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赤字額の大小で鉄道の値打ちが決まる訳ではない!

2022年10月14日 23時06分06秒 | 身辺雑記・ちょいまじ鉄ネタ
 
先日の嵯峨野トロッコ列車について、「行って帰って来るだけなのに片道880円の運賃は高過ぎる」と先日ツイッターで呟きました。それに対し、「車掌が社内で松山千春の歌を熱唱してくれた事を考えると、片道880円でも安い」と反論されました。でも、それでも高過ぎると思うので、比較検討の為に先日、1日乗車券で阪堺電車に乗って来ました。
 
住之江区の自宅から阪堺線我孫子道駅まで自転車で向かい、そこで600円で全線乗り放題の1日乗車券を買いました。そして、我孫子道駅から阪堺電車に乗り、始発ターミナルの上町線天王寺駅前駅に向かいました。まずは天王寺駅前駅を、あべのハルカス17階のファミマや阿倍野歩道橋、同駅ホームなどから撮影。そこから本格的に乗車レポートを始めます。
 
 
阪堺電車の魅力は、何と言っても車窓風景の変化です。阪堺電車は、路面電車でありながら、専用軌道を走る区間が長いのです。その為に、併用軌道から専用軌道へ、そして再び併用軌道へと、車窓が目まぐるしく変化します。沿線も高級住宅街あり、下町エリアありで、街の表情も多種多様です。路面電車なのでスピードは遅いですが、その分、長時間に渡って、多様な車窓風景を楽しむ事が出来ます。
 
 
天王寺駅前駅から松虫駅までは道路上の併用軌道を走ります。併用軌道と言っても分離帯で区画されているので、クルマは軌道内に侵入出来ません。但し、それでも併用軌道なので、時刻表だけでなく交通信号の指示にも従わなければなりません。松虫駅から北畠駅までは道路から分かれて専用軌道を走ります。
 
 
途中の東天下茶屋駅上りホームには馬車軌道の碑が立っていました。この上町線は最初、明治時代に、四天王寺から住吉大社に向かう馬車鉄道として、東天下茶屋駅まで部分開通しました。その記念碑の説明書に添付された昔の地図の中に、飛田や釜ヶ崎などの古い地名を発見した時は、まるで骨董屋で掘り出し物を見つけたみたいで嬉しかったです(右上の写真。飛田・釜ヶ崎の部分に黄色の傍線を引きましたが分かりにくいかも)。
 
 
 
北畠駅から帝塚山4丁目駅までは再び道路上の併用軌道を走ります。併用軌道の停留所は敷石で道路から一段高く作られていますが、他には何も遮るものがないので、誤って走行中の自動車にぶつけられないか少し不安でした。唯一の救いは、道路を挟んだホームの向かいに、停留所の待合室が設置されている事です。これで雨露はなんとかしのげます。天王寺駅前から遠ざかるにつれ、あべのハルカスの姿が徐々に小さくなっていきます。
 
 
帝塚山4丁目駅から住吉駅までは再び専用軌道。途中の神の木駅で南海高野線の上を跨ぎます。阪堺電車と高野線の両方撮影を狙うのは至難の業で、よっぽどタイミングが合わない限り無理みたいです。
 
 
 
住吉駅で上町線と阪堺線が合流。昔は恵美須町行きの阪堺線が本線で、上町線はあくまで支線でした。ところが今や天王寺方面に向かう上町線の方が本線で、阪堺線は完全に支線扱い。ダイヤ本数も、前者が約6分間隔で電車が来るのに対し、後者は20〜40分間隔。深夜帯になるともう1時間に1本しかありません。
 
 
ロータリーの住吉駅も昔はダイヤモンドクロスで、上町線の線路が住吉公園の終点まで伸びていました。今やその住吉公園駅も時間貸し・月極駐車場に変貌し、廃駅舎だけがかろうじて残っています。
 
 
細井川駅からまた専用軌道に戻ります。そのたびに車窓の景色がガラッと変わるので飽きが来ません。それに加えて、住吉大社に住吉公園、潮掛け道に高灯籠まであり、まるで歴史遺産の宝庫です。
 
