ZEVEX~行動する自動車環境問題NGO~

手造りPHEVで、そしてプリウスPHVで二度の日本列島縦断を達成し、世界初EV南極点到達を目指し活動する冒険チームです。

リコール改修後のプリウス、ABSに副作用の可能性。

2010年02月18日 22時39分35秒 | NEWS

直接間接に、ZVW30プリウス乗りから今回のブレーキリコールの問題に対して意見を聞かれて、情報が乏しくて適正な判断ができなくて困っているのは前述の通りなんだけれども、
トヨタさんの「お客様相談メール」に4日前に
投げた質問に
未だに何の回答も無い。
調査中です・・・って返事さえ無い。
「忙しいんだから、これ以上話をややこしくするな!!」
ってことなのかなあ~。

トヨタさんからは、自動受信の返事だけは戻って来たので
////////////////////////////////////////////////////////////
----- Original Message -----

From: "トヨタ自動車" <toiawase_za@mail.toyota.co.jp>
Sent: Sunday, February 14, 2010 8:30 PM
Subject: Re:【問合せ】リコール改修後の車の挙動変化に関して

> メールを受付けいたしました。ありがとうございました。
/////////////////////////////////////////////////////////////

私が、今回のプリウスの問題に関しては
「そもそもリコールするほどの問題ではないんじゃないの?」
という立場であることも
前述の通りであっても、
「頭を下げて世間のバッシングが過ぎるのを待つ方針に決めたんだ」
ということで、今更「あれは技量の無いドライバーに免許を与える制度が悪い」という声が世間から上がっても、文字通り「今更」で、返って不都合なん
でしょうか?

それはそれとして、私は「モーター駆動自動車ヲタク」なので、
真実が知りたい訳です。

リコールの改修を受けたプリウスは、連続でABSが作動する場合、改修前よりタイヤがロックする時間が増えている。つまりステアリングでマシンを思った方向に操縦する性能が落ちている・・・という副作用の可能性へは配慮しなくて良いのでしょうか?
「要らぬ心配」
ならば、それで良いのですが、トヨタのHPにあるリコールの改修の内容を読むと

(出展:トヨタのHP)

ABS作動時の油圧を改修前に比べて上げたわけですから、高くなった油圧を抜くにはより時間が必要(つまりロックしたタイヤがクリップを回復するまでの時間も長くなる)なのが理論であるような気もします。

ちなみに、私がトヨタの「お客様相談メール」に送った内容は以下の通り。
///////////////////////////////////////////////////////////////////
突然のメール失礼致します。
自動車の環境問題に取り組む市民団体を主宰しておる者です。リコールへの対応でお忙しいことと思います。御見舞い申し上げます。
私は10年以上前から電気自動車を手造りしている為、周囲の人間からハイブリッドにも詳しいと思われております。現在、プリウスユーザーの数名から「プリウスの改修は早く受けた方が良いのか」と質問を受けております。

ディーラーさんの指示に従うように言うのですが、私の意見を聞きたいと言われます。お忙しい所恐縮なのですが、以下の点を教えて頂ければ幸いです。

A「回生油圧協調モード」から「ABSモード」に切り替わった後、再び「協調モード」に復帰する条件を教えて下さい。
B今回のリコール改修では「ABSモード」に切り替わった後の油圧が、改修前より高くなる様子ですが、連続してABSが作動する場合、2回目以降のABS作動時に車輪のスリップ時間がコンマ何秒かでも増加しませんか?

C「新型車解説書」を拝見させて頂くことはできませんでしょうか?

