como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

坂の上の雲 第2-3「日露開戦」

2010-12-19 23:45:26 | 「坂の上の雲」メモリーズ
 あー、もう今年のプレ最終回じゃないの。ホントにあっというま。あっというまだけど大変な見ごたえ。やっぱり、去年もそう思ったけど、このドラマ連続して半年、一年と見たら、とても身が持たなかったんじゃないかな~。もう、いろいろと濃すぎて。
 というわけで、プレ最終回とともに今年も終わりに近づいているわけですが、今週は、いよいよ日露戦争が開戦しますということで、その直前の、緊迫した空気が、マクロとミクロの両方の視点から描かれます。
 やっぱり、思うんだけど、大河ドラマ系には、このように、あんまり視聴者に親切にしすぎない程度に、てきぱきと史実を織り込んでいくのが大切だと思うんだよね。女子供でもわかるように…ってなると、天地人や龍馬伝みたいなことになるわけじゃないですか。逆に、視聴者を多少置き去りにしても、俳優の演技が優れていれば、見る人は喰らいついて見るもんだと思うしね。
 そんなわけで、今週は、いやーやっぱりNHKってすごいやね、これだけの俳優を一同に集められるんだから、と感心してしまい、さらに、NHKならではの暑苦しい…あ、いや、濃い演技派のベテラン勢が、いろいろと体を張って演じているのを見てさらに感心し、こんなことが出来るのは、いや、ベテラン勢がこんなことやるのは、NHKのドラマだけだよなと、あらためてNHKの底力というものを見た気がしました。その件については、後述します。
 というわけで、ますます濃厚に展開していきます、坂・雲2010プレ最終回。今週もお付き合いよろしく!

○ 真之の結婚

 緊迫展開を前に、今週はちょっと乙女チックな話から。大陸から帰ってきた好古あにさんは、日本騎兵隊の本格改造に取り組んでいます。白い軍服がまぶしい。白い歯もまぶしい。なんか、ものすごく往年の…あの阿部寛の出世作(逆出世作?)、実写版「はいからさんが通る」を思い出す(爆)。
 んで、はいからさんが通る的な展開はさらに続きまして、こんどは弟の真之が、先週に引き続き、可憐な華族令嬢・季子さんとの恋バナです。八代少佐といっしょに、また華族のお嬢様たちのガーデンパーティーみたいなのにいった淳さんは、お嬢様たちの自転車クラブのなかに、季子嬢を発見。病院で桃をむいてもらっていらいの再会ですね。
 自転車大会で4等になってしまって、凹む季子嬢をなぐさめる淳さん。そのうち、自分もチャリンコに乗ってみたくなり、季子さんのチャリを借りて童心にかえってはしゃぐうち、心が前回になり、そしてふたりは…ええ、チャリをつうじて恋が生まれるというのは、古今東西の例を引くまでもなく世界共通の約束事。あえてベタとは言ってくださるな(ここで「冬ソナ」みたく二人乗りとかするんじゃないかと思ったけど…当時の自転車にはリアシートついてないのなw)、
 そして「まもなく戦争になりそうだけど、その前に少し昼寝をするから、季子さん付き合ってください」(!!!)とのプロポーズ言葉でもって、淳さんと季子嬢は、めでたくゴールインの運びとなります。
 この兄弟、結婚生活は男子の志を弱らせると信じていて、結婚後もそういう考え方だった、みたいなことをナレでいうんだけど、ドラマで見る限りそういう感じじゃなかったな。あにさんも、ふつーに愛妻家で、マイホームパパに見えた。まあ、そのへんの描写は、なんとなく世間一般に配慮して脚色を加えてる感じではありましたけど。