 
車庫のある我孫子道駅は同時に乗り換え指定駅でもあります。我孫子道止まりの電車に乗ってしまった場合でも、この駅で乗り換えれば2区間分の乗り換え運賃だけで支払いが済みます。我孫子道駅には阪堺電車の本社と車庫があります。乗り換えだけでなく車庫の入れ換えも見る事が出来るので、鉄道ファンにとっては見所満載の駅です。
 
 
以下は、我孫子道駅での車両入れ替え手順です。単に駅を通過するだけの場合は、ホーム先端にある出発信号機の表示を確認するだけです(上2枚の写真)。それに対し、車庫の入出庫の場合は、駅に進入する電車だけでなく、車庫から出て来る電車も、互いに衝突しないよう誘導しなければならないから大変です。電車が本線が通過する時と車庫から入って来る時では、ポイントの向きがガラッと変わります(下2枚の写真)。
 
 
浜寺公園行き電車は我孫子道を過ぎると大和川を渡ります。その大和川の鉄橋と堤防上にある大和川駅も、鉄道ファンにとっては絶好の撮影スポットです。
 
 
 
大和川を渡ると電車は大阪市から堺市に入ります。そして綾之町駅から御陵前駅まで、ひたすら大道筋の併用軌道を走ります。但し、併用軌道と言っても道路とは分離帯で隔てられているので、帝塚山の併用軌道のように自動車が軌道上に進入して来るおそれはありません。それでも併用軌道なので、幾ら横の交通信号が青でも、黄色の矢印が出ていなければ、電車は前には進めません。
 
 
宿院駅の近くには、千利休と与謝野晶子を記念して作られた「利休の杜(もり)」という記念館があります。そこでは一般の観光客も茶道に則った茶菓の接待を受ける事が出来ます。その茶会の名を「立礼呈茶(りゅうれいていちゃ)」と呼びます。しかし、その茶会参加費用の高い事。お茶と小さな和菓子が付いているだけで何と800円もします。幾ら有名な茶道の流儀に則って行われるとしても、阪堺電車の1日乗車券よりも高いのでは…。記念館では私も茶会への参加を勧められましたが、余りの「ボッタくりぶり」に、もうバカらしくなって止めました。
 
それでも昔の宿院駅のジオラマが見れたのは良かったです。昔は宿院から大浜支線が分かれ、大浜海水浴場の方まで延びていました。海水浴場の近くには海水を沸かした「潮湯」という健康ランドがあり、大いに繁盛したそうですが、室戸台風で被災し、戦争を機に閉鎖に追い込まれてしまいました。
 
 
御陵前駅から先は終点の浜寺駅前駅までずっと専用軌道です。路面電車は、商店街や市街地の中を通る時は、土地買収や集客の都合で併用軌道で開通させました。その反対に、周囲に建物が何もなければ、目的地への輸送時間短縮を図る為に、専用軌道で開通させました。その結果、専用軌道と併用軌道が目まぐるしく入れ替わる今の路線が出来たのです。
 
阪堺電車は、船尾駅を出て終点の浜寺駅前駅に向かう途中で、南海本線を跨ぎます。その南海本線を跨ぐ鉄橋の直ぐ前に、何やらホームの跡があります。今はなき海道端という停留所の跡です(路線図の隣の写真)。
 
 
やがて電車は終点の浜寺駅前駅に着きます。終点は頭端式ホームになっており、ホームに折り返しの先発電車が停車している時は、後から来た電車は、手前のホームに止まらなくてはなりません。浜寺駅前の駅舎も年季が入っていました(上2枚の写真)。駅舎の前は道路を挟んで福栄堂という老舗の和菓子屋があります。海側には浜寺公園が広がり、山側には南海本線浜寺公園駅の古い駅舎が立っていました。南海本線では現在、高架工事が進められています。浜寺公園の古い駅舎も、取り壊さず是非、歴史遺産に登録して保存して欲しいです。帰りは向かいの「松露だんご」で有名な福栄堂で「ちん電どら焼き」を買い、トンボ返りで堺トラムに乗って帰りました(下2枚の写真)。
 
それで最初の本題に戻りますが、嵯峨野トロッコ列車よりも阪堺電車の方が、運賃もはるかに安いです。楽しみもはるかに多いです。沿線の見所もはるかに多いです。なのに何故、嵯峨野トロッコ列車は切符がすぐ売り切れるほど盛況なのに、阪堺線は赤字続きなのか?
 
