スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

スウェーデンの環境事情-ペットボトル・アルミ缶編

2005-12-30 09:51:15 | コラム
年内最後の書き込みになりそうです。

私の生まれ育った鳥取県の米子市というのは日本海に面すると共に、日本でも有数の汽水湖である中海のそばに位置します。ここでは、生活排水による汚染が以前から問題になっており、地元の向井さんという方が、環境の保全と水質の改善を呼びかける地域草の根の活動をやってこられました。

その一つが、地元の子供たちに積極的に自然と関わってもらおうとする「チビッコ環境パトロール隊」の活動。実社会に出て、環境に配慮してくれている人がたくさん出てきつつあり、この活動を通じた長年の環境教育が実を結びつつあります。

また、環境新聞『中海』を毎月発行され、町内全戸配布されるだけではなく、環境省、鳥取県、米子市の環境担当セクション、市内の小中学校・各公民館にも配布され、その活動が広く知られるに至っています。昨年5月号で200号を数え、縮刷版として冊子にして発行、町内全戸に配布、中海の水質浄化を基軸にした環境問題に取り組むための手引書として使われています。

以前から、その環境新聞『中海』にスウェーデンからのお便りを書いていただけないかとの依頼を受け、連載の第一作目が2005年11月号に掲載されました。

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スウェーデンの街中を歩いていると、ゴミくずが散乱している光景に出くわすことがある。ゴミのポイ捨ては日本以上に深刻な問題だ。人々が夜飲み歩く週末明けは特にひどい。一方で、市の清掃車が頻繁に取り除いている。残念ながらここではゴミ拾いは市の仕事、と割り切っている人も多いようだ。

一方で、空き缶やペットボトルのポイ捨てはあまり見かけられない。というのも、リサイクルすることでお金に換わるからだ。仕組みはこうなっている。酒屋やスーパーで缶やペットボトルに入った飲み物を買うと、10円から60円の手数料が代金に上乗せされる。飲み終わった後に容器を集めて、スーパーの入り口に備え付けられた自動回収機に持っていくと、その手数料が返ってくる。いわゆる「デポジット(質金)制」と呼ばれるシステムだ。手数料の額は、空き缶が10円、小型のペットボトルが40円、大型が60円となっているので、空き容器をまとめて返還するとまとまったお金になるのだ。

日本では、北欧というと環境保全が徹底した環境先進国、といったイメージがあるが、一般人のレベルでの意識はそれほど高くはないようだ。共働きが基本であるこの国では、日々の生活において時間的な余裕がないことが一つの原因かもしれない。この点では、草の根の活動によって環境意識が高まってきた日本の社会を、スウェーデンは見習うべきかもしれない。一方でスウェーデンの優れたところは、政策にたずさわる人々の行動の速さであろう。社会のために必要なことに関して、率先して法律を作ってしまう。リサイクルにしても、包装ゴミの増大を見越して、空き缶は1984年からペットボトルは1993年からリサイクルの義務化を行った。

義務化に伴って、業界組合の出資による非営利の企業を設立し、全国的なリサイクルのネットワークを完成させた。各スーパーに取り付けられた自動回収機の設置だけを考えても、膨大な投資だったであろうが、そのおかげで回収率はアルミ缶が85%、ペットボトルが80%になるまでに至った。国の目標はこれを90%にまでさらに高めることである。回収率が低いと、質金がリサイクルを管轄する非営利企業にそのまま入ってくることになる。この収入を使って、盛んにテレビのCMなどで広報活動を行い、回収率の向上に努力するという、うまくできたシステムになっている。

日本の回収率は2003年の時点でペットボトルが61%、缶が80%を越える。ペットボトルの回収は1997年から各家庭で始まったことを考えれば、比較的高い率だ。彦名のように自治会が徹底して行っている分別活動のおかげであろう。ただ、私の経験も考え合わせて見れば、都市部や学生をはじめとする若者のリサイクル率は低いのではなかろうか。もしそうであれば、デポジット制の導入によって、リサイクルすることに経済的な動機づけをすることは、日本でも一つの解決策になるかもしれない。ただ、ポイ捨てしない・物を大切にするといった心構えも必要だということを忘れてはならない。


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<追記>
スウェーデンの環境政策の発展を担ってきたのは、積極的な行政担当者や中央、および地方の議員だ。それと共に、Svenska Naturföreningenという全国的な環境団体である。この団体が、政治・行政の分野でロビー活動を行ったり、社会一般に向けて啓発活動を行ってきた。

このようなプロフェッショナルな団体が活躍する一方で、一般の人々が関心を持って参加している草の根の環境活動などは、残念ながらスウェーデンではあまり聞かれないようだ。私が京都にいるときに、スウェーデン・ヴェクショー市の市長と上記の団体の政策委員が招かれ、市がこの団体と共に策定した“環境アジェンダ”について講演を行った。この時に、大ホールに集まった数百人に及ぶ市民を前にした市長の第一声、「いや、ビックリした。スウェーデンでこのような会を開いても、一般市民の方がこんなに集まるなんて考えがたい!」が、印象的だった。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
やっぱり (ikebuchi)
2005-12-31 01:06:57
yoshiはすごいね!

高校時代中海でずっとボートを漕いでいたけどそんなことは全く気にしてなかったです。

たまに部活の時に中海の周りの掃除ぐらいはしたけどね。



ちなみに正月は帰ってきたりはしないよね?
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Gott Nytt Ar! (snowkoala)
2006-01-02 15:24:16
Yoshiさん、明けましておめでとうございます。私がLudvikaに住んでいた93~94年にくらべるとスウェーデンもだいぶ変わっているようで、昨年は興味深く様々な記事を読ませていただきました。私は今年またスウェーデンに住んでみたいという思いを実現しようと思っています!この一年がYoshiさんによって素敵な一年となりますように
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