como siempre 遊人庵的日常

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坂の上の雲 第3-3話「敵艦見ゆ」

2011-12-18 23:51:40 | 「坂の上の雲」メモリーズ
 はい、坂・雲全編のなかでも出色の…というか、なにかこう異様なテンションが凝縮したような、いわゆるところの神回になりました、前回「二百三高地」を終えまして、今週は第3部プレ最終回。いや、3年がかりの大作の全編プレ最終回です。
 正直、二百三高地の出来が良すぎたので、今週は、ややツナギ的な雰囲気に終始した気がしますが…。水師営の会見など、戦争ドラマ的にランドマークになるようなイヴェントがスルーされたのもあるかもしれませんし、奉天会戦が、なんともこう、カタルシス感なく終わったのも残念だったかも…。といっても、内容は濃く、1時間半とはとても思えない、3時間くらい見たような気がするんですけどね。
 やっぱり、坂雲第3部は4話ではなく5話でも6話でもやって、今週は水師営と奉天会戦をじっくり描けばよかったと思います。江なんか、あんなどうでもいい内容で11月いっぱいやってる必要ナッシングだったじゃないの。
 いや、これはうちの老父が申しましたことで、「もう大河ドラマなんかやらんでいいから、こーゆードラマを年に一回でいいじゃないか」とのことでございます。ホントそうだよね。
 そゆことで、今週も戦場シーンがつづきますが、元気出していってみましょー、

第3-3話「敵艦見ゆ」


〇淳さんの帰宅

 前回、多大な犠牲を出して旅順要塞は陥落し、乃木とステッセルの水師営会見はさらりとスルーしまして(なんで?マジ疑問。尺の都合か、それともなんらかの外交的な配慮でも??)、今週は、ロシア艦隊を迎え撃つ前に艦隊とともに一時帰国した真之さん(本木雅弘)のお話からです。
 東郷団長(渡哲也)や皆さんといっしょに天皇陛下(尾上菊之助)に拝謁した淳さん。バルチック艦隊を迎えて勝てるか?という陛下の御下問に、団長はきっぱり「絶対勝って、宸襟を安んじ奉ります」と宣言。そんな、根拠のない自信をもって勝つて…固まる海軍のトップたちなのでした。
 そして淳さんがうちに帰ってくると、自宅では、愛妻の季子さん(石原さとみ)と、兄嫁の多美さん(松たか子)、それにお母さん(竹下景子)がそろってお出迎えしてくれまです。淳さんを迎えるために、松山の、なんだっけか、五目ずしだか炊き込みご飯みたいなのをふるまう女衆。べつにどーってことのないシーンなんですが、すごく心温まります。これも、松山時代からの秋山家のいとなみを、べつにそんなベタにじゃないけど、丁寧に繊細につくってきたからなんだろうな。
「ロシア艦隊はいまどこにいるんですか?だってご近所にきかれるんですもの…」と天然なことをたずねる多美さん。そんなんわかれば苦労はしませんやん、という話なんですが、それでも「勝つわよね?」という言葉には、日本が勝ってくれるということよりも、自分の旦那や義弟が無事に戻ってきてほしい…という言外の思いのほうがこもっているのでした。ううっ。
 それに「勝ちます」と宣言する淳さん。これは、さきの団長の陛下への「勝ちます」宣言とリンクしますよね。大切な存在への純粋な思い、という意味で。天皇陛下も家族もおなじ。
 短い休暇を終えて、帰営するという日、淳さんは寝っころがって天井を見ながら、天井に日本海の地図を想像します。いや、ここで、旦那さんの視線を追って天井を見上げる石原さとみちゃんの表情とかしぐさが、もう滅茶苦茶かわいくてですねーー。いやーもうかわいい!!こんなかわいい人泣かさないでほしい!と思うわけですよ。
 さらに、淳さんを見送るお母さんの視線…。べつに何も言わないんですけど、老いたお母さんの涙目(涙はこぼさないの。涙目)を見るだけで、こっちもウルウル来ちゃうわ。もう。第1話からずっと戦場が続いただけに、すごく胸を打つ、美しい休暇シーンでございました。

