自 遊 想

ジャンルを特定しないで、その日その日に思ったことを徒然なるままに記しています。

臓器提供を子どもに認めるか。 ①

2009年04月24日 | Weblog
 1997年に脳死臓器移植法が成立して以来、「脳死」患者からの臓器提供が80数例なされた。「間違った」移植医療が行われた場合もある。この間、臓器移植を求めて海外へ渡航する子どものニュースが続いている。臓器移植法のガイドラインで「民法上の遺言可能年齢等を参考として、法の適用に当たっては、15歳以上の者の意思表示を有効なものとして取り扱うこと」となっており、15歳未満の子どもからの臓器摘出は事実上できない。肝臓などは部分移植で可能であるが、心臓移植では子どもに合う小さな心臓の提供が日本国内では認められていないからである。移植を待ち望む子どもたちに何故機会を与えることができないのか。簡単に答えを出せない現状がある。
 〈本人意思の尊重〉 日本の臓器移植法は長い紆余曲折の末、本人の意思を尊重するということで決着し、「脳死」者からの臓器摘出を認めることとなった。限りなく黒に近い灰色と言われながら証拠不十分で不起訴になった1968年の「和田心臓移植」以降、長い議論の後、「脳死」判定基準ができ、脳死臨調の多数派は「脳死」を死として移植を認めるという結論に達したにも拘わらず、背景にある医療不信を拭い去ることができずにいる。しかし、脳死臨調で少数派で慎重派も臓器移植を完全に否定する理由を出し切れず、結局、臓器提供者の意思を生かすということで納得した形となった。したがって、意思を表明できない子どもからは臓器提供ができないことになった。
 本人の意思尊重を厳格に貫いているのはおそらく日本だけで、医療における自己決定を重視している米国でさえ、家族の同意のみでも臓器提供が行われているのが現状である。ヨーロッパの一部では、本人が事前に拒否していない限り臓器移植を行えるという考えをとっている。
 日本で移植を受けられない子どもが海外に出かけて臓器の提供を待つという現状には以上のような背景がある。こうした現状を放置して良いのか否かという論議がなされている。(続く)