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晴れ上がった空のように・・

日常の出来事や読んだ本の紹介

水曜の朝、午前三時

2006年10月20日 | 
蓮見圭一著「水曜の朝、午前三時
こちらは、4年前にベストセラーになった本です。
文庫化されて、またじわじわとロングセラーとなっています。

300ページほどの文庫。すぐに読めるわ!なんて気軽に読み始めたのですが、
意外にも重かったです・・。内容は単純な恋愛小説ではなかったです。。

物語は・・一人の女性直美(45歳)の死で始まるのですが、その遺言とも言うべき4巻のテープと手紙が娘の夫に託されます。
時は、1970年、大阪万博。彼女はコンパニオンとして、東京からやってきます。そこで知り合った一人の男性と恋に墜ちるのです。しかし・・彼の出自には秘密がありました。なんと、北朝鮮出身の在日韓国人・・。
工作員・・のうわさも飛び交います。何と、ミステリアスな展開でしょう

高度経済成長の終焉のような、国家の威信をかけての華やかな祭典だった、大阪万博。私はまだ12歳でした。両親に連れられて、たくさんのパビリオンを見学した思い出があります。
今では、実家に帰るとき、伊丹空港からモノレールで、「万博記念公園」駅にさしかかると、シンボルだった「太陽の塔」をいつもぼんやりと眺めながら通り過ぎるのですが、当時の喧騒と華やかさとは打って変わって、静かでひなびた姿です。

舞台は神戸、京都、そして大阪と、懐かしい地名や言葉がたくさん出てきて、郷愁を誘いました。

まだ昭和40年代のあのころはモラルや性道徳、そして差別と・・厳しいところがあったのでしょうね。子供だった私にもなんとなくわかります。

でも、純情で激しい恋慕に突き動かされる直美の心情がとても丁寧に描かれていて
胸を打ちます

結局のところ悲しい別離と、投げやりに見えるお見合い結婚。それでも幸せな人生だったのでしょう・・?愛した恋人を生涯胸に秘めて、・・でも再会はするのですよ。大人の恋ですね・・

クライマックスは直美が娘に残す、メッセージです。
「人生は宝探し・・人生は掘り下げていくほどに多様なものがみつかる。・・
重要なのは内心の訴えです。あなたはなにをしたいのか、何になりたいのか。どんな人生を送りたいのか・・耳を澄まして、じっと自分の声を聞くことです。・・~~」

若くしてなくなった彼女の言葉に、今の私にも心に響きました