『らくだばオーナー』井之口らくだ。の笑いと感動日記

2009年2月25日念願の夢叶って『関西酒場らくだば』を開店。その日々、経験する笑いと感動を日記にしてご紹介。

680円の積み重ね

2005-10-27 | Weblog
当店には、外国人のお客様は、ほとんど来られないです。
いきなり観光客が、雑居ビルの6階にあがってくるなんて
かなりの勇気がいると思いますし。

しかし、昨日、アメリカ人の夫婦が二人でご来店されました。

「BAR、OK?」

「OK、OK」

会話なんて、ジェスチャーでなんとかなるもんです。
カップルをカウンター席にご案内しました。

バーの藤原くんと柴田さんの顔が少しこわばりました。
でも、なんとか、会話しているようです。

柴田さんがやってきた。メニューを説明したいので、私の電子手帳を貸して
くれないかと。
うんうん、いいぞ、その調子。

山崎12年とモスコミュール、そして料理2品を飲食されました。

柴田さんがやってきました。
「サンフランスシコから観光で来たらしいですよ」と。
「お、聞いたの?」
「はい、藤原くんが、アーユーフローム?って聞いてましたよ」

卯乃家もインターナショナルなお店になったものです。
やるじゃないか、ミスター藤原。

席につかれて、1時間ほどでチェックが入りました。
カードでのお支払いでした。

別のスタッフがカードの処理中に、外国人にめっぽう優しい
私はカウンターに入り、あるものをお持ちしました。

京の地酒「京山水」。

枡に入れた日本酒グラスに、ボトルからドクドクドク・・・と目の前で注ぎました。
思いっきり、ジャパニーズドリンクの独特なスタイルです。

「これ、サービスです。日本の”酒”です。どうぞ、飲んでってください」
と気持ちをこめた、わずかながらの言葉と笑顔で提供しました。

スピルバーグにそっくりさんの男性は笑顔で
「ありがと、ございましゅ」と返してくれました。

お、通じた、通じた。

そして、その日本酒をスピルバーグと奥様が美味しそうに飲んでくれました。

藤原くんは、「京山水の京は京都シティの京、山はマウンテン、水はウォーター」と
ラベルに描かれた、その文字を丁寧に説明しておりました。

どうやら、明日から、スピルバーグさんは、京都にいくみたいで
ナイスナイス!と喜んでおられたみたいです。

そして、奇跡は起こりました。
(奇跡ってほどじゃないですけど)

隣りで飲んでいるカクテルを指差し、あれ、なんですか?と、興味を
もたれました。

「梅実小路上ル下ルっていう、梅の実まるごと入った、梅酒カクテルです」と
藤原くんが説明しました。

「あ、じゃあ、それ、一杯ください」。

なんと、お会計が済んだにもかかわらず、さらに、おかわりのご注文を
してくださったのです。

680円の売上なり~。

と、別にそんなやらしい話はどうでもよくて、チェックが入ってから
そこから1時間も、さらに気をよくして、飲み続けてくれたことに、
感動いたしました。

まぁ、きっと二度と会うことはない(また、来ていただければ嬉しいですが)
遠く遠く離れたアメリカからの観光客さまでしたが、
トーキョーで、いい店あったねって思っていただけるだけでとても幸せです。

余談ですが、私、初めて、パリにったとき、ファーストフードのお姉ちゃんに
英語で話しかけたら、「は?」みたいな顔をされました。
フランス人は仏語も英語も話せるのに、英語で話しかけられると、「は?」と
顔をするイケズな国民です(すべてではないと思いますが)。

お互い、国籍も違うし、言葉も通じない者同士なんだから、もっと、フレンドリーに
接しようよ!とそのとき、思いました。
ましてや、あんたの国なんだから、こっちは不安でしょうがないんだよ、
もっと優しくしてよ、と思いました。
ま、郷に入れば、郷に従えって意味では、仏語を勉強していかなかった私も
悪いですが、あの対応は今でも、トラウマ・・・タイガーホースです。

だから、私はそのときから、外国人には優しくしようと決意しました。

前の店のとりどり木屋町店は、京都木屋町という観光客がごった返す町です。
だから、お店には、しょっちゅう外国人のお客様が来られます。
ん~、悩みました。メニューが説明できない・・・。
トーイックも豆富ルも、なにも受けたことがない。
簿記検定2級、ボケ検定1級はあるけど、英検はない。

だから、常連様でECCの先生がいたので、英語メニューを二人で
作りました。おかげで、外国人さま、カモンカモンです。

話が大きくそれましたが、そんなこんなで、海外旅行好きの私は
なるべく、当店に来られた観光客には、フレンドリーに接しようと心がけて
おります。

ま、結果的に、1杯のおかわりをいただけて、営業的にも
満足のいく一日でした。

濱谷副店長にこの話をしました。

「1年間の売上はこの、680円の積み重ねなんだよ」と。