自 遊 想

ジャンルを特定しないで、その日その日に思ったことを徒然なるままに記しています。

桜餅

2009年04月12日 | Weblog
 僕は辛党でも甘党でもないのですが、どちらかと言うと甘党なんですが、柿の葉鮨とか柏餅とかイバラ饅頭とか桜餅とか、葉で包んだものが何故か好きだ。多分素姓が田舎者だからだろう。桜餅を久しぶりに食べた。桜餅を高級和菓子だとは思わない。独特の香りが野趣を醸した。
 桜餅の起こりは享保年間、向島の長命寺の寺男、山本新六が隅田川堤の桜並木の落ち葉の利用を思い立ってのことだという。
 現在の桜餅に用いられる桜葉は花の色が白いオオシマザクラの葉である。全国需要の七割を生産しているのが、伊豆半島の松崎町だそうだ。昭和38年頃から農家の副業となり、栽培面積は48ヘクタール。苗を植えて2年で葉の採取ができ、五月から八月が収穫期である。ものの本によると、農家ではオオシマザクラの葉50枚を1束として960万束を生産するそうだ。単純計算で4億8千万枚。加工業者の手で半年から一年、樽で塩漬けされる。その樽は人間一人がすっぽり入る大きさのものらしい。一樽で150万枚の葉が漬けられる。その後、全国に出荷された桜の葉が、桜餅となって消費者の口に入る。
 桜餅独特の香りは、桜の葉に含まれるクマリンという物質による。ただし、葉を生で嗅いでも桜餅の芳香はしない。葉の中でクマリンはブドウ糖に包まれており、揉んでも千切ってもブドウ糖は壊れない。塩漬けにして初めて、クマリンの香りが漂ってくるらしい。
 加工を経た上ではあるが、季節感を味わえる食べ物があることに感謝しなければならないと思う。