12345・・・無限大  一粒の砂

「一粒の砂」の、たわごと。
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士道小説

2010年11月04日 06時51分00秒 | Weblog

藤沢周平全集 第四巻 士道小説集 文藝春秋 平成18年(第五刷)は、第二巻の市井小説に比べて比較的すらすらと読むことができた。


 第二巻は市井に暮らす庶民のやりきれない哀しさを描いており、その重苦しさから一話読み終えると疲れて小休止の連続となった。


この四巻はかなり作風が異なり、後年のさわやかな読後感の作品が生まれることを予見させるようなものが多くなった。


作者の作品の主役は、多くが下級武士でありその生活の中で起きたというか巻き込まれた疎ましい事件を取り上げている。

直接的には事件には関わりのない、主人公のありきたりの日常も克明幅広くに描きその人間性を読者に知らせる・感じさせるという手法が多く使われている。(登場する主人公のほとんどが醜男であったり他人に嫌われる特殊な性癖を持っていたりと、通常のスーパーマンでないのが特筆すべき点である)


とにかく作者の作風は緻密で人間感情の広い範囲を織り込みながら、それらがいつの間にか作品の筋立てや盛り上げやアクセントに重要な役割をはたしていることに気付かされるのである。

作者のこの種の凝った作りには毎度驚嘆させられるのであるが、これが一連の作品の魅力ともなっているのである。