王妃の館 浅田次郎著
(集英社文庫 2004年)
タイトルからは荘厳な歴史絵巻の物語と、想像してしまいますが、とんでもない!
ぶっちぎりのドタバタコメディーの浪花節?いえ、浅田節でした。
ストーリーは・・
パリのヴォージュ広場の片隅にある高級ホテル「シャトー・ドウ・ラ・レーヌ(王妃の館)」
その昔フランス国王ルイ14世が寵姫を住まわせていたという。この館はパリ随一を誇る超高級ホテルである。そこへ、日本人のツアー客8組が滞在することになった。4組のツアー料金は、140万、もう4組のツアーは19万8千円。
これには、倒産寸前の旅行会社の詐欺の様なトリックがかくされていた。
なんと、お部屋はスイートなのだが、4部屋。同時に8組の客を滞在させるのだからダブルブッキングのツアーなのです。果たして最後までツアーはうまく、無事に催行されるのでしょうか・・
もしもこんなツアーがあったら、即刻、詐欺罪で旅行会社やツアコンたちは警察につかまるでしょう。
昼と夜に分けて一つの部屋を二組の客に使わせるのですから、ちょっと考えられない設定ですが、そこにあつまった個性的なツアー客たちのキャラの面白さに、話がひきこまれます。読み進むうちに、この人とこの人は、こう、つながって・・と、予想があたると、もう、やめられないおもしろさです!
とちゅう、王妃の館をめぐる、フランス国王ルイ14世と美貌のディアナ妃とその王子の悲しい物語がちりばめられて、日本と中世フランスを時空を超えての大ロマン劇のようです。
浅田節・・超お得意?のオヤジギャグが随所にでてくるのですが、「コマンタレ・ブ~=(おなら)」「脱肛して脱稿??!」
ちょっと~お下品な表現に体質が合わない・・と言う方にはおすすめできませんが。
おなかがよじれるほど笑わせて、最後は泣かせての人情物語にしあがり、おまけに今回はフランスと日本の文化論にまでまたがり、ハッピーエンドなのですから、まさにグゥ~のねもでないほど、上出来の物語でした。
浅田次郎さん本人が一番楽しんでおなかを抱えながら書いたのかもしれませんね。
軽いのりの読みやすい小説ですから、ちょっとリフレッシュしたい時にはお勧めの一冊です。
最後のページに舞台女優の「渡辺えり子」さんの解説が掲載されていましたが、
こちらもよかったです。短い文章でしたが、彼女の父上のことや、パリへの憧れと思い、そしてフランスの文化を裏付ける、自立した「個」の精神など、説得力のある論理で述べられ、そして最近の日本の心無い社会を危惧する意見に、とても感心しました~
ちなみに、
フランスへの興味をそそられたのですが、ガイドブックをめくっても「王妃の館」
なるホテルはみあたりませんでした。