湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

澄むの詩パート1

2023-08-20 06:57:32 | オリジナル

共通テーマ「澄む」でAが書いた詩を投稿します。

いかがわしき人生

 

それを意識したのは何歳だったか

初めて声にしてみたときは

発音できている確信がなく

幼稚な詭弁ではないのかと

耳の端をひそかに朱くした

 

決して澄むことなく終わった後に

鎮魂の枕詞付きの

類型的感情添えの

表層的な回想で

結局ナンセンスと同義であった

一生をさらに濁らされることも

それはそれで

ちょっとした洒落のようなものだろう

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氷の詩パート3

2023-08-18 17:26:41 | オリジナル

共通テーマ「氷」でAが書いた詩を投稿します。

酸っぱいシロップ

 

新鮮な果実のソースが売りものの

夏だけ開くかき氷店の行列に一時間並んで席につくと

ほとんどのメニューが売り切れている

食べたかった果実と違うものしか選べない

いや これは選択不可能ということだ

 

食べたいと思わなかったものしかない店のテーブルで

思っていたのと違う酸っぱいシロップを

味わう気にもなれずに口に運ぶ

口中はただ冷えていく

 

選ぶのに時間がかかっても

悩みながら選んだ末に後悔しても

選択肢がほしかった

などと言っていられるのは

戦争が七十八年間起きていない国に住んでいるからだが

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氷の詩パート2

2023-08-16 22:12:24 | オリジナル

共通テーマ「氷」でEが書いた詩を投稿します。

 

往昔 冬の氷を夏まで保存する氷室というものがあって

貴人は暑中一片の氷を口に運ぶ

宮廷のすみずみに涼気が及ぶ

 

今 携帯の扇風機があるらしい

だがそれは一人の顔に熱風を送るだけ

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かの子ぼんぼり

2023-08-14 07:01:01 | 文学

お盆にちなんで今年の鶴岡八幡宮ぼんぼり祭からもう1灯。

ささめやゆきさんのぼんぼりには鎌倉ゆかりの文学者が描かれているので、行ったら必ずチェックしてます。

今年のぼんぼりは、岡本かの子でした。

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蜘蛛の巣俳句

2023-08-12 10:18:46 | 文学

今月の小笠原学園俳句レッスンもうひとつの兼題「蜘蛛の巣」。

選に入ったけれど直しも入ったAの作品、添削後。

徘徊の蜘蛛の囲いに止まりけり

蜘蛛の囲の迷宮めきし鏡花の碑

他にこんな句も作りました。

蜘蛛の巣を雑に払ひて査定する

蜘蛛はばむ隘路の先の廃ホテル

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朝顔俳句

2023-08-11 08:27:51 | 文学

昨日の小笠原学園俳句レッスンで講師本選に入った「朝顔」の句。

野朝顔屋根へ駆けりてなだれ落つ

朝顔や少年の頬少し痩せ

他にこんな朝顔句を作りました。

朝顔の花を数えて夏休

ままごとの椀に朝顔盛られけり

朝顔の陰に伏したる肌蒼し

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系図

2023-08-10 18:46:48 | 文学

昨日まで開催されていた鶴岡八幡宮ぼんぼり祭で見つけた三木卓のぼんぼり。

1967年にH氏賞を受けた「東京午前三時」収載「系図」の最初の連ですね。

1972年に高田渡が曲を付け歌ったものです。

系図

 ぼくがこの世にやって来た夜

 おふくろはめちゃくちゃにうれしがり

 おやじはうろたえて 質屋へ走り

 それから酒屋をたたきおこした

 

 その酒を呑みおわるやいなや

 おやじはいっしょうけんめい

 ねじりはちまき

 死ぬほどはたらいて その通りくたばった

 

 くたばってからというもの

 こんどは おふくろが いっしょうけんめい

 後家のはぎしり

 がんばって ぼくを東京の大学に入れて

 みんごと 卒業させた

 

 ひのえうまのおふくろは ことし六十歳

 おやじをまいらせた 昔の美少女は

 すごくふとって元気がいいが じつは

 せんだって ぼくにも娘ができた

 

 女房はめちゃくちゃにうれしがり

 ぼくはうろたえて 質屋へ走り

 それから酒屋をたたきおこしたのだ

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鶴岡八幡宮ぼんぼり祭

2023-08-08 23:12:36 | 日記

鶴岡八幡宮ぼんぼり祭に行きました。いつも五七五が書いてあるぼんぼりを中心に見て回るのですが、今年は俳句よりこれがハマっちゃいました。

逗子小坪住みのイラストレーター滑川公一さん作のぼんぼり絵です。

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ガラスの詩パート1

2023-08-07 17:02:07 | オリジナル

新しい共通テーマ「ガラス」でEが書いた詩を投稿します。

ガラスの如く

 

赤の他人がひょんなことで

連れ合いになる 途端

亭主は給与を手渡す

相手はなんの疑念もなく

自分のものとして扱う

 

二身にして一心の

理想は年を経て

ガラスの如くくだける

 

くだけてみれば

うつつであったとは

とても思えない

あれは

なんだったのだろう

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「色ざんげ」に描かれた逗子

2023-08-05 07:59:10 | 文学

宇野千代「色ざんげ」に逗子が出てくることを逗子市立図書館の郷土展示「逗子が登場する文学~戦前編~」で知り、読んでみました。

東郷青児をモデルにした主人公の湯浅が、高尾という女性を連れ戻しに逗子のホテルへ赴く場面。舞台はなぎさホテルですね。

 

僕らは露台の側をぬけて海に面した広い芝生の方へ出た。「あそこにいらっしゃるわ。」つゆ子は立留って言った。西洋人の子供らを相手にきゃっきゃっと声を立ててボール投げをしているのだ。

(中略)

「支度が出来たから早く来ない? あ、お客さま?」「好いのよ。いま行くからちょっと待ってね、」言い捨てて間仕切りのカーテンの向うへ隠れたと思うと、間もなく白いセーラーに着替えて出て来たが、僕の方には一瞥もくれないで一緒に手を繋いでそのまま大股に廊下へ駆け出してしまったのだ。さっきから窓に向いて口笛を吹いたり手をあげたりしていたのはきっとあの男へ何か合図をしていたのだろうと、やっと僕は気がついたが、あのスポーツシャツを来た子供のような男は一体何だろう。しかしまだ一言も肝心の話をしない中に逃げられてしまった僕は階下の広間で待っているつゆ子のところへ飛んで行って一緒になって二人のあとを追って行ったが、もう砂浜のずっとさきの方まで駆け出してしまったあとでとても追っつけそうにはなかった。僕らは芝生のところで立留った。見ると岸に帆の赤いヨットが一艘つないであって、たちまちの中に二人は水の中へ押し出して海へ出てしまった。ヨットは一ぱいに風をはらんで走ってゆく。暫くの間僕らは呆気にとられてその行方を見守っているほかなかった。「すっかり出し抜かれてしまいましたね、どうします? 帰って来るまでここで頑張ってますか?」「そうね、」いかにも疲れた様子だった。「あっちで少しやすんでても好いですね、」僕はつゆ子の背に手をやるようにしてテラスへ帰ってゆくとそこの椅子にかけさせた。晴れた空の下にどこまでも青い海が続いている。一望のもとに湘南の海が見えるのだが、その青いグラウンドを沖へ出たり戻ったりしている赤いヨット帆の動きは、思いようによっては僕らを愚弄しているようでもある。

なぎさホテルは大正15年開業。その昭和3年頃の様子です。典型的モボ・モガがオシャレ最先端のなぎさホテルに集って海を愉しんでたのね~。

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