保守党率いる「右派ブロック」連立政権の来年度の予算案が10月半ばに発表された。所得税や土地・住宅税の減税をまず打ち出して、その一方でそれに伴う税収減をどうするか、そこに苦労の跡が窺える。つまり、社会保障制度の一部削減という「歳出面」での対策と、手数料や自己負担料を増やして事実上新たな負担を強いるという「歳入面」での対策といった小ワザを利かせているのだ。
まずはその中でも、失業保険(雇用保険)から見ていこう。ここでは、減税のしわ寄せがモロに見られるからだ。
・失業保険の給付額、給付期間の削減、給付条件の厳格化
・大学生は新卒後すぐ失業した場合には、雇用期間がなくても失業保険の給付権があったのだが、それを撤廃し、大学生であろうと一般の社会人であろうと、一定の期間の雇用がそれまでになければ、給付権を認めないとする。
それから、予備知識として、スウェーデンの失業保険は国ではなく労働組合が運営していて、業界ごとにそれぞれ失業保険組合があるのだ。しかし、それぞれの保険組合は徴収する保険料だけでは、収支をとてもやりくりできず、国の歳出の中の一分野「労働市場関連費」から運営費の大部分を支援してもらっている。(そして、その財源は企業が国に支払う「社会保障費」から拠出される)ちなみに、スウェーデン・フィンランド・デンマークの労働組合加盟率は80~90%と高いが、その理由の一つは、失業保険が労働組合によって運営されているためだといわれる(失業保険に加盟しても、労働組合への加盟は必須ではないが)。一方、お隣のノルウェーは労組ではなく国が失業保険を運営し、全入が義務付けられている。しかし、ここでは組合加盟率は55%と低いことからも、上記の理由もある程度正しいようだ。
それを頭に入れた上で、保守党の改革案をさらに見ていこう。
・失業保険の毎月の保険料を引き上げる。
・失業率の違いによって、各業界の失業保険の保険料に差をつける。つまり、失業率が高い業界の保険組合の保険料は高くし、逆に低い業界では低く設定する。
・パートで働く従業員も、失業保険の保険料は100%丸まる払わなければいけない。
ここで顕著なのは、経済メカニズムを使って、人々に経済的インセンティブを与えることを狙っていることだ。つまり、上の改革案が意図しているのは、
① 国からの財政支援を減らすかわりに、保険加盟者からの保険料を引き上げる。
② 失業者が、失業率の高い業界から低い業界へと移動するインセンティブを持つようにする。
③労働組合が賃金交渉のときに無理な賃上げ要求を抑えてくれるようになる。というのも、賃金が上がりすぎて、企業にとっての労働コストが高くなれば、企業は従業員を減らしたり、新規雇用を控えたりするようになり、その業界の失業率も高くなる。上記のように新制度では、その業界で失業率が高くなれば、保険料も高くなるわけだから、働く側にとっても不利になる。このような経済的帰結に対する責任を労働組合側はより意識しながら、賃金交渉をするようになるだろう、との期待がある。
保険料の引き上げといっても、その幅がかなり大きいのだ。これまではどの失業保険組合もだいたい100~140クローナ(1600~2200円)程度の保険料を毎月徴収していたのだけれど、それが一気に300~700クローナ(4800~11200円)に引き上げられ、しかも、業界間の差が大きく拡大されるのだ。(一番、高くなるのは漁師と芸術家の失業保険)
しかし、この案の発表直後から、抗議が相次ぎ、結局、保守党は「引き上げ幅は最大300クローナ」と、当初の計画の変更を余儀なくされた。(それでも、月300クローナ(4800円)の引き上げはかなり大きい)
(続く・・・)
まずはその中でも、失業保険(雇用保険)から見ていこう。ここでは、減税のしわ寄せがモロに見られるからだ。
・失業保険の給付額、給付期間の削減、給付条件の厳格化
・大学生は新卒後すぐ失業した場合には、雇用期間がなくても失業保険の給付権があったのだが、それを撤廃し、大学生であろうと一般の社会人であろうと、一定の期間の雇用がそれまでになければ、給付権を認めないとする。
それから、予備知識として、スウェーデンの失業保険は国ではなく労働組合が運営していて、業界ごとにそれぞれ失業保険組合があるのだ。しかし、それぞれの保険組合は徴収する保険料だけでは、収支をとてもやりくりできず、国の歳出の中の一分野「労働市場関連費」から運営費の大部分を支援してもらっている。(そして、その財源は企業が国に支払う「社会保障費」から拠出される)ちなみに、スウェーデン・フィンランド・デンマークの労働組合加盟率は80~90%と高いが、その理由の一つは、失業保険が労働組合によって運営されているためだといわれる(失業保険に加盟しても、労働組合への加盟は必須ではないが)。一方、お隣のノルウェーは労組ではなく国が失業保険を運営し、全入が義務付けられている。しかし、ここでは組合加盟率は55%と低いことからも、上記の理由もある程度正しいようだ。
それを頭に入れた上で、保守党の改革案をさらに見ていこう。
・失業保険の毎月の保険料を引き上げる。
・失業率の違いによって、各業界の失業保険の保険料に差をつける。つまり、失業率が高い業界の保険組合の保険料は高くし、逆に低い業界では低く設定する。
・パートで働く従業員も、失業保険の保険料は100%丸まる払わなければいけない。
ここで顕著なのは、経済メカニズムを使って、人々に経済的インセンティブを与えることを狙っていることだ。つまり、上の改革案が意図しているのは、
① 国からの財政支援を減らすかわりに、保険加盟者からの保険料を引き上げる。
② 失業者が、失業率の高い業界から低い業界へと移動するインセンティブを持つようにする。
③労働組合が賃金交渉のときに無理な賃上げ要求を抑えてくれるようになる。というのも、賃金が上がりすぎて、企業にとっての労働コストが高くなれば、企業は従業員を減らしたり、新規雇用を控えたりするようになり、その業界の失業率も高くなる。上記のように新制度では、その業界で失業率が高くなれば、保険料も高くなるわけだから、働く側にとっても不利になる。このような経済的帰結に対する責任を労働組合側はより意識しながら、賃金交渉をするようになるだろう、との期待がある。
保険料の引き上げといっても、その幅がかなり大きいのだ。これまではどの失業保険組合もだいたい100~140クローナ(1600~2200円)程度の保険料を毎月徴収していたのだけれど、それが一気に300~700クローナ(4800~11200円)に引き上げられ、しかも、業界間の差が大きく拡大されるのだ。(一番、高くなるのは漁師と芸術家の失業保険)
しかし、この案の発表直後から、抗議が相次ぎ、結局、保守党は「引き上げ幅は最大300クローナ」と、当初の計画の変更を余儀なくされた。(それでも、月300クローナ(4800円)の引き上げはかなり大きい)
(続く・・・)
そのネオコーポラティズムに必要とされる条件の一つが組織率の高さなのだといわれています。私は北欧はなぜこれほど労組加入率が高いのかと悩んでいたのですが、やっぱりゲント制が主要因でしょうか?
もしそうなら偉い学者さん方はなぜこのゲント制に注目されないのでしょうか。
仮定としてこれを日本で導入すれば、日本の連合の組織率アップ→北欧型ネオコーポラティズムへ→社会民主主義型福祉国家へ…という「バラ色」だらけの日本の道筋まで見えてしまうのですがどうでしょうか。(そんな単純にはいきませんよね…)