como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

龍馬伝 感想再録 第46話

2010-12-30 18:59:55 | 過去作倉庫07~10
 今週の龍馬伝。いやあ~、見ごたえありましたねえ!! こう、グッとココロに熱く迫るものがありましたですね。45分が1時間以上に感じましたです、はい。
 つうと、先週のグダグダは…そう、萎え切って感想を書くこともできなかったあれはなんだったのよ、となるわけですが、なんかもう、出来のよい回と悪い回の落差が激しすぎるわ。このクライマックスに至って、龍馬伝のトータル評価は、いいのか悪いのかハッキリしないんだもん。
 てなわけで、いよいよラス3の1。ハッキリ言って先週は、これで「功名が辻」を蹴落として平成4大駄作(*)の殿堂に入るかと思いましたが、これでまた「も、もしかしたら傑作なのかも…」という評価が再浮上。いよいよもってわからない。こんなに最後まで、そういう意味でのスリルがあるとは思わなかったわな。
(*)私的平成4大駄作…「利家とまつ」「MUSASHI」「功名が辻」「天地人」。ほんとは3大にしたいとこだけど、「利まつ」と「辻」は甲乙つけがたい。

第46話「土佐の大勝負」

 慶応3年9月、龍馬は土佐に戻ってきたがじゃ、というところから今週のオハナシははじまるのですが、まずアバンで、象二郎ちゃんが容堂様に、龍馬が持ち込んだミニエー銃を見せるくだりから、緊迫感がびんびんでしたね。
 薩摩と長州は戦をする気まんまんで、日本中が内乱になりかねない。これはそのときに土佐を自衛するための兵器ですという象二郎ちゃんに、「で、土佐はその筒先をどっちに向けるがじゃ。薩長か。徳川か」と畳み掛ける容堂様。そうです…。この段階で、そういう根本的な立ち位置がはっきりしていない土佐。まあ、土佐だけじゃなくって薩長以外の全ての藩がそうなんですけど。ここで「とっ徳川です!!」と言い切る象二郎ちゃんの一言がいかに衝撃的で、重いことか。
 いまとなっては明治維新の経過なんてみんなが知ってることなので、幕末劇というのは、このギリギリの段階での決断が、いかにスレスレで、バクチ的で、危険きわまるものであったか…という、そのへんの緊張感をリアルにを出せるかどうかがキモだと思います。今週の龍馬伝は、そのキモのところの話なんですね。

 で、龍馬は、薩長が戦端を開くその前に、慶喜に大政奉還をさせるため、容堂様に大政奉還の建白書を書いてもらうと、そのプレゼンのために土佐に戻ってまいりました。 あの小汚い紋付も小奇麗なのに着替え、髪の毛もきれいにして、サワヤカ龍馬さんになりきっていったのに、象二郎ちゃんのお返事は「今日のところはダメ」。容堂様は、ぜんぜん話にのってくれない、と。
 とりあえず龍馬は、実家の坂本家に帰ります。お義母さんは亡くなっていて、ちょっと仏壇のまえでしんみりし、それでも久しぶりのご帰還に大喜び、そこに岩崎家も乱入して無礼講の大宴会になるのですが、こういうのって去年のドラマの定番で、あのおぞましい裸踊りと「どじょっこホイ」が……ああっ、そんなトラウマよみがえらせてはイカーン!!
 いや、この宴会シーンはよかったですよお。岩崎家のお父やんとお母やんもいい味だしてて。流れる音楽が、なんともいえない温かみと郷愁さそうアイリッシュ調でしてね。
 じぶんの好みもあるんだけど、このドラマって、エスニック音楽の郷愁や泥臭さを、うまく使っていると思う。あやしい知識で確認できたた限りでも、トルコ音楽調(=弥太郎マーチ)、中近東のシタール、フラメンコ、ケルト調、アルゼンチンのバンドネオン…と多国籍ですが、それがまたじつに、グッとくるようなツボにはまってるんだよね。
 って、ストーリーの運びと関係ないけど。でも、ここも選曲のよさが、なんてことないシーンを、グッとココロに沁みるような美しいシーンにしてたって話です。