今回のリコール改修で、車に別の挙動が発生する可能性を感じておりますので、友人に意見を言えずにおります。宜しくお願い致します。
////////////////////////////////////////////////////////////////////

別に何か「難癖」を付けられることを警戒されるようなメールでも無いと思うんだけどなあ~。
返事欲しいなあ~。


 

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リコール改修後のプリウスの挙動変化

2010年02月15日 03時38分55秒 | NEWS

ここ2日間に渡って、
新型プリウスのブレーキ問題の真相は?
新型プリウスのブレーキ問題の真相は?2

として指摘して来た
リコール改修後のZVW30プリウスに発生するのではないか?と心配される挙動変化
(特にABSが連続して働く状況下でのステアリングの操舵性能低下)
について、トヨタのサイトに有った「お問い合わせ」から質問を送ってみました。

ここ数日、ZVW30PRIUSのブレーキリコール問題に関して、情報を求めて色々なサイトを見て廻りました。結果「今回リコールの対象になったブレーキ抜けの原因解析や問題発覚前後のメーカーの姿勢」に関して議論しているサイトは沢山見たのですが、
改修を受けたら他のブレーキフィーリングが悪くなる
可能性を心配する発言にはほとんど出逢いませんでした。技術士の方で、漠然と「他に影響しないのか?」と書かれていたサイトは有りましたが、ABSの効き方の変化に的を絞って影響を心配する発言とは今現在まで出会えていません。

雪道を頻繁に走られる方なら、
慣れ親しんだABSのフィーリングを変えられたら嫌なんじゃないかと思うんだけどなあ~。
何で誰も気にならないんだろう?

さて、トヨタさんからはどんな回答が帰って来るのか?それとも帰って来ないのか?楽しみに待つことにします。

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新型プリウスのブレーキ問題の真相は?2

2010年02月13日 03時16分58秒 | NEWS

昨日書いた「新型プリウス・ブレーキ問題の真相は?」という日記の中で、トヨタがHPで公開している「改善箇所説明図」を引用し、今回のリコールで改善するとしているポイントとして、
現状 ABS作動前の制動力 > ABS作動後の制動力 としているプログラムを
    
ABS作動前の制動力 = ABS作動後の制動力 に変更する
としている点を御紹介しました。今日は、その内容について、もう少し考えてみたいと思います。

徐々にあきらになって来た情報を寄せ集め、EVヲタクの経験を加えて判断すると、現行プリウスのブレーキ制御は下のチャートのような感じなのかと思います。手書きなのは御勘弁下さい。

これを前提に、 ABS作動前の制動力 > ABS作動後の制動力
になる理由を考えてみます。通常走行時エンジンが停止していれば、プリウスは回生ブレーキと油圧ブレーキとの「協調制御モード」で走行しています。途中何らかの理由でタイヤロックが発生すると、ブレーキ制御は「協調モード」から「ABSモード」に切り替わります。「ABSモード」は回生ブレーキを使わない油圧ブレーキだけのモードですから、

「ABSモードになって、回生ブレーキの制動力が消えた分、トータルの制動力が下がるのではないか?」だから
ABS作動前の制動力 > ABS作動後の制動力
 になるのではないか?

・・・という話は、今ちょこちょこと、マスメディアでもネットの世界でも語られ始めている様子です。

私も基本的にこの考え方に沿う者ですが、ヲタク的な留意点を2.・3挙げておきます。
●低速域の回生ブレーキ制動力は僅か。
モーター回転が低い状態で回生ブレーキを使うと、「コギング」というカコカコした感触がモーターから発生します。これは意外と気持ち悪い感触なので、低速域まで強い回生ブレーキを使うことは考え難いと思います。つまり、上のチャートでは回生ブレーキと油圧ブレーキの比を5:5にしていますが、実際は回生ブレーキの方がもっと小さくて、3;7とか2:8とかなんじゃないかと思います。ABSモードになって回生ブレーキ相当分が消えても、そもそもそんなに大きな制動力を負担していた訳では無いなら問題無いんじゃないの?と言いたい訳です。
●バッテリーの種類と大きさが回生ブレーキの強度を決める。
サイクル寿命に影響を与えない電流の容量比強度は、バッテリーの種類で概ね決まっています。鉛ー酸なら0.3~0.5C、リチウムイオンなら5~6C(物によっては10CでもOKだったりするみたいですが)、ZVW30PRIUSのニッケル水素バッテリーは1Cを大きく越えることは無いと思います。回生ブレーキを強く使うと、1Cなんて簡単に越えてしまいますから、そんな側面からも、低速まで回生ブレーキをガンガン使うセッティングにはなっていない気がします。
参考「Cレート」 
http://shibuya.cool.ne.jp/k_garage/battery/c.html
●「ABSモード」から「通常モード」へ復帰するのは何時か?
不具合は「通常モード」から「ABSモード」に変わった時に発生することはあちこあちで書かれていますが、一旦「ABSモード」になったブレーキ制御が、どの時点・条件で「通常モード」に復帰するのか?この点は不思議にどのメディアでも書かれていません。不具合の核心に迫る重要なヒントになる内容だと思うのですが・・・。

