自 遊 想

ジャンルを特定しないで、その日その日に思ったことを徒然なるままに記しています。

オオカミ

2009年04月22日 | Weblog
 最近、ジャック・ロンドンの『白い牙』を読み始めました。読み終えて気が向いたら「読後余滴」(近着情報)に記します。ところで、日本オオカミが姿を消したのは何故だったのか。
 芭蕉が旅をしていた頃、オオカミは熊とともに山野に生きる猛獣として恐れられていた。その前はどうかと言うと、古来、オオカミ(山犬)は人語を解して善人を守り悪人を害する聖獣と信じられたり、山の神の使いとして「御犬様」の名で信仰の対象ともなった。邪気、火盗の難を除くとされた。また農民や狩人にとって、オオカミは田畑を荒らす猪や鹿を追い払ってくれる益獣という考えも多くの地方にあったらしい。
 ところが、近世になり、田畑の開墾が進み、山野が切り開かれるとオオカミの生活圏が狭まり、餌となる野生動物の数も減ったため、人や家畜を襲う害獣として考えられ始めた。この考えは江戸中期以降らしい。
 人は自然の中で生きるために、他の動物を狩り、木や岩を利用して棲み処を作り、自然の厳しさと恵みの両方を受け入れてきた。恵みを受け取ると同時に、一度迷い込んだら出てこられない場所として森や山野を畏怖した。その象徴が御犬様であり、オオカミだった。森や山野に対する恐れが無くなり、単に利用するものと考える近代が始まったとき、約100年前にオオカミが姿を消したのは必然のように思う。
 今さら言っても仕方がないことではあるが、オオカミが消えるような自然環境を作ってきた人為は、それはそれで良かったのであろうか。