スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

国連開発計画の『人間の豊かさ』指数

2006-11-10 08:03:33 | スウェーデン・その他の社会
国連開発計画(UNDP)は2006年版の「人間開発報告書」を発表した。毎年発表されるこの報告書、注目の的は、経済力に教育や健康を総合して「人間の豊かさ」を示す人間開発指数だ。

まずは、「人間の豊かさ指数(HDI: Human Development Index)」の総合評価から。このHDIは、平均寿命、教育水準、国民所得を用いて、基本的な人間の能力がどこまで伸びたかを算出した指数だ。つまり、上表の右三行のLife Expectancy Index(平均寿命指数), Education Index(教育水準指数), GDP Index(国内総生産指数)を総合したものがHDIとして表されているのだ。平均寿命に関しては、実際の数値が真ん中の行に示されている。

ノルウェーは、教育水準と経済のおかげで1位に輝く。ノルウェーよりも経済の調子がよい、アイルランド、アメリカは平均寿命で遅れをとり、全体としての順位を落としている。

北欧(ノルウェー・アイスランド・スウェーデン・△フィンランド・△デンマーク)、北米(カナダ・アメリカ)、中北部ヨーロッパ(アイルランド・スイス・オランダ・△ルクセンブルグ・△ベルギー・△オーストリア)、そして、日本とオーストラリアが上位を占めている。

スウェーデンは5位と健闘(去年は6位)。日本は7位につけ、初めてベスト10から転落した去年の11位から再浮上した。景気の回復も反映していると言われる。

平均寿命は相変わらず日本が1番。


次は、HDIの逆の「人間の貧しさ指数(Human Poverty Index)」。こちらは、60歳までに亡くなる確率、文盲率、長期失業率、低所得層の割合などを総合したものだ。こちらではスウェーデンが1位に輝く。(順位はRankを参照)

スウェーデンの強みは、最終行の「全所得の中間値の半分以下に位置する国民の割合」が比較的低いことであろう。それだけ、所得配分のばらつき(分散)が小さいということだ。アメリカを見てみれば、やはり高いことが分かる。アイルランドも近年の経済自由化のおかげで景気は好調だといわれるが、一方で所得格差がアメリカに匹敵するくらい広がっていることが分かる。

日本はというと、この値が高い(つまり、所得格差が大きい)上に、労働力に占める長期失業率が少し高めだ。そういうことを含めた結果、全体では11位に落ちている。(ちなみに、ここに挙げた項目は抜粋であって、すべてではない)

この報告書には、HDIに考慮されている(と思われる)数々の指標が並ぶが、詳しくはここでご覧ください

以下二つは、私が関心を持ったもの。

教育に対する公的支出の割合(対GDP比)
北欧諸国が高いのは、義務教育や高校教育、そして大学教育の財政のまでもが、ほとんど公的支出によって賄われていることによるのだろう。一方で、日本の値の低さが顕著だ。義務教育や高校教育の普及率だけでなく、大学進学率も北欧とあまり変わらないはずなのに、公的支出の割合が低いということは、個人負担による部分が全体の教育費用の半分程度を占めている、ということではないかと思う。日本の経済格差の拡大と、結び付けて考えたい問題だ。


次は、女性の社会的・経済的地位の高さを示していると思われるジェンダー・エンパワーメント指数(Gender Empowerment Index)だ。これは、議員に占める女性の割合や、立法・上級管理職などに占める女性の割合(民間も含むのか公務員だけなのかは不明)、専門的・技術的職業に就く女性の割合、男性の所得と比較した女性の所得、などを考慮しているようだ。

こちらでは、ノルウェー1位、スウェーデン2位、と北欧諸国が上位をほぼ独占しているのが嬉しい。日本は、というと・・・・、ずっとしたの42位。すべての項目において、かなり低い値だが、特にひどいのが、男女間の所得格差

ちなみに、日本の前後に位置する国は、
40位 パナマ
41位 ハンガリー
43位 マケドニア(旧ユーゴ)
44位 モルダヴィア(旧ソ連)
45位 フィリピン
と、日本も後進国の仲間入りです。


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1 コメント

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Unknown (りん)
2006-11-15 00:04:38
またまた、なるほど。
私も読んでみたくなりました。
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