阪堺線内で利用客の減少が著しいのは、南北の末端区間(住吉・恵美須町間と御陵前以南)です。それは先日も実際に電車に乗って分かりました。浜寺公園から御陵前までは数人の乗客しかいませんでした。御陵前あたりからようやく乗客が増え出し、我孫子道を過ぎる頃には座席が埋まり始め、上町線に入ればラッシュ並みの混雑となります。
 
では何故、南北の末端区間の乗客減少が止まらないか?並行して走る南海本線の方に乗客が流れてしまっているからです。浜寺公園から阪堺電車で天王寺に出るには片道50分かかります(その代わり運賃は片道230円)。それが南海だと新今宮でJRに乗り換えても30分余で済みます(同470円)。幾ら運賃が割安でも、20分も余計に時間がかかっていては太刀打ちできるはずがありません。
 
でも、その前に乗った嵯峨野観光鉄道(トロッコ列車)も、並行して走るJR山陰本線の同じ区間と比べ、運賃も時間も約4倍かかります。なのに切符はいつも売り切れ、列車は乗客で一杯。この差は一体どこから来るのか?
 
大きな違いは、トロッコ列車は観光列車に特化している事です。通学客や通勤客は全て並行して走るJRの方に乗ります。そちらの方が早く着くし運賃も安いのだから当然です。その代わりに、保津川沿いの廃線跡を走るトロッコ列車に乗れば、渓谷美を堪能できます。だから観光客が全国から殺到するのです。おまけに全長わずか7.3キロの短い区間に、一編成だけの車両がピストン運行。信号設備も踏切もありません。最小限の経費で利益を上げる事が出来ます。
 
阪堺電車とは鉄道の質が全然異なるのです。下町を走る生活路線の阪堺電車に、嵯峨野観光鉄道と同じ真似が出来る訳がありません。それでも何とかトロッコ列車のノウハウを取り入れる事は出来ないか?私も色々考えてみました。例えば、浜寺公園で音楽ライブを挙行して観光客を集めたらどうか?線路沿いの土手に桜や紅葉を植え、夜はライトアップしてはどうか?恵美須町行きの区間にDMV(デュアル・モード・ビーグル:線路と道路の両方を走行出来る車両)を走らせ、難波まで乗り入れたらどうか?等々。
 
でも、バカらしくなって止めました。幾らそんな事をして、観光客を集めた所で、肝心の一般利用客が増えない事には、赤字は解消されません。それは、猫の駅長やらSL運転やらで増収を図ろうとしている地方ローカル線が、依然として赤字基調から脱却出来ていない事を見ても分かります。猫のタマ駅長で赤字を劇的に減少させたとされる「優等生」の和歌山電鉄ですら、赤字基調からは依然として脱却出来ないでいるのですから。
 
 
その挙句に、銚子電鉄のように、電車も線路もガタガタなまま、駅舎だけ企業広告でケバケバしくしても、根本的な解決には結びつかないのではないでしょうか?(銚子電鉄の木製架線柱とヘロヘロの一本架線、もはや企業広告だらけでどれが本来の駅名か分からない駅名掲示板の惨状を見よ!)
SL運転を最初に始めた大井川鉄道も、乗客が殺到するのはSLだけで、肝心の普通電車はダイヤ大削減で、もはや経営は風前の灯火だと噂されています。勿論、企業努力は必要ですが、今はもうそれだけでは、鉄道の衰退を止める事は出来ない段階に来ていると思います。
 
では、「赤字の阪堺電車は、黒字の嵯峨野観光鉄道より劣っているのか?」と問われれば、私はむしろ逆に、阪堺電車の方に軍配を上げます。それは今までのレポート内容からも明らかです。阪堺電車の方が、はるかに地元住民の役に立っているし、車窓風景も豊かです。嵯峨野観光鉄道が廃止されても困るのは観光客だけで、沿線住民はほとんど困りません。しかし、阪堺電車はそうではありません。だとしたら、行政が支援すべきなのは、一体どちらでしょうか?もはや答えは自ずと明らかではないでしょうか。

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