晩秋、午後四時半の舞踏会
小さな植物園 そこが舞台
そのひと隅で照るひと株の
楓の壮麗な色彩 艶やかなヒロインだ
落葉した樹々たちは
この楓の黒子を
演じているのだろうか
僅かに枯れ葉を残した
若い栃の木が
楓の枝と交差する
交差するところに
山茶花が白装束で顔を出し
楓の前景に出ようとする
風で
山茶花の白が
見え隠れする
ヒロインは
意にかいさず
赤を極めた壮麗な深紅の装いで踊る
栃の木は若すぎ
山茶花は臆病だ
楓はどこまでもヒロインだ
けれど
徘徊する魑魅魍魎に
ヒロインは気づいているのだろうか