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手造りPHEVで、そしてプリウスPHVで二度の日本列島縦断を達成し、世界初EV南極点到達を目指し活動する冒険チームです。

新型プリウスのブレーキ問題の真相は?2

2010年02月13日 03時16分58秒 | NEWS

昨日書いた「新型プリウス・ブレーキ問題の真相は?」という日記の中で、トヨタがHPで公開している「改善箇所説明図」を引用し、今回のリコールで改善するとしているポイントとして、
現状 ABS作動前の制動力 > ABS作動後の制動力 としているプログラムを
    
ABS作動前の制動力 = ABS作動後の制動力 に変更する
としている点を御紹介しました。今日は、その内容について、もう少し考えてみたいと思います。

徐々にあきらになって来た情報を寄せ集め、EVヲタクの経験を加えて判断すると、現行プリウスのブレーキ制御は下のチャートのような感じなのかと思います。手書きなのは御勘弁下さい。

これを前提に、 ABS作動前の制動力 > ABS作動後の制動力
になる理由を考えてみます。通常走行時エンジンが停止していれば、プリウスは回生ブレーキと油圧ブレーキとの「協調制御モード」で走行しています。途中何らかの理由でタイヤロックが発生すると、ブレーキ制御は「協調モード」から「ABSモード」に切り替わります。「ABSモード」は回生ブレーキを使わない油圧ブレーキだけのモードですから、

「ABSモードになって、回生ブレーキの制動力が消えた分、トータルの制動力が下がるのではないか?」だから
ABS作動前の制動力 > ABS作動後の制動力
 になるのではないか?

・・・という話は、今ちょこちょこと、マスメディアでもネットの世界でも語られ始めている様子です。

私も基本的にこの考え方に沿う者ですが、ヲタク的な留意点を2.・3挙げておきます。
●低速域の回生ブレーキ制動力は僅か。
モーター回転が低い状態で回生ブレーキを使うと、「コギング」というカコカコした感触がモーターから発生します。これは意外と気持ち悪い感触なので、低速域まで強い回生ブレーキを使うことは考え難いと思います。つまり、上のチャートでは回生ブレーキと油圧ブレーキの比を5:5にしていますが、実際は回生ブレーキの方がもっと小さくて、3;7とか2:8とかなんじゃないかと思います。ABSモードになって回生ブレーキ相当分が消えても、そもそもそんなに大きな制動力を負担していた訳では無いなら問題無いんじゃないの?と言いたい訳です。
●バッテリーの種類と大きさが回生ブレーキの強度を決める。
サイクル寿命に影響を与えない電流の容量比強度は、バッテリーの種類で概ね決まっています。鉛ー酸なら0.3~0.5C、リチウムイオンなら5~6C(物によっては10CでもOKだったりするみたいですが)、ZVW30PRIUSのニッケル水素バッテリーは1Cを大きく越えることは無いと思います。回生ブレーキを強く使うと、1Cなんて簡単に越えてしまいますから、そんな側面からも、低速まで回生ブレーキをガンガン使うセッティングにはなっていない気がします。
参考「Cレート」 
http://shibuya.cool.ne.jp/k_garage/battery/c.html
●「ABSモード」から「通常モード」へ復帰するのは何時か?
不具合は「通常モード」から「ABSモード」に変わった時に発生することはあちこあちで書かれていますが、一旦「ABSモード」になったブレーキ制御が、どの時点・条件で「通常モード」に復帰するのか?この点は不思議にどのメディアでも書かれていません。不具合の核心に迫る重要なヒントになる内容だと思うのですが・・・。

本題に戻ります。
ネットで情報を探していて、「Car Watch」さんのサイトで2月9日に行われたトヨタ自動車の記者会見の画像を発見しました。
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20100210_348129.html
下の2つのスライドを見ると、トヨタが今回のリコールで「改善」しようとしている内容がよくわかります。
ABS作動前の制動力 > ABS作動後の制動力 

ABS作動前の制動力 = ABS作動後の制動力 
に変更するとしているのは、まさにコレ↓で、

(Car Watch のサイトから引用)
ABS作動後には低かった制動力が、改修後にはABS作動前と同じ水準にまで高められています。
そして、その改修がどんな結果を生むかは、下のスライドを見れば想像が着きます。