○あにさんinロシア・淳さんin連合艦隊・そして秋山家の人々。

 淳さんは嫁をむかえ、うれしハズカシ新婚生活♪というところへ、ひさしぶりに律っちゃんがたずねてきます。
 なくなった子規の形見分けにきたんですね。あんなに濃厚だった子規の死をほとんど引きずらず、回想シーンもほんとのちょっとしかなかったのは良かった。ベタベタ回想して思い出し泣きとかするより、パッと切り替えてしまったほうが、余韻が美しいように思いますから。過去の大河ドラマでも、いい作品ではみんなそうでした。
 律ちゃんもサッパリしてて、兄さんが新調していちども履かなかった下駄をもらってほしいと持ってきたりするんですが、これもちょっとジーンときちゃった。新妻の季子さんにも、最初、微妙に堅い表情をするんだけど、そのうち氷解し、なにげない会話からうちとけていく感じもとっても良かったですね。
 このあたりがミクロの部分として、ここから視点はダイナミックにマクロに振られます。
 騎兵隊長の好古あにさんは、ロシアからの招待をうけて、ニコリスクというところでのコサック騎兵の演習を見学にいくんですね。日本に対する示威行為なのですが、あにさんは大喜びで観戦にいき、そこで、こんなんと戦ったら日本軍の半分くらい死なないと勝てないだろう、とか思い、そして、ロシアの騎兵と仲良くなっちゃうんですね。さすがだわ。っていうか、酒飲めば敵もともだち、という好古あにさん。とりあえず酒を与えておけば最強なんですねこの人は。
 プロレスラーみたいなロシアの兵隊と腕相撲して、意気投合して、いっしょにコサックダンスをおどって(?)、君らには騎士道が、ワシらには武士道があるっ!戦場では堂々と戦おうじゃないかあ!!…とまあ、戦争っつーよりもワールドカップの前夜祭か、みたいな…。こういう、敵も味方も騎士道スピリットでシンパシーを持ち合っているような、そういう牧歌的な時代の最後だった、とナレでいうんですが、いやー、なんか、良い時代だったんですねえ…。

 そして、上のほーでは、対露開戦を睨んでちゃくちゃくと臨戦態勢を整えているのですが、そのひとつが、児玉源太郎の作戦本部次長就任。これは、内務大臣の児玉にとっては降格人事なんですけど、前任の田村怡与造が急死したため、自分で志願して、対露作戦の最前線に出てきたのです。
 そして、山本権兵衛は海軍を大リストラ。根本的に人事を入れ替えしてしまいます。病気のために舞鶴鎮守府で閑職についてた東郷平八郎を、みずから訪ねて引っ張り出し、連合艦隊司令長官に任命するんですね。
 これで治まらないのが、山本の盟友・日高壮之丞中将です。自分が連合艦隊を指揮するものと思ってたんですね。「連合艦隊司令長官は、作戦本部の手足のように動いてもらわらいと困る。自負心の強いあんたでは無理だ」といわれてリストラされた日高中将は、逆上して、海軍省で暴れます(!)。刃物を抜いて。それをがっぷり四つに組んで押さえる権兵衛。組んずほぐれつ、寝技に持ち込み…
…いやー、あれだ、石坂浩二と中尾彬の体を張った取っ組みなんて、リアルタイムで見られるのは、これが最後だと思うよ。ってか、よくこれやらせたよね。お、おじさんたち!だっ大丈夫か!って見てて手に汗握ってしまったもん。別の意味で…。

 そして真之は、司令長官東郷じきじきのご指名で、作戦参謀に抜擢され、連合艦隊にのりくむことになりました。
 連合艦隊の出撃に備えるため、佐世保にいくことになった真之は、習志野にいるお母さんと、好古あにさん一家をたずねて挨拶します。病床のおかあさんと、兄嫁の多美さんと子供たち、弟嫁の季子さん、この女性子供たちを前に、「縁あって秋山の家の者になった、皆といた日々は宝だ、あしの人生悔いはない」と豪快に言うあにさんは、出陣する弟の淳さんに、名刺に一筆書いて手渡すんですが、これが「這囘の役 一家全滅すとも怨みなし」という凄まじいもの…。ようは、おたがい、家族が死に絶えても振り返らないくらいの覚悟でいこうと。
 このあたりに、よくありがちな「家族を、愛する者を守る」とかいう戦争モノの催涙趣味とキッパリ一線を画する、並々ならぬものを感じますね。そう…明治の軍人は、愛する家族を守るため、みたいなセンチメンタリズムはなかった。国を守る引きかえに、自分はもちろん、一家が死んでもしょうがないと思ってたのです。よくも悪くも、そういう時代だった、ってことなんでしょうね。
 が、さすがにそんなことは嫁やお母さんにはいえなくて、適当に言ってごまかすんですが…お母さんが、布団のなかで泣いているのが切ない。さらに、棚の上に、亡きお父さんの遺影がさりげなく飾られているのに、おもわずウルッときてしまう。
 なんかさー、こうなると、ほんと、阿部ちゃんとモックンがほんとの兄弟じゃないって逆に信じられない。兄弟にしか見えない。あつまっているメンバーも、血のかよった家族にしか見えないし。
 いいドラマにおける、いい演技というのはこのように、ほんとに血の通った人間の関係を、虚構のうちにも確かに作り出すんだと思います。