本題に戻ります。
ネットで情報を探していて、「Car Watch」さんのサイトで2月9日に行われたトヨタ自動車の記者会見の画像を発見しました。
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20100210_348129.html
下の2つのスライドを見ると、トヨタが今回のリコールで「改善」しようとしている内容がよくわかります。
ABS作動前の制動力 > ABS作動後の制動力 

ABS作動前の制動力 = ABS作動後の制動力 
に変更するとしているのは、まさにコレ↓で、

(Car Watch のサイトから引用)
ABS作動後には低かった制動力が、改修後にはABS作動前と同じ水準にまで高められています。
そして、その改修がどんな結果を生むかは、下のスライドを見れば想像が着きます。

(Car Watch のサイトから引用)
上の新型プリウスの車速が、ABS作動後の凍結路でも直線的な減速を示しているのに対して、通常ABSでは車速のラインが折れ曲がっています。
私が赤線を入れた部分(車速が落ちていないので線の傾斜が緩い)は、タイヤがロックして2発目3発目のABSが働こうとしている瞬間ですから、この赤線の部分ではステアリングが効かないことになります。
今回リコールではプリウス特有だったABSの制御プログラムを、通常のABSと同じに改修するという話でしたから、改修を受けると上グラフだった車速の変化が、下グラフのように変わることになります。
これを「改善」と評価して良いのでしょうか?
タイヤがロックすることも無く(つまり常時ハンドルの操作性を維持しながら)、スムースに減速している「上グラフ」の現状から、時々タイヤのロックが発生してステアリングが効かなくなる「下グラフ」の制御へ変更することは、少なくとも「ABSはステアリング操作性維持の為の装置」という観点からは「改悪」だと感じます。
今回の改修で、騒動になった症状は出なくなるのだと思いますが、引きかえにABS作動時のステアリング操作性が低下するとしたら、
「リスクを別の条件下に移しかえただけ」
であるように思えます。

更に言えば、グラフには止まるまでの距離は示されていませんが、他日の記者会見では、ブレーキペダルの踏力が同じならば現状の方が停止までの距離は伸びると説明があったものの、
「踏み増しすれば当初の目標地点で止まる」
とも説明が有りました。
「踏み増しすれば止まる」のならば、そもそも何の問題も無いようにも思います。「緩いブレーキング時にABSが作動するとブレーキが抜ける、更に踏み増しても止まらない」のならばリコールですが、「制動力が足らないと感じたら床が抜けるまででもブレーキペダルを踏み増す」のはドライバーの責任であると私は感じます。
公道を運転する免許を持ったドライバーは、制動力が足らない時は適宜踏み増しすることができるはず、と期待される立場にあると思いますし、運転免許を持っている以上できて当然の行為です。
制動力が足らない!と感じても、ブレーキを踏み増しできない人が運転免許を持っていることが不適切なのだと思います。
当然自動車メーカーは、適切な技能を持った人が運転することを前提に車を作れば良いわけで、制動力が足らないと感じた場合に踏み増しさえできない人を射程に入れてまで車を作る責任は無いと思います。

そう考えると、今回の騒動で判明したのは、プリウスのABSプログラムに修正が必要だ、ということではなくて、
モーター駆動車を運転する人は、それ相応の教育を受けるように免許制度を修正する必要があるのではないか?ということだと感じます。