○奉天会戦

 連合艦隊は出撃しますが、その前に、二百三高地のあとの日露戦争の大本命、奉天会戦です。
 ええ。旅順はあくまで下準備と海軍の援護ということで、陸軍的には天王山はこっち、奉天です。真冬ということで、前線は沙河というところで凍りついているのですが、好古あにさん(阿部寛)とお馬さんたちは元気で、「騎兵は冒険と襲撃じゃあ!」とか言って、部下の永沼中佐(永沢俊矢)を後方攪乱の奇襲作戦に出します。が、永沼はそこで、ロシア軍の大騎馬軍団が日本の前線目指して進軍していくのを見てしまい、後方攪乱どころじゃなく本部に注進に走ります。
「よっしゃあああああ!!!」と気合入れまくるあにさん。ところが、この報告は、総司令部にシカトされてしまうんですね。騎兵ってのは機動性が高いから、ちょっとしたことでも反応がオーバーなんだわ、この寒いのにロシア軍が大攻勢とかバッカじゃねえの。地面が凍って塹壕も掘れんっつーのに。ロシアが来るのは春だよ春!
…っと鼻で笑うのが、あろうことか、全軍総司令官の児玉源太郎(高橋英樹)なんですよ。旅順のプレッシャーがとれてボケたとしか思えない。それへ、司令部まわりの松川敏胤(鶴見辰吾)とかが迎合してしまいます。
 いや、この松川大佐って、陸軍の頭脳とか当時言われてたそうだけど、むちゃくちゃ残念な人に描かれてますよねえ。実際はどうだったのかな。これでとても頭脳とは思えないんだけど。また、時代劇・現代劇とわず残念な人を演じさせたら当代いちの鶴見さんが、いい仕事してるもんだからねー、ほんとシミジミと残念に見えちゃうのよ。
 ま、それともかく。やはりというか、本部に黙殺された直後に、黒林台に布陣した秋山隊は敵軍に直撃されます。あにさんはお馬いのちの騎兵バカ一代ですが、こういう局面で、捨て身の一戦で男を見せる!みたいな無駄な見栄に走ることがなく、柔軟に、大事な馬は専用の塹壕に保護して、身軽に歩兵になって銃を手にたたかう、という判断ができるわけ。
 まあそんな奮戦もあり(奮戦の描き方はアッサリめでしたけどね…まあ先週が濃すぎたからかな)、ロシア軍とはなんとか五分にもちこんで撤退させることに成功。朝の雪原に、彼我の死体がごろごろしているところに、松川残念大佐が到着して「秋山さん、いやー難戦でしたねー」なあんて無責任なことをいうわけです。
 さすがのあにさんもこれにはムッとして、難戦て、それはお前死人に失礼だろ、とハッキリいいます。自分たちの報告を鼻で笑ってシカトした結果がこの死体の山。旅順も、まあそのようなもんでしたよね。「こんなことはいかんのだ。こんなことはいかんのだ」と。大事なことですからね。あにさん2回繰りかえしていいました。

 そして次が、大山元帥(米倉斉加年)の「日露戦争の関が原というも不可ならん!」という奉天の決戦です。いやー、この大山元帥の大時代さというか、近代戦の論理と明らかにずれてる感じ、実にいいよね。これが全軍の緊張感をなごませる場合もあれば、大雑把にすぎて、実戦の差障りになる場合もあるわけ。旅順は前者、奉天は後者ですよね。ちなみに児玉も乃木も、大山と同世代の前世期の人っぽい。考え方の根本が。大山・児玉はそれがわりと楽天的な方向にいくんだけど、乃木のばあいは徹底してネガティブ方向にむかってしまい、奉天でも、「第三軍が全軍の犠牲になる」みたいな、一方的な悲壮感を背負ってしまうわけです。
 奉天の作戦はこっていて、数がすくないので薄――くなって鶴翼に展開した日本軍が、圧倒的に大規模なロシア軍を包囲する、という布陣です。そもそも包囲できる厚みがないので、そこは陽動とか、バレーボールでいえば時間差攻撃みたいなの?いろいろと細工をして、ロシア軍を振り回そうというのが作戦ですが、どうも第三軍の動きが思うようでなく、松川残念大佐をイライラさせるわけです。
 つうか陽動をやるには人数がすくなすぎ、敵の攻撃をしのぐのが精いっぱいの第三軍。「援軍をください!」と必死の要請に、本部は無情にも「第三軍には多くは期待してないから」と、ハッキリ突き放してしまうわけです。これを言ったときの松川の、すごく後味悪そうな顔とか、言わせた児玉のなんともいえない固い無表情…。あと、それを言われた乃木の、一瞬放心するんだけど、すぐに、吹っ切れたというか?ふしぎに清々しい顔をするのが印象的で、この場面、あまりくどい説明はないんだけど、それぞれの表情や息遣いで、すごく重みのある複雑なシーンになりました。
 