(Car Watch のサイトから引用)
上の新型プリウスの車速が、ABS作動後の凍結路でも直線的な減速を示しているのに対して、通常ABSでは車速のラインが折れ曲がっています。
私が赤線を入れた部分(車速が落ちていないので線の傾斜が緩い)は、タイヤがロックして2発目3発目のABSが働こうとしている瞬間ですから、この赤線の部分ではステアリングが効かないことになります。
今回リコールではプリウス特有だったABSの制御プログラムを、通常のABSと同じに改修するという話でしたから、改修を受けると上グラフだった車速の変化が、下グラフのように変わることになります。
これを「改善」と評価して良いのでしょうか?
タイヤがロックすることも無く(つまり常時ハンドルの操作性を維持しながら)、スムースに減速している「上グラフ」の現状から、時々タイヤのロックが発生してステアリングが効かなくなる「下グラフ」の制御へ変更することは、少なくとも「ABSはステアリング操作性維持の為の装置」という観点からは「改悪」だと感じます。
今回の改修で、騒動になった症状は出なくなるのだと思いますが、引きかえにABS作動時のステアリング操作性が低下するとしたら、
「リスクを別の条件下に移しかえただけ」
であるように思えます。

更に言えば、グラフには止まるまでの距離は示されていませんが、他日の記者会見では、ブレーキペダルの踏力が同じならば現状の方が停止までの距離は伸びると説明があったものの、
「踏み増しすれば当初の目標地点で止まる」
とも説明が有りました。
「踏み増しすれば止まる」のならば、そもそも何の問題も無いようにも思います。「緩いブレーキング時にABSが作動するとブレーキが抜ける、更に踏み増しても止まらない」のならばリコールですが、「制動力が足らないと感じたら床が抜けるまででもブレーキペダルを踏み増す」のはドライバーの責任であると私は感じます。
公道を運転する免許を持ったドライバーは、制動力が足らない時は適宜踏み増しすることができるはず、と期待される立場にあると思いますし、運転免許を持っている以上できて当然の行為です。
制動力が足らない!と感じても、ブレーキを踏み増しできない人が運転免許を持っていることが不適切なのだと思います。
当然自動車メーカーは、適切な技能を持った人が運転することを前提に車を作れば良いわけで、制動力が足らないと感じた場合に踏み増しさえできない人を射程に入れてまで車を作る責任は無いと思います。

そう考えると、今回の騒動で判明したのは、プリウスのABSプログラムに修正が必要だ、ということではなくて、
モーター駆動車を運転する人は、それ相応の教育を受けるように免許制度を修正する必要があるのではないか?ということだと感じます。

今回のリコールの核心部分には、世間の騒ぎが大きくなり過ぎた為
「何か“もっともらしいこと”をやって、企業として反省している姿勢を示そう」
それによって事態の収拾を図ろう、という目的で行われた臭いを感じます。自動車工学の臭いではなくて、政治・社会科学の臭いがします。

今、私の元にはZVW30プリウスに関する相談が何件か来ています。「友達の友達がプリウスに乗っているんだけどどうなの?」という類の質問です。
私が手造り電気自動車でロシアに行ったり、手造りプラグインハイブリッドで日本列島を縦断したりしたことが周囲には知られているので、そんな相談が集まるわけです。

さて、私はその相談にどう回答するべきでしょうか?
「ディーラーに持って行って改修を受けた方が良いですよ」と言うべきなのか?
「今回問題になった症状は消えると思いますが、他の状況下ではこれまでに無かった症状が出る可能性もあるからよく考えなさい」と言うべきなのでしょうか?
トヨタの「お客様相談センター」に聞いたら教えてくれるかなあ~。

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11 コメント

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偽りの... (hisa)
2010-02-14 10:37:26
偽りのクリーピング
偽りの走行音
偽りのブレーキフィーリング

電気動力では無用なものを無理やり現行の内燃機関搭載の車に合わせているような気がします。
その歪みが今回の件につながっているのではと思います。
とりあえず (ゆーつー)
2010-02-14 16:02:21
ARK-2の量産体制を整えて『兄さん兄さん、良い出物があるよ!』と勧めて見るのも満更・・・ですかね?
車に限らず、現在の製造品は痒い所に手が届き過ぎな気がします。
求めに応じれば良いと言う事ではないと思います。
RE:hisa様 (アイアン・バール鈴木)
2010-02-14 20:57:56
電気自動車と内燃機関自動車とは、別の免許にするべきだと感じますね。
少なくとも「条件」には入れて、乗りたければ限定解除を要求するとね。
RE:ゆーつー様 (アイアン・バール鈴木)
2010-02-14 21:00:00
>痒い所に手が届き過ぎな気がします。

