☆先発変更は4人&渋谷選手復帰&村上選手リーグ戦初出場
前節のリーグ戦では敗れたものの、週中に行われた天皇杯3回戦のセレッソ大阪戦では勝利を収め大塚新体制初白星を飾ったヴァンフォーレ。J1クラブに勝てたその勢いをリーグ戦での勝利に繋げたいところ。この一戦を臨むにあたり大塚監督は先発を4人変更することを決断。今津選手と三平選手に代わり孫選手とピーターウタカ選手を起用。そして山内選手に代わってケガから復帰し先日チームへの再登録が発表された渋谷選手がいきなり先発に復帰。そして天皇杯で良いプレーをみせていた大卒ルーキーの村上選手が右のウイングバックで先発に抜擢されました。なかでも注目なのがGK渋谷選手と村上選手。第10節熊本戦以来14試合ぶりの復帰となった渋谷選手は、コ・ボンジョ選手や山内選手ら若い選手には見られない落ち着きと豊富な経験をチームに還元してくれることを期待されていました。そして村上選手はこの試合がリーグデビュー戦となります。一般的に試合経験を積み重ねていくと次第にチーム戦術に縛られていき個性の発揮が難しくなっていくと言われているので、今回村上選手にはデビュー戦らしくハツラツとした失敗を恐れない思い切ったプレーをしてほしいですね。
☆耐える前半
ヴァンフォーレはチームで前から圧力をかける意識は高いものの効率的に相手をハメに行くプレスができずその網をかい潜られ、攻め込まれる場面がスタートから続きます。それは先頭にいるウタカ選手のプレッシャーが甘いためにそこが相手の脱出口となり、その後の中盤でのボール回しへと繋げられていました。それによってこちらは前に行くディフェンスから慌てて守備ブロックを形成するディフェンスへと体勢を切り替えなければいけない機会が多くあり、選手への精神的な負担がかかっていたと思います。しかしヴァンフォーレは長崎に攻め込まれながらもゴール前でスペースを消すディフェンスはできており、ある程度は侵入されてもシュートスポットでは全力で圧力をかけにいく手法で粘り強い守備を披露。J2得点ランキングトップ独走中のエジガル・ジュニオ選手やマルコス・ギリェルメ選手など強力なブラジル人の攻撃陣が揃う長崎に対して、そのディフェンススタイルがうまく噛み合っていたと思います。長い時間自陣ハーフコートでのプレーを強いられ、まさに耐える展開だったと思います。前半のほとんどの時間は健闘していた守備陣でしたが、前半アディショナルタイムに長崎のリズミカルなパスワークに翻弄されて失点。終了直前で0対1にされハーフタイムに入ります。
☆村上選手ラッキーなプロ初得点
守勢のまま前半が終了し0対1で折り返した後半のスタートで巻き返しを図るため大塚監督が動きます。3バックの中央にいた山本選手に代えて、ボランチの位置から積極的な攻め上がりができる木村選手を投入。それまでボランチにいた林田選手が3バックに下がり、木村選手が中盤の底のポジションに入ったことで中盤の動きが活性化。後半2分の得点も木村選手が左サイドを駆け上がり相手DFの幅を作ると、左サイドから中央&右サイドと横パスを繋いでいきボールを受け取った村上選手が左足でゴールに向かっていくようなクロスボールを供給。そのクロスボールに対して長崎の選手が頭で触り軌道が変わると、突然自分のもとにボールが向かってきたGKは反応するものの十分に弾き切れずにゴールへと吸い込まれていきます。少しオウンゴール臭のする得点でしたが村上選手はプロ初ゴールを記録。ヴァンフォーレがすぐさま同点に追いつくことに成功します。
☆完璧な連携の逆転弾
後半早々に1点を決めてチームに勢いがついてきたヴァンフォーレ。攻勢のまま迎えた後半13分にもスコアが動く場面が訪れます。自陣から素早く攻守を切り替えて中盤で中山選手と鳥海選手がボールを繫ぐと、右サイドの上がり目のポジショニングをとっていた村上選手にパスを渡します。村上選手は縦に仕掛けるふりをして体勢を切り替えて左足でクロスボールを供給。1点目と同じような軌道のクロスがファーサイドの奥に飛んていくと、そこにアダイウトン選手が飛び込みヘディングで折り返したようなかたちとなり、最後はゴール前で待っていたウタカ選手が冷静に押し込んで勝ち越し点を決めます。ウタカ選手はこのゴールで今シーズン8得点目。