ウプサラ大学で政治学の修士課程を履修しながら、EUの欧州議会でインターンシップをした経験のある小串さんのブログ。
9月初めにオバマ大統領がスウェーデンを訪れた時には、その一つの目的がEUとアメリカ間で交渉が始まっている自由貿易協定であることを私のブログで触れたが、EUは日本とも自由貿易協定を結ぼうとしている。その交渉の舞台裏における鉄道部門をめぐる駆け引きについて、とてもよくまとまっているし、面白い。
1.日本ーEUの自由貿易協定交渉の焦点は鉄道セクター
2.日本-EUのEPA交渉の焦点は鉄道セクター:EUの市場開放度は本当に高いのか?
3.日欧EPA交渉の焦点は鉄道セクター:日欧の鉄道システムの違い
4.日本とEUのEPA交渉の焦点は鉄道セクター:ありうるシナリオ
ちなみに、スウェーデンについて言えば、ストックホルム地下鉄の車両やヨーテボリの近郊列車のほか、新型特急X3000(正式な形番はX55)を製造しているのはボンバルディアの鉄道部門(Bombardier Transportation)だ
(本社は上の記事にある通りベルリン)。ただし、ボンバルディアは、スウェーデンのVästerås(ヴェステロース)にあったASEA(現ABB)の鉄道部門を2001年に買収して傘下に入れており、現在でもそのヴェステロースにBombardier Transportationのスウェーデン法人の本社があり、工場も存在する。スウェーデンには、かつては他にも鉄道車両の製造会社があり、たとえば今でも現役の特急X2000(正式形番はX2)を製造したのはASEAとKalmar Verkstadだが、カルマル市にあったKalmar Verkstadは最終的にボンバルディアに買収された後、2005年に閉鎖されることとなった。
ついでに言えば、ヨーテボリの路面電車の新型車両を製造したのはイタリアのAnsaldobredaというメーカーだが、この車両は納期が大幅にずれ込んだり、性能に不具合が多くて頻繁に立ち往生したり、運転席の乗り心地が悪く労働環境問題になったり、車体のサビの進行が大幅に進んでいたりなどのトラブルが続いており、「トンデモナイまがい物を掴まされてしまった」というのが、ヨーテボリの公共交通やヨーテボリ市民の一般的な感想だろう。何度も試乗会を繰り返して決めた発注なのに、大きな失敗だった。そのおかげで、この新型車両が導入されれば退役することができた2世代前の車両がいまだに使われている。
一方、スウェーデンの鉄道の運行事業における主要アクターは国鉄SJであるが、そのほかにもフランス系のVeolia(前身はConnex)なども参入している。また、ストックホルム地下鉄の運行事業を行っているのは香港のMTRだ。
ちなみに、国鉄SJであるが、もともと国の鉄道庁が管轄していた鉄道インフラと鉄道運行事業が、鉄道自由化にともなって分割された際に、国の行政から切り離された鉄道運行事業を行う目的で設立されたのが「株式会社SJ」だ(鉄道インフラの整備・管理を行っているのは今でも国の交通庁)。ただし、SJの全株は今でもスウェーデン政府が所有しているため民営ではなく、あくまで国鉄だ。会社運営は基本的に民間の株式会社と同じように利潤追求にもとづいているため、記事にある「民間的な経営する」という点は全くその通りだ。よく誤解されることだが、SJの「S」はスウェーデンを意味しているわけではない。SJは「Statens Järnväg」つまり「国鉄」を意味している。SJ(Statens Järnväg)という名称は株式会社化の以前から、鉄道を管轄する行政庁を指す名称として使われていた。
9月初めにオバマ大統領がスウェーデンを訪れた時には、その一つの目的がEUとアメリカ間で交渉が始まっている自由貿易協定であることを私のブログで触れたが、EUは日本とも自由貿易協定を結ぼうとしている。その交渉の舞台裏における鉄道部門をめぐる駆け引きについて、とてもよくまとまっているし、面白い。
1.日本ーEUの自由貿易協定交渉の焦点は鉄道セクター
2.日本-EUのEPA交渉の焦点は鉄道セクター:EUの市場開放度は本当に高いのか?