 はてさて、象二郎ちゃんは、龍馬を大殿様に会わせるため、捨て身のプレゼンを試みます。いいかげんキレた容堂様は、なんであんな下士ふぜいとワシが会わんとイカンがじゃ!!と一蹴しようとしますが、象二郎ちゃんは、「実は、いまのこの世の中の流れをつくったのは、すべて坂本龍馬の手柄なんですっっ!!」憎みあう天敵の薩長の手を握らせた坂本のおかげなんですっっ!!!と…
…いや、今週の話よかったけど、ここだけは、そりゃまたヨイショしすぎじゃね?ってちょっとガクッときましたわ。すべて!すべて坂本のおかげ!!って…オイオイ。ま、これ龍馬主役のドラマだから、百歩譲ってそこまでの強引な要約を許すにしてもよ、そんな重大なはずの薩長同盟を、あんなメタメタなギャグ漫画(そして「愛の寺田屋騒動」の前座)で終わらせたのを忘れたとは言わせないわ。
 ま、強引だけどしょうがない。この象二郎ちゃんの言葉に、なにいーー!!とびっくらこいた容堂様は、おんし何でそれをワシに黙っちょったがじゃ!!と責めます。 それに対する象二郎ちゃんの返し。
「妬ましかったがですっっ!!」
 う、うぉお……。これまた、ドスコイの、髭面の、ムサさ120パーセントの象二郎ちゃんの口から、なんかもう居たたまれないほどイノセントな、少年のようなピュア~な告白!! おもわず赤面しちまったぜよ。象二郎ちゃんは目ぇウルウルさせて、唇をふるわせて続けます。わたしはっ!下士のくせに叔父の吉田東洋に認められ、自由に奔走して、ビッグな連中と渡り合い、ビッグな仕事をやる坂本が妬ましくて妬ましくて堪らんかったがです!神父様……いや違うか(笑)。
 いやね、こんなにもピュアな象二郎ちゃんの劇白に、うける容堂様の表情が。またなんともよかったの。かっ、可愛い奴…とはちょっと違うか(違うよ)、なんかこう、呆れたような、恥ずかしいような、でもうっかり泣きそうになっちゃったよ、みたいな、あーもう上手くいえないけど、こういう微妙な表情が、ほんとイイの。今週は、そんな容堂様の、微妙で絶妙な表情ですべてが動いた回、といっても過言ではありませんでした。

 んで、象二郎ちゃんの魂の劇白に心動かされた容堂様は、龍馬をお城に召しだします。
 いや、この前に、またちょこっと脱力ショーがある。海岸で、もとの勤皇党の仲間と旧交をあたためていた龍馬のところに、相変わらずバカな上士A・B・C・Dみたいなメンツが沸いて出て、坂本ー、おまん下士の分際で生意気じゃあー土下座せえー、かなんか言って。別にいいけど、このアホ上士A~Dとか、アホ幕臣A~Dとか、アホ新選組A~Dとかの描き方って、ほんと脱力する。いまさら言ってもしょうがないけど。
(でも、途中挿入された、土佐商会の上士たちが弥太郎に、「これからは算盤の時代がくる。ワシラも仲間に入れてください」というところは良かったですよ)

