藤沢周平全集 第二十一巻 文芸春秋H18年(1997)発行 の中の「三屋清左衛門残日録」の一章に「草いきれ」というのがある。
夏風邪をひいた清左衛門が、よく気の付くできた息子の嫁の看病を受ける段である。
「清左衛門は今度の風騒ぎでは胸の内にべつの感想もあったのを思い出していた。
・・・ただ、死んだ喜和(妻)がいたならな、とちらちら思ったのである。
嫁に不満があったわけではない。しかし病人として嫁の看護を受けてみると、いくらか窮屈な感じがしたのも事実である。
・・・所詮は息子の嫁である。妻に言うようなわがままを里江(息子の嫁)に言えるわけではない。
・・・だがその手厚い庇護が、連れ合いを失った孤独な老人の姿をくっきりとうかび上がらせるのも事実だった。・・・」
小生も思いは全く同じで、身につまされるのである。