3.日欧EPA交渉の焦点は鉄道セクター:日欧の鉄道システムの違い
4.日本とEUのEPA交渉の焦点は鉄道セクター:ありうるシナリオ
ちなみに、スウェーデンについて言えば、ストックホルム地下鉄の車両やヨーテボリの近郊列車のほか、新型特急X3000(正式な形番はX55)を製造しているのはボンバルディアの鉄道部門(Bombardier Transportation)だ
(本社は上の記事にある通りベルリン)。ただし、ボンバルディアは、スウェーデンのVästerås(ヴェステロース)にあったASEA(現ABB)の鉄道部門を2001年に買収して傘下に入れており、現在でもそのヴェステロースにBombardier Transportationのスウェーデン法人の本社があり、工場も存在する。スウェーデンには、かつては他にも鉄道車両の製造会社があり、たとえば今でも現役の特急X2000(正式形番はX2)を製造したのはASEAとKalmar Verkstadだが、カルマル市にあったKalmar Verkstadは最終的にボンバルディアに買収された後、2005年に閉鎖されることとなった。
ついでに言えば、ヨーテボリの路面電車の新型車両を製造したのはイタリアのAnsaldobredaというメーカーだが、この車両は納期が大幅にずれ込んだり、性能に不具合が多くて頻繁に立ち往生したり、運転席の乗り心地が悪く労働環境問題になったり、車体のサビの進行が大幅に進んでいたりなどのトラブルが続いており、「トンデモナイまがい物を掴まされてしまった」というのが、ヨーテボリの公共交通やヨーテボリ市民の一般的な感想だろう。何度も試乗会を繰り返して決めた発注なのに、大きな失敗だった。そのおかげで、この新型車両が導入されれば退役することができた2世代前の車両がいまだに使われている。
一方、スウェーデンの鉄道の運行事業における主要アクターは国鉄SJであるが、そのほかにもフランス系のVeolia(前身はConnex)なども参入している。また、ストックホルム地下鉄の運行事業を行っているのは香港のMTRだ。
ちなみに、国鉄SJであるが、もともと国の鉄道庁が管轄していた鉄道インフラと鉄道運行事業が、鉄道自由化にともなって分割された際に、国の行政から切り離された鉄道運行事業を行う目的で設立されたのが「株式会社SJ」だ(鉄道インフラの整備・管理を行っているのは今でも国の交通庁)。ただし、SJの全株は今でもスウェーデン政府が所有しているため民営ではなく、あくまで国鉄だ。会社運営は基本的に民間の株式会社と同じように利潤追求にもとづいているため、記事にある「民間的な経営する」という点は全くその通りだ。よく誤解されることだが、SJの「S」はスウェーデンを意味しているわけではない。SJは「Statens Järnväg」つまり「国鉄」を意味している。SJ(Statens Järnväg)という名称は株式会社化の以前から、鉄道を管轄する行政庁を指す名称として使われていた。
これは第四回目の記事にも追記したのですが、スウェーデン政府は、日本の鉄道会社やメーカーに興味があり、定期的に鉄道関係者を呼んで意見交換しているみたいですが、高速鉄道(新幹線)の受注を想定した上での動きかなとも感じます(2013年10月7日の政府のプレスリリース:http://www.regeringen.se/sb/d/12839/a/225729)
日立がイギリスで工場と雇用を作るということで大型案件を受注しましたが、強い鉄道車両メーカーのないスウェーデンでも日本勢の参入は十分ありうると思います(リベラルな北を拠点にして大陸に攻めていくみたいなw)。
あとは、よしさんの前回のブログにも書かれていたように、スウェーデン政府がどれだけこうした鉄道分野への公共投資を増やせるかにも掛かってくるかもしれませんね。現政権は減税ばかりに熱心ですからね (ただ、こういった案件で日本企業が受注するためには、労働組合との繋がりのある社民党よりも穏健党の方が政治的には有利になりそうな気もしますが)。
http://www.nikkei.com/markets/kigyo/ma.aspx?g=DGXLASDC13H03_13112014MM8000
そういえば、イギリスの鉄道が発注した特急車両の記事も最近ありました。
http://www.bbc.com/news/uk-england-bristol-30067282