 まあそんな幕間劇はどうでもいい。龍馬と容堂様の会見の場です。
 容堂様は、土佐勤皇党を弾圧して仲間をいっぱい殺したワシが憎くはないがか!と龍馬にいいますが、「憎い。憎いです!!」と返す龍馬。でもママンはいいました、憎しみからはなにも生まれないのよと。♪いまもきこえるあのオフクロの声ボクに人生をおしえてくれあぁあ~~……っと、まあこの、再々出てきたママンの遺言のくだりは、いつもは歯の浮くパターンでしたけど、今回は良かったと思いますよ。というのは、龍馬はここでずいっと庭から立ち上がり、断わりもなしに座敷にあがり、容堂様のお居間にずんずん入っていってしまうんですよね。そして、憎まなくてはならないのは、そういう憎しみを生んだこの国の古い仕組みでござります!!と。
 これがなかなか象徴的でね。まさに龍馬が、武士の世界のヒエラルキーというベルリンの壁をぶち壊した、ってなシチュエーションなんですよね。断わりもなしにお殿様の座敷に踏み込むってありえないし、そして立ったまま上からものをいう、これもちょっとありえないわけですから。龍馬の言ってる言葉よりなにより、このありえない行動に、陪席の侍みんなが呆然としてる感じも良かったなあ。
 んで、容堂様は訪ねます。この国から侍も、大名も、無くしてしまおうというのか、と。
 龍馬は、「侍も大名も無くして、志のある者が議論をつくして国を運営していくという、そういう国にならないとどうにもなりません」と返します。侍も大名も居なくなって、この国にはなにが残るのか、という容堂様に、龍馬は「日本人が残ります!」と。
 その日本人をつくるために、あえて大名を滅ぼす道をとり、大政奉還の建白をしてくださいませといって、龍馬と象二郎ちゃんは、短刀を腰から抜いて前に置くんですね。この仕草がいいのよ。これって、ここで容堂様に死を命じられたら、自分たちはこの短刀でこの場で死にますという意思表示ですからね。
 んで、容堂様は、良くぞ言った、カンドーしたっ!!ワシが一肌脱いで大政奉還の建白をしたろやないかい!!……ってなイージーなことは、言わないわけです、ここでは。「刀を納めや」というのです。これが返事ですよ。二人に死を与えるつもりはない=諾、というとこですよね。クーかっこいい!!
 そして容堂様は龍馬に近づき、その横にどかっと胡坐をかいて、おまんワシが承諾すると見切っておったろう。何故じゃ、というのですが、ここでわたし、フーッと、武市半平太さんの牢を訪ねた容堂様の場面がプレイバックしたんですけど、次の瞬間龍馬がまさにそのことを言ったので、ちょっと鳥肌がたちました。いや、個人的なことですけどね、ドラマと自分の波長がピタッと重なったようで。
 あのとき大殿様は武市さんと同じ地べたに座り、目を見て話してくれたと、武市さんは涙を流して感動していた。そういう方だとわかっていたからです…と。
 これもとっても良かったですよ。というのは、山内容堂という人の人生を見ると、持っているコンプレックスだとか、上昇志向とか、そういうギラギラ感が、ふつうの殿様にはない、庶民に近いものだというのがわかるわけでね。べつに、このドラマ内で容堂様の半生を詳しくやったわけではないけど、そのあたりのことも立体的に立ち上がってくるような、よい演出だったと思います。
 で、そう言われた容堂様が、なんともいえない優しい目をするのよね。これも良かった。

 そして、容堂様は、覚悟の白装束で、大政奉還の建白書をしたためるのです。いち大名が、徳川家に対し、「政権を朝廷に返しておしまいなさいよ」なんて僭越なことをいうのですから…。そして、建白書の末尾には「松平容堂」の署名。松平って…あれでしょう、藩祖一豊の功に対して徳川家から特に許された、名誉の別姓なんですよね? 外様藩が松平の名乗りを許されるという、その名誉、受け継がれてきた自負心。そしてその名誉ある名を、徳川政権にピリオドを打つという書状の末尾にしたためる。そこに、長い長い歴史の、万感の重みがこもっているようで、ほんとグッときたなあ。
 で、そのあと容堂様は、象二郎ちゃんとお酒を酌み交わすんですが、象二郎ちゃんに杯を渡すところの間とか、表情とか、なんともいえず良かったんだよね~。なんてことないシーンだっていうのに、ひとつの時代が終わっていく、重さとか、哀愁とか、脱力感とか…。いろいろ感じさせる、すごくいいシーンだったと思います。
 けっきょく、歴史ドラマの値打ちというのは、こういうとこに見えるんですよ。時代が変わって世代交代していくときの、嵐の後の…あるいは嵐の前の静けさ、みたいなのを、いかにベタなせりふ無しに、詩情をもって表現できるかってことですよね。
…ってなんだかすごくエラソウだな。毎回こうだけど。すんません。

 んで、来週はプレ最終回。早いもんですね~。今週があまりに良かったので、次回の出来が不安だけど(新選組も見えてたし…)、ラスト3話、テンション落とさずにいってほしいもんです。