このシーンでは自陣からカウンターを発動させると、中山→鳥海→村上→アダイウトン→ウタカ選手と左から右へとダイナミックに展開できたことが良かったですね。そしてスピード感があったのも素晴らしい。相手も左から右へとスピーディーに回されているとDFラインが左右に揺さぶられて中央のディフェンスが固めにくくなります。そこを村上選手のサイドチェンジ気味のクロスボールによって完全に長崎の守備が不安定となり、ウタカ選手のゴールのお膳立てができました。相手守備の崩し方としては今シーズンこれまでのNo.1と言っても過言ではないくらい完璧な連携での逆転弾でしたね。
☆ラストワンプレー悪夢の被弾
後半13分に勝ち越したヴァンフォーレ。その後も交代枠を使いながら試合を優位に進めます。長崎は交代カードをすべて使い切ってからフアンマ・デルガド選手が負傷するアクシデントもあり終盤は10人でのプレーを強いられるものの、懸命に戦って1点のリードを保ちます。ヴァンフォーレは今津選手の起用で守備力の強化&前線を走り回れる三平選手を投入して逃げ切り体勢へ。そして迎えた後半アディショナルタイム。敵陣深くのコーナー付近でボールキープし時間を使い7分と表示されていたアディショナルタイムも9分に突入。長崎はパワープレーを仕掛けてラストワンプレーでゴール前に複数人がなだれ込んだ結果、ゴールを強引にこじ開けて同点とします。ヴァンフォーレとしたら目の前まで迫っていた勝利の勝ち点3が寸前で逃げていく痛恨の被弾に選手もサポーターも呆然。そのまま2対2の引き分けという結果で試合終了となりました。
☆引き分けた要因は?
この試合引き分けた要因としてチームに詰めの甘さが感じられましたね。大塚監督が指揮官に就任して数試合公式戦をこなしてきたので、彼がこれから推し進めていきたいサッカースタイルが選手たちにはある程度分かってきたと思います。前半は耐える展開が続いていましたが、1点を追いかける展開になってからは選手たちの尻に火が付いたように積極性が増し後半は特に長崎に対して優勢に進める機会が作れました。逆転に成功し勝利まであと一歩のところまで相手を追い詰めたのは良かったのですが、やはり新体制となって間もないということで戦術面ではない精神的な未熟さが露呈してしまったように思います。いくら頑張って組織的に試合を進めていても、前半&後半がスタートするタイミングや終わるタイミングというのはどうしても気が緩みがちになってしまいます。チームが成熟し成績が伴った強さをみせているクラブというのは精神面が充実しており、キックオフから終了のホイッスルが鳴らされるまで集中力が保っている印象があるので、1試合のアディショナルタイムで2度の失点をしている今のヴァンフォーレはそこまでの成熟レベルに達していないのが事実としてあると思います。それは経験を積み重ねていくことで解決していくと思うので、この失敗を糧にして悔しさのパワーで今後の精神面の引き締めを図ってほしいと思います。終了直前で追いつかれての引き分けはどうしても印象が悪いのですが、冷静に考えてみると首位争いをしている強豪クラブ相手に低調なチーム状態のヴァンフォーレが勝利目前の引き分けに持ち込んだ結果は評価して良いと個人的には思います。勝てなかったのは残念ですが、無敗記録が続く好調なクラブに現状のチームが善戦した自信は今後の試合に活かせるでしょうね。
…この引き分けにより今シーズンのヴァンフォーレの成績は、6勝8分け10敗の勝ち点26で順位は16位となっています。10試合勝ちなしの状態は更新中でJ3降格圏内の18位鹿児島との勝ち点差はわずか ‘3’ となっていますが、まだまだ慌てる時期ではありません。焦ってしまうと本来の実力が発揮しにくくなるので、今のうちに勝ち点を少しずつ積み上げていき、危険水域を抜け出してセーフティゾーンに入りたいですね。そしてこれからパリ五輪が開幕するためJ2リーグは約2週間の中断期間に入ります。すでに戦力の入れ替えなどが発表されていますが、中断期間明けに全力が出るような万全な準備をしてほしいと思います。
【ヴァンフォーレ甲府×V・ファーレン長崎|ハイライト】2024明治安田J2リーグ第24節|2024シーズン|Jリーグ