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スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

為替レートについて

2009-04-11 19:43:09 | スウェーデン・その他の経済
久しぶりに為替レートをチェックしてみると、ここ数週間でスウェーデンクローナが若干持ち直していることが分かった。対円レートをグラフにしてみると、次のようになる。


私は昨年暮れの段階で、結構な額の円をクローナに替えておいたから、ちょっと嬉しくなる。

――――――
為替レートというのは、ちょっと厄介だ。ここ半年ほど、あるスウェーデン語の翻訳を手がけてきたけれど、この原著の中にはクローナの表記がたくさん出てきた。翻訳する際には、なるべく円でも併記したいのだけど、さてどの時点での為替レートを使おうか?

その原書が出版された2007年時点の1クローナ=17円というレート? それとも、現在の1クローナ=11円というレート? どれを使うかで、換算される円の額が大きく異なってくる。

これは、スウェーデンの社会保障制度を日本の方に説明するときにも大きな問題になる。所得水準や、失業保険や育児休暇保険の給付額が、その時々のレートによって、円にするとかなり違ってくるからだ。

たとえば、スウェーデンのフルタイムの就業者の平均年収(2006年)32万7000クローナだというが、これを1クローナ=17円で換算すると556万円になる。一方、1クローナ=11円で計算すると(わずか)356万円になる。この差はなんと200万円!

では、どうしようか?

為替レートは時として大きく変動し、その高い(低い)水準にしばらく留まることもよくあるので、その通貨の本来の力を反映していないことが多い。「本来の力」とはたとえば、そのお金でどれだけの物を買うことができる(購買力)か、ということ。

32万7000クローナを使ってスウェーデンで買えるのと同じだけの物を、日本で356万円を使って買えるのであれば、1クローナ=11円というレートは両通貨の購買力を反映した正当なものだ、といえるだろうし、そうでなければどちらかの通貨が過小(過大)評価されているということになる。

別の考え方をすれば、たとえば、アボカド1個がスウェーデンでは10クローナ、日本では150円だったとすれば、購買力を反映した為替レートは1クローナ=15円と考えることができる(これはもちろん、アボカドだけに限って考えた場合)。

では実際のところ、この購買力を反映した為替レートはいくらなのだろうか?

OECDの統計をもとに計算すると、PPP(購買力平価)レート2008年の時点で1クローナ=12.54円だということが分かる。


上のグラフから分かるように、PPPレート実際の為替レートほど大きく変動するものではない。通貨の購買力は、短期間にそう大きく変動するものではないからだ。

一方、2000年以降、一貫して円の購買力が強くなっていることもわかる。これは、両国の物価上昇の違いのため。つまり、日本ではデフレが続き、物価がほとんど上昇しなかったのに対し、スウェーデンでは平均で年に1.5%ほどの物価上昇が続いてきたからだ。


インフレ率

先ほどのスウェーデン人の平均年収の話に戻れば、32万7000クローナ=439万円ということになる(2006年時点でのPPPレート:1クローナ=13.41円を用いて)。

異なる国の所得水準や社会保障給付の充実度などを比較する場合、実際のレートを使うよりも、この購買力平価(PPP)レートを使ったほうが意味のある比較ができるのではないかと思う。実際、一人当たりのGDPの国際比較などをするときには、このレートが用いられている。(だから、円がいま急激に強くなったからといって、日本の一人当たりの国民所得やGDPが国際比較の上で急激に上昇するわけではない。)

そういえば、PPP(購買力平価)レートを真似たものとしては、世界中どこでも手に入る「ビッグマック」一つの値段を比較したビッグマック・インデックスというものを経済誌「Economist」が作っている。

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2 コメント

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Unknown (peterpan)
2009-04-12 17:33:55
こんにちわ。
スウェーデンに今年引っ越したものです。こっちに来てからこのブログを見つけました。
いつも為になる話をありがとうございます。
最近働き始めて、給与を日本円に換算したりしてたので、勉強になりました!
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Unknown (Yoshi)
2009-04-14 08:26:44
コメントありがとうございました!
1クローナ=18円だったときと比べると、今は円に換算しても随分小さくなっていますが、そのうちまた回復していくものと期待しています。
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