今回のリコールの核心部分には、世間の騒ぎが大きくなり過ぎた為
「何か“もっともらしいこと”をやって、企業として反省している姿勢を示そう」
それによって事態の収拾を図ろう、という目的で行われた臭いを感じます。自動車工学の臭いではなくて、政治・社会科学の臭いがします。

今、私の元にはZVW30プリウスに関する相談が何件か来ています。「友達の友達がプリウスに乗っているんだけどどうなの?」という類の質問です。
私が手造り電気自動車でロシアに行ったり、手造りプラグインハイブリッドで日本列島を縦断したりしたことが周囲には知られているので、そんな相談が集まるわけです。

さて、私はその相談にどう回答するべきでしょうか?
「ディーラーに持って行って改修を受けた方が良いですよ」と言うべきなのか?
「今回問題になった症状は消えると思いますが、他の状況下ではこれまでに無かった症状が出る可能性もあるからよく考えなさい」と言うべきなのでしょうか?
トヨタの「お客様相談センター」に聞いたら教えてくれるかなあ~。

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新型プリウス・ブレーキ問題の真相は?

2010年02月12日 04時16分44秒 | NEWS

巷で話題のZVW30型プリウスのブレーキトラブル。リコールになったことで、メーカーとしてのトヨタの対応は決まったのだと思いますが、
正直何かスッキリしません。
本当にあれはトラブルだったのでしょうか?世間からはバッシングされましたが、横山常務の言うように「フィーリングの問題」だった可能性は無いのでしょうか?モーター駆動ヲタクの観点から私なりの疑問点を書いてみようと思います。
昔自動車雑誌で物書きをやっていた時代には、モーター駆動が絡んだ車両の「新型車解説書」はメーカーからもらっていたのですが、ZVW30PRIUSの新型車解説書は見たことがないので、限られた情報の中での意見だと御了解頂きたいと思います。


■主な疑問点
①ABSの機能に関する説明
今回のブレーキ抜けは滑り易い路面特有の現象だったらしく、多くのマスメディアでABSの関与が指摘されていましたが、その前提として「ABSとは制動距離を縮める為の装置」だと説明していたメディアが散見されました。けれども、ABSに対するこの理解は違うと思います。
ABSはタイヤがロックした時に、そのロック(回転0)を検知して、ロックした車輪のブレーキを緩め、当該タイヤがグリップを回復した
後再びブレーキを効かせる装置です。端的に言えば「ガツン!!とブレーキを踏んでもハンドルの方向性を失わせないようにする為の装置」で、「制動距離は伸びる場合もあります」と取説にも書いてあったと思います。

②プリウスで使われるブレーキは2種類ではなくて3種類

(出展:アルファードHV ATH10W系 新型車解説書)
ハイブリッド車と言えば「回生ブレーキ」という条件反射なのか?「プリウスには油圧ブレーキと回生ブレーキの2種類のブレーキが使われています」と多くのマスメディアが伝えていました。・・・が、プリウスでも通常の内燃機関車と同じようにエンジンブレーキも効きますから、プリウスのブレーキは3種類ということになります。

③プリウスのブレーキの「足応え」は創られた物(ダミー)であることを伝えない。
のこっちゃ?と思われる方も多いかと思いますが、EV走行モードを持つプリウスは、エンジンの吸気負圧をブレーキ倍力に使うことができません(エンジンが止まると負圧は発生しないので)。我々ZEVEXがコンバートしたEVでは電気ポンプで負圧を作っていますが、

