薫 風 ~KUNPOO~

初夏に薫る爽やかな風に思いをよせ、YukirinとKaorinが日々の出来事などを綴るページです。

すべてのプロレスはショーである

2005-05-25 | 本  棚
■ まあ、なんとなく、きっとそうなんだろうなぁとは思っていたものの…正面きってハッキリ言われると、ねぇ。ミスター高橋『流血の魔術 最強の演技』『プロレス 影の仕掛人』講談社α文庫。

■ では、あの新宿伊勢丹前でアントニオ猪木・賠償美津子夫妻がタイガー・ジェット・シンに襲撃された事件は、いったいなんだったんだ!「俺はお前の噛ませ犬じゃない」という名セリフに始まる長州と藤波の抗争はなんだったんだ!はい、そうです。みんなたくみに仕組まれた演出だったのです。タイガーマスクの空中殺法に一喜一憂していた私の青春時代をいったいどうしてくれるの?と思わず叫びたくなってしまいます。

■ ミスター高橋は、アントニオ猪木や坂口征二、長州力らの試合をもっとも数多く裁いてきた新日本プロレスのレフェリー。いわば暴露本ですな。プロレス界にはマッチメーカーと呼ばれる人がいて、すべての抗争劇、因縁、試合の結末、他団体の対抗戦の行方など、プロレスの基本的な構図を仕切っている、という。

■ 面白かったのは、大木金太郎などは自分でいくつもストーリを作って説明してくれるけれども、本番になるとすっかりシナリオを忘れてしまい、レフェリーが耳元でささやいて教えてあげなければならなかったとか、不敗を誇るアンドレ・ザ・ジャイアントに猪木との試合で負けることを承知させるのに4週間かかった、とかいう関係者でなければ知るはずのないエピソードの数々。

■ またプロレスには流血がつきものだけれども、レスラーの額から出るジュース(流血のこと)は、実はカミソリの刃でサッと切り裂いて出すもので、何を隠そう選手のボディチェックをするレフェリーがこっそりカミソリを持ってリングに上がっていたとか。自分で自分の額を切るレスラーもいたけれど、自分で切るのが怖い(!?)、あるいはうまく切れないレスラーには彼が切ってあげていたのだという。

■ 以前、TBS系だったかで、『ガチンコ』という娯楽番組(ドキュメンタリーではない)があって、“いったいどうなってしまうのか!!”という絶叫ナレーションにつられて毎週見ていたけど、あるとき写真週刊誌に台本があることをすっぱ抜かれてしまったことがあったっけ。それ以来、ちゃんとシナリオがあると思ってみていると、セリフの一つ一つが本当にそのように見えてしまうから不思議だ。

■ たしかにどんな格闘技が一番強いかとか、真剣勝負をしたらどちらのレスラーが強いのかなんて、本当はあまり意味がないのかもしれないし、きっと見ていても楽しいものではないのかも。最近は衛星放送でもいろいろな団体のプロレスが放映されているけれど、ショーと割り切って見ているのも、それはそれで悪くないように思う。(奥さんがいると、すぐにチャンネルを変えられてしまうが…)

<photo:飯山市菜の花公園>