ですね。
自動車の運転免許はもっと難しくするべきですね。
免許の取れない人の為に公共交通機関を充実させると。その方がええと思います。
凍結路の下り坂の問題 (新道)
2011-01-09 20:40:55
1年前の問題ですが、先日新型プリウス(プログラム改修済み)で富士山の1km程度の直線凍結路の下りを超低速(15km/h程度)でブレーキを踏みながら走りましたが、氷に乗るとしばらくブレーキが抜けた感じになりました。怖いので常にブレーキを踏んだ状態なのですが、踏み増ししろといってもこれだけ長い下り坂で踏み増ししていくとどうなるのでしょうか。スピードが落ちれば自然にブレーキを戻すので問題はないということでしょうか。
ともかく、下り坂凍結路でこの問題に対処するのはどういう運転になるのかを知りたいところです。
RE:新道s様 (アイアン・バール鈴木)
2011-01-10 14:19:55
>ともかく、下り坂凍結路でこの問題に対処するのは
>どういう運転になるのかを知りたいところです。

「チェーンを巻け」ってことなんじゃないっすかね?


>富士山の1km程度の直線凍結路の下り

ABSが有ろうが無かろうが、タイヤと路面の摩擦以上の制動力は出ませんから、
上記の様なすべり易い状況に車で行く場合には、
ドライバーはチェーンを巻くことを道交法も想定していますし、
自動車メーカーもそれを前提に車を造っていると思いますけどね。
BA (通りすがり)
2011-01-22 17:51:26
ちょっと興味がわいたので見てみたのですが。
「踏み増し」の件なんですが、トヨタにはBA(ブレーキアシスト)という、緊急時に運転者がパニック状態の時、強く踏み込むことができないことを想定して、踏み込み速度と踏み込み量からスキッドECUが緊急停止の意思を汲み取り制動力を高めるシステムがあります。
プリウスの場合にも、アキュームレータにより増圧する構造になっています。

僕自身、通常油圧ブレーキ車が乗れる人には、ハイブリッドやEVのブレーキも通常通り大丈夫だとは思うんです。メーカーも通常油圧ブレーキのフィーリングに近づけるように努力していますし。

去年初頭の記事にコメントして、申し訳ないのですが、意見を聞けたら嬉しく思います。
RE:通りすがり (アイアン・バール鈴木)
2011-01-27 01:52:47
通りすがりさん<
人に物を聞くなら次回からメアドくらい入れて来るように。

ブレーキアシストの件、
タイヤと路面が充分グリップをしていることを前提にしたシステムなので、
本文の論点とは直接的には関係しないと思います。
以上。
re (通りすがり)
2011-01-27 22:47:41
BAは、μとは関係ないと思いますがw
踏力がいくら強かろうが、実際路面状況を考えて油圧を制御してるのはブレーキECUであって、マスターシリンダー油圧が少しでも早く、高くある方がいい。
=つまり、BAが重要なんじゃないかと思いますが???


それに・・・論点とは関係しないといいますが。
「制動力が足らないと感じたら床が抜けるまででもブレーキペダルを踏み増す」のはドライバーの責任。

といっていますよね。
その責任の重さを軽減するのがBAなんじゃないんですか?

誰だってパニック状態になったら、そんな冷静さはなくなりますよ。

もし、誰かがこのような状況で事故に遭ったとして。
踏み増ししないあなたが悪い、そもそもHVに乗る資格がない。と言えますか?
高齢者だろうが若者だろうが、人間である限り、車が止まらないという極限の心理状態では、そんなこと考えている暇はない。
というのが、世間一般の考え。


あなたがどれだけ運転に自信があるのかは知りませんが、あなたの価値観は世間とズレてると思います。


この記事では、「ドライバーの責任」が、原因となっていますが、協調制御の煮詰め不足が原因であって、ドライバーを問題定義するのは的外れだと思います。


あ、あと
次回から、ゲストに対する態度を改めるように。
そして、メアドを入れる気は無いです。
以上。
Unknown (通りすがり)
2011-01-27 22:53:01
言い忘れ。
もうここ来る気ないから、返事はしなくていいですよ。
消してもらっても構いません。

では、さいなら。

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