 で、この奉天会戦でいちばん残念なひとが、ロシアの総大将、クロパトキンです。パトちゃん。パトちゃんは、日本が包囲の陣形をとっているのに勝手にビビッてしまいます。
 で、児玉に「全滅でもなんでもしょうがないから、全滅するときはせめてロシアの地を踏んで勝どきあげて既成事実を作ってから死んで来い」みたいなことを言われた好古あにさんは、こういうこと言われると無邪気に燃えるたちで、やるどーー!!とお馬たちをぱっぱか北へ走らせます。あにさんの天然パワーのゆえかわかりませんけど、ロシア側は、実は日本はすげえ数の騎兵を隠し持ってて、大攻勢をかけてくる!と一方的に誤解。パトちゃんは、「一時撤退。後方で陣形を立て直す」と勝手にきめてしまうんですね。
 かくして、砂嵐が天を覆う異常気象の朝、パトちゃんを先頭にロシア軍はスタコラと撤退し、日本軍は、ほぼ戦わずに勝利を手に…。あにさんや、乃木大将の見ゆる先には「見よ、奉天じゃ!!」と。
 よくて五分五分、これをなんとか、肉弾となっても捨て身の現地の努力で、6・4に近づけたところで、判定に持ち込みたい。
 という児玉の、当初からの目標はこれで達成し、日露戦争は、このあたりから、戦後交渉という外交のテーブルに移ることになります。

○天気晴朗なれども波高し

 ところはかわって、日本海でロシア艦隊をまちうける海軍のほうです。
 バルチック艦隊を率いるのはロジェストウェンスキー将軍。ロジーちゃん。ロジーちゃん旗下の艦隊は、マダガスカルだか、ロシア人にはもっとも似合わない熱帯で、なんか機械トラブルを起こして足止めを食います。ロジーちゃんの熱帯の悪夢…は、原作にはけっこうおもしろく出てるんだけどそこはスルーして。
 で、東郷団長以下の連合艦隊のほうは、ロジーちゃんがインド洋あたりでモタモタしている、なんてわかりませんから、なかなか運航の状態がつかめないバルチック艦隊に、不安がMAXに達してしまうわけです。というのは、バルチック艦隊の進軍コースというのは、対馬海峡経由の日本海コースか、津軽海峡あるいは北方四島をまわってくる太平洋コースか、両方想定できるわけで、まあふつうに考えれば日本海コースなんだけど、待ってる不安は妄想を呼ぶわけでね。敵はこっちの裏をかいて裏道をまわってくるのでわ!?とか思うわけです。
 日本は軍艦の手持ちも少なくて、両方でお待ちする、というわけにもいきません。日本海に少数精鋭の主力をおき、太平洋に残り全部をふりわけて…っと新選組の池田屋騒動みたいなことも、海戦ですのでできません(あたりまえだよ)。
 で、作戦本部長の淳さんは、もう、不安で不安で不安で……。このあたりに、お兄ちゃんとはだいぶ性格のちがう神経の細かさというか、細さがうかがえる気もしますが、お兄ちゃんみたいな大雑把な頭脳ではとても海軍の作戦本部長はできなかったでしょうしね。
 で、煮詰まったあげく、日本海コースと太平洋コースの折衷案として、津軽海峡の出口あたりで待つ、ということを考えるんだけど、それだとウラジオストックに近すぎて、うまいこと全滅させられればいいけどそういかなかったら、生き残りがウラジオに合流しちゃう。へたすりゃ挟み撃ちになるかも。と、リスクが高いわけです。それでも、対馬で待ちぼうけて太平洋コースだった、みたいなことよりマシかもと思い、淳さんと加藤友三郎(草刈正雄)は、一緒に立案した作戦を手に、東郷団長のところに行きます。津軽海峡に移動ということにきめて、封密命令を出してください、と。
 これを東郷は、全員の総意できめたことならそれでよか、っつって、実に冷静に承諾。これは東京の大本営にも連絡が行きますが、現場から遠い所から客観的にみて、めちゃくちゃリスキーなわけです。んなバカな、現場はとち狂ってる!と狼狽する部下を、山本権兵衛(石坂浩二)が、事件は総司令部で起こっているんじゃない現場で起こってんだ!!と(ちがうか少し)一喝、現地でそう決めたならそれでいい、と快諾する場面もあります。
 こういうのって、維新戦争世代の共通なんでしょうかね。総大将はドンとかまえて狼狽しない。下から上がってきた作戦が多少難ありでも、総大将がゴタゴタ口を入れて仕切ったりしない。そうせいよきに計らえ、全責任はワシが取って、まあ最終的には腹を斬る…。と。薩摩型リーダーの美意識なのかな。そのあたりも、明治という時代の微妙にグラデーションな世代感覚とか見えて興味深いし、明治にあっても大時代な、維新前の感性というのが、美しく見えたりもします。

