スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

イラク系スウェーデン人の選挙活動

2005-02-21 08:06:46 | コラム
先週末にイラクで誘拐されたイラク系スウェーデン人のことを書いた。どうもいろいろな人の話を聞いてみると、フセイン政権が倒された後に、イラクに戻ることを決意し、今回の総選挙に積極的に関わっているイラク系スウェーデン人は彼だけにとどまらないようだ。

Abir Alsahlani (30)は1991年に家族と共に難民としてイラクからスウェーデンに逃れてきた。当時17歳、その後スウェーデンで高校教育、そしてストックホルムにある王立工科大学で大学教育を受ける。スウェーデンに来てからもスウェーデン中央党を中心に政治活動に活発だった父親の影響を受け、彼女は国際的な子供救援のNGO・Save ChildrenをはじめとするNGO活動に積極的に参加する。

彼女は1年半前に家族と再びイラクに戻り、仲間と一つの政党を立ち上げた。「イラク民主同盟」!! これは8つの小政党の集まり(同盟 alliance)で自由主義と非宗教をモットーに掲げており、シーア派、スンニ派、クルド人、キリスト教徒など、民族や宗教に関わらず、イラク国民全体に広く支持を訴えかけている。

(英語やスウェーデン語の”secular”という言葉を訳して「非宗教的」としたが、これは宗教を否定する、という意味ではなく、宗教を政治に持ち込まず、そして、宗教や民族の分断をまたいで、同じ国で暮らす人々全体を対象にした政党、ということではないかと思う)

80以上の政党が名乗りを上げるイラク初めての総選挙だが、彼女の政党も予測によると(1/28当時) 3人から5人の当選が予想されるという。ちなみに彼女は比例代表リストの3番目。さて結果はどうなったのか? わかり次第、ここでお知らせします。


Abir Alsahlaniとその父親。スウェーデンにて(DN 2005/01/28)

移民や難民というのは、受け入れ側から見れば、社会給付と補助金を一方的に受け取るだけの“やっかいなもの”と見る人もいるかもしれない。しかし、経済的な援助を得るだけではなくて、本国に本当に必要なものをしっかり吸収しようとしている人々もいる。政治的抑圧のない環境を存分に利用し、しかっりと教育も身につけ(この家族の場合はイラク本国でも教育を受けていたであろうが)、民主主義の社会にどっぷりと浸って、その機能の仕方を身をもって学び、そのありがたさを実感し、そして時機が来たときに、本国に戻って民主化のために活躍する。このようなケースがあるならば、難民の受け入れはまたとない有効な「民主化支援」とための途上国援助と国際貢献といえるのかもしれない。


私が習っているスウェーデン語Bのクラスにも、2人のイラク人(1人はクルド人男性、もう1人はキリスト教徒の女性)がいる。自分の身の回りで世界が身近に感じられるのはとても刺激がある。

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