(コンバートEVで使用中の電動負圧ポンプ。12V系で駆動するが結構電気を喰う)
トヨタのハイブリッド(THS)では、電動で油圧ポンプを動かし、ストロークシュミレーターという部品で人工的な「足応え」を創り出してブレーキペダルに返しています。それは、ドライバーが積極的な操作を行わなくても、回生ブレーキと油圧ブレーキを良いさじ加減で使う為らしいです。
つまり、ドライバーがブレーキング時に感じているのは演出されたペダルフィーリングであるわけです。実際に体感したことが無いので推測の域を出ませんが、演出が介在する分、通常ABS作動時に感じられるガガガッ
!!というペダルフィーリングは感じ難いかも知れません。換言すれば、THSのドライバーはABSが作動していることに気が付かない可能性が、通常の内燃機関車よりも高いのだと思います。
特に、急制動時にしかABSは働かないというイメージをドライバーが持っていると、軽いブレーキングで思いがけずABSが働いた場合、ペダル感覚からはABSの作動を認識し難いでしょうから「ブレーキが抜けた!」と思ってしまうかもしれません。

(出展:アルファードHV ATH10W系 新型車解説書 ストロークシミュレーター) 
③改修内容に関して追及しないマスメディア
マスメディアは、トヨタが発表したリコール内容は伝えますが、今のところ改修後車の挙動がどう変わるのか?に関しては伝えません。
私はこの部分が気になっています。
トヨタのHPで公開されている今回リコール分の「改善箇所説明図」を見ると、

(出展:トヨタのHPより)
現状の問題点として
ABS作動前の制動力 > ABS作動後の制動力
となっている点を挙げて、この点を修正するとしています。
疑問が有るのはここです。
上に図を引用しているアルファードHV等も含めて、NHW20型PRIUSとZVW30型PRIUSとでは、ブレーキシステムの細部が異なるらしいのです(主にコストダウンの方向で)。なので、ABSのプログラムもZVW30用に新設計された物だと考えた方が自然そうです。

(ZVW30プリウス ハイドロブースター 株式会社アドヴィックス製)
なるほど上に図を示したアルファードHVのマスターシリンダー&ストロークシミュレーター一式とはかなり趣が異なります。油圧を発生させるポンプ部分も一体化された様子です。
システムが異なり、プログラムも新設計ならば、
ABS作動前の制動力 > ABS作動後の制動力
としたプログラムも狙ってそう設計したようにも思えます。新設計で狙って設計したのならば、何でこんなチューニングにしたのでしょう?

仮説を立ててみました。

ABSが作動する場所は、通常その周囲にも滑り易い路面が多いことが予想されますから、ABSは1つの箇所で1回だけ働く場合よりも、作動する場所では2度3度と続けて働く場合の方が多いのではないでしょうか?その場合、2度目3度目のABS作動でタイヤグリップをより早く回復させる為には、 ABS作動前の制動力 > ABS作動後の制動力 というプログラムにしたとしても不思議ではありません。どうせ再び油圧を抜かなければならないのならば、元の油圧より低い圧力までしか戻さない方が楽です。マンションの10階に住む住人が出かけようと1階まで降りて来た時にトイレに行きたくなったとして、再度10階自宅まで戻るよりも、3階に住む知人宅でトイレを借りた方が1階へ戻って来るまでの時間が短くて済む理屈と同じです。
上記①で指摘したように、ABSの目的がステアリングの操作性維持にあることを考えればABS作動前の制動力 > ABS作動後の制動力という設定は合目的的です。

もし、上記仮説が当たっている場合、苦情が出た「滑る路面で一瞬ブレーキが抜ける」という症状は改修後は出なくなるのでしょうが、車両には別の挙動が出ると思います。

今回のリコール改修で、ABSの設定が
ABS作動前の制動力 > ABS作動後の制動力   から
ABS作動前の制動力 = ABS作動後の制動力 
になったわけですから、連続したABS作動時の2度目3度目でタイヤグリップが回復するまでの時間は伸びることになります。改修前より高圧になった油圧を抜かなければならないのですから、改修前より時間がかかるのは当然です。ということは、連続してABSが働く場合、2発目3発目のABSはロック気味で、ステアリングの効きはリコール改修前よりも悪くなることが予想されます。
今回リコールで対策を施して安心なようですが、リスクを別の条件下に移しかえただけではないのか?心配になります。この点は是非マスメディアさんに追求をお願いしたいところです。

