薫 風 ~KUNPOO~

初夏に薫る爽やかな風に思いをよせ、YukirinとKaorinが日々の出来事などを綴るページです。

熟年恋愛講座

2005-05-17 | 本  棚
■ 小林照幸『熟年恋愛講座』文春新書。大学にいた頃、小林さんとは数回面識があったので、昨年秋に発売されると同時に読んでみました。「40歳未満、お断り」とのオビがついた高齢社会の性を考える一冊です。

■ オビにあるようなシニアビジネスとしての性風俗店の紹介や老人ホームでの援助交際の話(80代の女性入所者が1回300円で二人の男性入所者とのセックスに応じていた…)で幕を開ける。老人ホームと聞くと、つい終の棲家と考えがちだけど、実は「人生最後の出会いの場」なのかもしれない。「寂しさを救ってくれるのは、施設長や寮母の笑顔ではな」く、「何よりも異性の仲間の存在が大きい」のだと続ける。

■ 制度説明に偏りがちな3章、4章は少々読んでいても退屈。しかも、説明に誤りがある。「養護老人ホームは、原則として65歳以上で身体、精神、環境、経済的な理由により、在宅での生活が困難な人が暮らす施設である。介護保険制度が実施されてからは、要介護1以上が入所の要件となっている」とあるけれど、養護老人ホームは介護保険の制度から外れた老人福祉法の施設であって、介護認定は必要ない。このことを教えてあげなくちゃ、と思いつつも住所やメールアドレスなどがわからないまま、すでに半年以上がたっちゃった…。

■ 第5章「美しく老いる-ある女性の生と性」は、81歳の女性からの手紙を手がかりとしてのルポルタージュ。この章は、ノンフィクション作家としての小林さんの面目躍如たるところ。二人の恋愛感情が生き生きと描写されていて、一気に読ませる。なんとか人生最後の恋を成就させてあげたいと思うけど、結婚となると遺産相続なども絡むから、現実的には難しいんだろうなぁ。結局、「若者だけでなく、熟年でも、高齢者となっても、恋愛が生きる原動力となっている」ということなのでしょうな。