火曜日の産業組織論(Industrial Organization)は、最後の講義ということで、スウェーデンの公正取引委員会(Konkurrensverket)を訪ねて、実際にそこで勤務する人から、実際のケースについて話を聞いた。話をしてくれたのは、まだ若く、Stockholm School of Economics(ストックホルム商科大学 = Handelshögskolan i Stockholm)でPhDをとった人。だから、今回の授業は母校に対するボランティアだ。
スウェーデンの最近のケースは、90年代末のガソリンスタンドのカルテルや、パン屋チェーンの合併、最近のものでは、アスファルト舗装の受注価格をめぐる建設会社の談合や、大手映画館の合併の是非(2大配給大手が合併すると、シェア8割になってしまう)など。現在の懸案は、スウェーデンがこれまで保ってきた、医薬品と酒類の流通における国の独占に対して、EU委員会が「EU市場内の自由な経済活動という原則に反する」として独占の解体を勧告しており、スウェーデンが必死に防衛しようとしているケースだ。この問題は、EU裁判所にまで論争が及んでいる。
法律専門家が比較的多いこの種の職場でも、経済分析のできるエコノミストの活躍する場は大いにあって、働き甲斐があると誇らしげに語っていた。
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行きの特急X2000は朝6:40発。ヨーテボリ・ストックホルム間の通勤は日本でいうと、大阪・東京間、もしくは名古屋・東京間の新幹線通勤に似ているが、スウェーデンでは本数がまばら。早朝はこれを含めて、5:40発、6:00発、6:40発なので、ストックホルムに出張する人は、たいていこれらの同じ列車に乗っている。おまけに1編成6両なので、だから、注意して見ていれば、知った人にもよく出会う。なんて小さな世間なの?
この日遭ったのは、同じ学部で働く同僚。何度もコーヒー・ルームで顔を合わせて、世間話をしたことはあるけれど、なにぶん、人数が多いので、どの研究者が何をしているのか、なかなか把握できないでいた。
で、この日遭った彼は、スウェーデンの国際援助を一括して担当する国際援助庁(SIDA)の委託で、新しい開発援助プランの作成に携わっているとのことだった。スウェーデンの開発援助は、援助額が国のGDPの0.8%に達しており、さらに有償よりも無償の援助が高いことが世界的にも知られている。それから、草の根など各種NGOと積極的にパートナー関係を持ち、実際の援助の多くを彼らを通じて行っていることも有名だ。
これまでは、社会資本の整備や、教育・医療施設建設などに直接お金を投資する援助が多かったけれども、長期的に見て、建設されたものが有効に使われないケースもある。それから、作ったものの、実際のニーズに合っていなかったケースも少なくないという。
そこで、最近のスウェーデン政府の方針は、短期的なこれらの具体的投資よりも、援助を受け入れる国の政府とタイアップして、その予算編成過程にも首を突っ込み、その国が全体としてどのような発展プランを持っているのか、そしてどこに援助が必要なのかなど、包括的で、かつ長期的な視点で行うことを強調しているのだそうだ。これがうまく行くためには、その国とのより密なコミュニケーションが必要になる、その国にチョロまかされないか、など様々な課題も多いらしい。そんな課題にこの研究者は関わっているのだそうだ。
私にとって見れば、大学の研究者として大学に閉じこもるだけではなくて、こうやってしっかり外に出て、知識を実際に役立てている人がとっても羨ましい。定期的にストックホルムに足を運んでいるなんて、とてもリッチに聞こえる。自分も将来こうなりたいと、モチベーションがちょっと高まった。
スウェーデンの最近のケースは、90年代末のガソリンスタンドのカルテルや、パン屋チェーンの合併、最近のものでは、アスファルト舗装の受注価格をめぐる建設会社の談合や、大手映画館の合併の是非(2大配給大手が合併すると、シェア8割になってしまう)など。現在の懸案は、スウェーデンがこれまで保ってきた、医薬品と酒類の流通における国の独占に対して、EU委員会が「EU市場内の自由な経済活動という原則に反する」として独占の解体を勧告しており、スウェーデンが必死に防衛しようとしているケースだ。この問題は、EU裁判所にまで論争が及んでいる。
法律専門家が比較的多いこの種の職場でも、経済分析のできるエコノミストの活躍する場は大いにあって、働き甲斐があると誇らしげに語っていた。
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行きの特急X2000は朝6:40発。ヨーテボリ・ストックホルム間の通勤は日本でいうと、大阪・東京間、もしくは名古屋・東京間の新幹線通勤に似ているが、スウェーデンでは本数がまばら。早朝はこれを含めて、5:40発、6:00発、6:40発なので、ストックホルムに出張する人は、たいていこれらの同じ列車に乗っている。おまけに1編成6両なので、だから、注意して見ていれば、知った人にもよく出会う。なんて小さな世間なの?
この日遭ったのは、同じ学部で働く同僚。何度もコーヒー・ルームで顔を合わせて、世間話をしたことはあるけれど、なにぶん、人数が多いので、どの研究者が何をしているのか、なかなか把握できないでいた。
で、この日遭った彼は、スウェーデンの国際援助を一括して担当する国際援助庁(SIDA)の委託で、新しい開発援助プランの作成に携わっているとのことだった。スウェーデンの開発援助は、援助額が国のGDPの0.8%に達しており、さらに有償よりも無償の援助が高いことが世界的にも知られている。それから、草の根など各種NGOと積極的にパートナー関係を持ち、実際の援助の多くを彼らを通じて行っていることも有名だ。
これまでは、社会資本の整備や、教育・医療施設建設などに直接お金を投資する援助が多かったけれども、長期的に見て、建設されたものが有効に使われないケースもある。それから、作ったものの、実際のニーズに合っていなかったケースも少なくないという。
そこで、最近のスウェーデン政府の方針は、短期的なこれらの具体的投資よりも、援助を受け入れる国の政府とタイアップして、その予算編成過程にも首を突っ込み、その国が全体としてどのような発展プランを持っているのか、そしてどこに援助が必要なのかなど、包括的で、かつ長期的な視点で行うことを強調しているのだそうだ。これがうまく行くためには、その国とのより密なコミュニケーションが必要になる、その国にチョロまかされないか、など様々な課題も多いらしい。そんな課題にこの研究者は関わっているのだそうだ。
私にとって見れば、大学の研究者として大学に閉じこもるだけではなくて、こうやってしっかり外に出て、知識を実際に役立てている人がとっても羨ましい。定期的にストックホルムに足を運んでいるなんて、とてもリッチに聞こえる。自分も将来こうなりたいと、モチベーションがちょっと高まった。
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