に頭をぶっつけて出血したという。

▼真っ暗闇の一人暮らし。思いっきり泣いたという。泣き止んだらすっきりしたとも話していた。以前から、地域にある老人施設への入居を進められていたが、この地震に背中を押されたように入居を決意したという。

▼明日入居するというおばさんは、店のメニューにないオムライスをいつも注文する。私の妻が、夕顔の味噌汁をごちそうした。「何年も食べていないが、いい味だね」と何度も繰り返す。

▼「おばさん入居祝いに椴法華音頭を聴かせてあげる」と、私がCDをセットした。その歌詞は、戦後間もない頃の村の風景や、大漁が続いた前浜の様子が、走馬灯のようによみがえる内容なのだ。

▼おばさんは、口ずさみながら手拍子を始めた。若い頃の自分を確認するかのように。妻がティッシュを差し出した。おばさんの目に涙が浮かんでいたという。

▼2018年10月15日。晩秋の空は晴れ渡り、太平洋波平らか。沖の方から、色づく背後の山々から、椴法華音頭が流れ、母の同級生のIおばさんは、笑顔で老人施設へ入居する。