○明石元二郎登場・ご聖断・そして戦争へ…

 うー、今週は、とにかく見どころが多くて多くて、コンパクトにまとめるのも一苦労なんですけど…。
 日本では、戦争回避のため、満州はロシア、韓国は日本の支配下ということでお互い不干渉とするという、日露協商、いわゆる満韓交換案を粘り強く交渉しています。
 ここで、日露戦争の陰のスターのひとり、明石元二郎が登場します。ロシア駐在武官の明石は、山県有朋の意をうけて、ひそかに、ロシアで革命工作を展開。叛乱が頻発したロシアでは、やがて血の日曜日事件が起こり、そこから10年以上かかって帝政崩壊につながっていくわけですが、この明石が、なんか、そんな歴史の立役者とは思えぬ、トボケたキャラなのが、なんとも味があって良いです。このドラマではあんまり出番ないかもしれないけど、もっと見たい!
 そして、じぶんが12年後くらいには殺されてる、と露思わぬ…いや、もしかしたら、なにかわけもなく不吉な予感に囚われてるかもしれない、ロシア皇帝ニコライ2世。日本と戦争するのが急に不安になり、日本の提案に完全譲歩しようと考えるんですね。この不安を、妻の皇后アレクサンドラも支持します。陛下のそういう優しく思慮深いところが好きです…と言って。
 このとき、一緒にいたおさない四人の皇女たち、そして皇后のお腹にいる皇太子のアレクセイ、やがて殺されてしまうんですが…ここで平和の証のように言われている胎児の皇太子が、いずれ怪僧ラスプーチンという者を登場させ、皇帝一家を悲劇に導く一員になろうとは…ああ神のみぞ知る。

 ニコライが出した「完全譲歩」の聖断は、ああなんということでしょうか、極東司令官アレクセーエフという無能で傲慢な人物の一存で、握りつぶされてしまうんですね。
 そして日本では、ついにロシアの回答時間切れ。旅順艦隊が出撃したという情報も入り、一刻の猶予もならないと、伊藤博文が天皇に上奏します。日本では、天皇はお公家さん時代が長かったので、開戦の決断なんかするのはもちろん初めてなのですが…。この明治天皇、尾上菊之助さんが演じるんですけど、いや流石っていうか。この年頃の俳優で、誰が見ても「天皇」って説得力をもって立ってるのって、これはまあ梨園の人でないと無理だよね。
 というわけで、日本でもご聖断は下ります。日露開戦です。この重大な局面を、べつにセリフでいわず、黙ってたってる明治天皇と、伊藤博文の後姿だけで表現したのはシビレタ!

 佐世保から連合艦隊が出撃する前に、将校たちの家族は、別れの宴を持ちます。真之も季子さんを呼んで、つかの間の別れの時を過ごすのでした。ロマンティックだわ。
 季子さんは、律さんにお針を教わって縫ったという淳さんの着物を持ってきてるんですが、そういえば、まだ10代の律さんが縫った淳さんの着物、あれはどうなったんでしょう…と思ってちょっとキュンとしたりしました。
 そんなキュンとしたシーンもつかの間、連合艦隊の旗艦「三笠」上に、ご聖断が持ち込まれるときが来ます。これは、封密命令といって、厳重に施錠されたブリーフケースでもちこまれ、電報で指示された決まった時間に開封されるんですね。この段取りのものものしさがカッコイイ。
 そして三笠の司令官室には、連合艦隊のトップたちが集まっています。真之の上官・参謀長の島村速雄も。…これが舘ひろし。渡哲也の背後に舘ひろしが立つと、坂・雲の三笠艦上も、いきなり軍団の空気に染まってしまうけど、それはさておき。
 東郷長官が開封した(それ専用の金の鋏でよ!)封密命令から出てきたのは、日露開戦の指示書でした。連合艦隊は直ちに、旅順艦隊のいる黄海にむかって出撃します。

 というわけで、いよいよ来週は2010年ぶんの最終回&広瀬さんサヨナラ公演。長いようで短かった今年の分を、たっぷり堪能しつつ、また来週。ではっ!


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