こんなプログラム設計がなされた原因として、トヨタには「ブレーキの効きが悪ければ、ドライバーはペダルをガツンと踏んで対応してくれるだろう」という前提が有ったとしたら、通常、より多いと思われるABS連続作動時の2回目3回目のタイヤロック時に備えて、敢えて 
ABS作動前の制動力 > ABS作動後の制動力 と設計するかも知れません。もしそうなら、トヨタとしては設計で狙った通りのマシンを製造しただけのことと言えます。ABSのプログラム設計者が、一般ドライバーが「採るであろう運転操作のパターン」を読み間違って設計した可能性が有るということです。その場合でももちろん責任はメーカーに有りますが「工作不良」ではないことになります。

そう考えると、ユーザーから苦情が届けられ、一般ドライバーの運転パターンを遅まきながらも理解できた1月以降、こっそりプログラムを修正した理由は分かります。「こっそり」修正するのが不誠実な対応だったことは言うまでも有りませんが、「完全解決」する選択肢は無く、「リスクをどの条件下に負担させるか」の選択肢しか無い問題なのだとしたら、メーカーとしては「こっちのリスクを、こっちに付け替えました」とは言えへんかもなあ~、って気もします。それを言ってこそユーザーの信頼を得られるのだと思いますが・・・。

最後にもうひとつ、2月9日の会見で、
ZVW30型プリウスのABSは通常のABSに比べて、ABSの作動時間が0.06秒長い、
という説明があったのを報道で知りました(上の③で引用した「改善箇所説明図」では触れられていませんが)。説明では、これがユーザーが「ブレーキが抜けた」と感じる原因のひとつとされていた様子でしたが、クラクションを「プッ」と鳴らすのよりも短い0.06秒をF1レーサーでもない一般ドライバーが峻別できるとは思えません。多分私も峻別できないと思います。
ただ、何故0.06秒長くなるのか?理由は気になるところです。その説明は会見では無かった様子でしたが、ここで言う「通常」とはハイブリッド
ではない車種という意味でしょうから、ハイブリッドのABSには有って、内燃機関車のABSには無いシステムを探せば、推理のヒントになるかもしれません。ここでもZVW30型プリウスの「新型車解説書」が無いのが痛いところですが、再びアルファードHVのブレーキ廻りを参考にすると、

(出展:アルファードHV ATH10W系 新型車解説書)
通常のABSでは見かけない装置としては、赤で囲った「ストロークシミュレーター」「ポンプモーターとアキュームレーター」が有ります。また、青と緑で囲んだソレノイドバルブも、計10個とどちらかと言えば多い方に感じます。ちなみに、新型プリウスのブレーキシステムでは、緑で囲んだリニアソレノイドバルブの多くが、安価なPWM制御型の製品に変更されたと聞いています。
通常のABSに無いシステムがこれだけ有れば、ABSの反応時間が0.06秒程度遅れるのは当然だと思います。もっとも、ソレノイドを安物にしたことが遅れの原因ならば「それくらいケチるなトヨタ」と、ユーザーとしては言いたいところです。

■残る心配
私は、ZVW30型PRIUSは今回のリコールによる「改善」でより良い車になったのか?より安心して乗れる車になったのか?という点について疑問を持っています。
悪くなったとは思わないのですが、リコールで修正したABSのプログラム変更で、別の性能が元より低下したのではないか?という疑問を払拭できずにいます。
具体的には、
連続したABS作動時に於いて、2度目3度目のABS作動時にステアリングの効きが悪くなっているのではないか?
という心配です。
今回リコールの対象となっているZVW35プラグインプリウスは、日本のプラグインハイブリッドの魁チームである我々ZEVEXが、今最も注目しているマシンです。今後より一層情報を公開して頂き、
政治的なバイアスの無い、純粋に自然科学の視点から納得できる説明をして頂きたいとトヨタ自動車さんには願うものです。

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