上海万博が開催したのに呼応してか、NHKで「大阪万博40年・描いた未来はいま」が放送された。未来予測を元にした当時の展示であった。これらを見て未来予測というのはどのくらい的中するのか調べてみようと思ったのである。丁度手元に「21世紀にむけての科学技術」茅陽一編 共立出版社 1984年・昭和59年8月10日初版発行があったので、順次これをひも解いて、現在は21世紀初頭であるがこれと比較して見た。
この章の場合は、この本が、昭和62年(1987)に国鉄からJRに民営化される僅か3年ほど前に発行されたという、大きな前提条件のずれがあった。そのため旧国鉄時代の問題点についての取り扱いに終始する構成となっていた。
本文中より、幾つか気になったことを列記した。
1.温暖化問題・・・s55年の資料であるが、Kcal/人・kmという単位で比較すると、通勤電車を1の場合、バスは約3.5倍、自家用車は約11倍である。
現在でも概略似たような傾向であろうし、例え電気・電池自動車の時代になってもその傾向に大きな差がないような気がしている。温暖化対策には、有効な交通手段であることには変わりなさそうである。
2.新方式鉄道・・・レール車輪式鉄道以外の新方式の発展は可能性薄と予測されていた。この通りのようである。
3.生産性の向上・・・総停車回数の抑制、需要に合わせた車両編成、乗務員数の削減、職員の多能工化による削減など旧国鉄時代に適用すべき合理化対策が列記してあった。民営化でかなり改善されたのだろうか。
JR各社の経営状態は少なくとも黒字のようであるが、民営化したといっても民営の独占企業になっただけである。厳しい競合状態にあるとは決して言えないと思っている。
残念ながら、長距離バスもまだ未熟で競合相手には不足であり、適正な競合状態を形成するに至っていない。
4.貨物輸送と鉄道・・・トラック輸送が大半を占めるわが国では、当面鉄道貨物の火を絶やさないことが最小限必要と提言していた。(環境改善には鉄道貨物への転向が望ましい、新たな工夫が生じることを願っている)
JR発足後23年を経た現在、確かにJRはある程度改善されたと感じている。今世紀は大幅な人口減少が予測されることを考えると、これまでの拡大基調から一歩後退して、緊縮基調へと方向を転換しなくてはならないだろうと、素人ながら感じている。
新幹線拡大投資やリニヤモーターカー投資はいい加減にして、安全確保やサービス改善、加えて大幅料金引き下げの方向に舵を切り替えて欲しいものである。