 で、真之が焦りまくってきめた折衷案は、島村速雄(舘ひろし)が、それちょっと早すぎないか、焦ってバタバタしたら巌流島と同じで作戦負けっつうこともある、と大人の意見を述べて、ほら♪ジタバタすっるーなよ~~、って歌もあるじゃん??(ち、違…)
…みたいなことで、淳さんと加藤先輩はふたたび団長の意見を仰ぎに行きます。東郷の意見は、敵が来るのは対馬! その根拠は「通るちゆうて通る」と。
 それだけ。単純明快。つか、かっこええええええーーー!!! この、維新戦争世代のキモのすわりっぷりに感化された真之は、気合を入れ直し、ジタバタしないで対馬沖作戦にかけることになります。

 そして運命の5月27日早朝、哨戒艇・信濃丸が、対馬沖に接近してくるバルチック艦隊を視認します。「敵艦見ゆ、二〇三地点」という情報が全艦隊を駆け巡り、艦上で朝の海軍体操をやっていた淳さんは、そのままの形で硬直。そして喜びのあまり、そのままナイナイシックスティーンを踊り…(違うわ!!)
 いや、踊ってる場合ではない。いろいろやることはあるんですね。まず全員お風呂に入り、消毒した新しい戦闘服に着替えます。甲板が血みどろになってもいいように、甲板には砂をまきます。

これは東郷のお風呂ね。記念館みかさにて撮影。

 で、真之は大本営への電報の原稿をつくるんですが、「敵艦見ユトノ警報ニ接シ、連合艦隊ハ直チニ出勤・之ヲ撃滅セントス」という定型のあとに、有名な「本日天気晴朗ナレドモ波高シ」と一文を付け加えます。
 これは、情景の描写に託して戦況はわが軍に有利ですよという情報を報告したものなんですが、戦場での電報に、この描写力とか、ひらめき感。…なんかこれは、子規の霊が降りてきた、みたいで。すごくグっときてしまった。

 そして、三笠にZ旗が揚がり、東郷司令長官以下の参謀たちが、デッキに立ちます。めちゃくちゃ危険なんですが、東郷はそこを一歩も動かない覚悟。そこから、「皇国の興廃はこの一戦にあり」と、これも有名な激励が発られるんですね。

三笠のデッキ。東郷の立ち位置。

Z旗があがってるとこね。

 いよいよ日本海海戦。超有名な、東郷ターンの始まりです。この結末は、次回最終回を待て!


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