昭和の初め頃に、甲府盆地の南、標高1170メートルの山中の四尾連(しびれ)湖畔に掘っ立て小屋を建て、6年間程独居生活をした野沢一は、『木葉童子詩経』という一冊の詩集を残した。この詩人は余り知られていないと思う。徒然想で取り上げたことがあるが、もう一度彼の詩の一つを味読しておきたい。
夜の小屋
蟻よ
よく参りたりな
春の夜 ぼくの寝顔を見に来たのかな
蟻よ よく参りたりな
ぼく ゆかにねて
夜の雨を聴いている
蟻よ よく歩きまわるよ
知るや
汝(な)れの歩めるところは
僕の顔にして
あごを渡り
頬をすぎ
鼻のところにためらいて
又、再び頬を下るを
蟻よ 知るや
春の夜に牀(ゆか)にねて
なれに慰めらるる
この貧しき貧しき人の子を
(真似の出来る生活ではないが、彼の気持ちは何となく分かる。今の世の中、効率を求めて急ぎすぎるのだ。)
夜の小屋
蟻よ
よく参りたりな
春の夜 ぼくの寝顔を見に来たのかな
蟻よ よく参りたりな
ぼく ゆかにねて
夜の雨を聴いている
蟻よ よく歩きまわるよ
知るや
汝(な)れの歩めるところは
僕の顔にして
あごを渡り
頬をすぎ
鼻のところにためらいて
又、再び頬を下るを
蟻よ 知るや
春の夜に牀(ゆか)にねて
なれに慰めらるる
この貧しき貧しき人の子を
(真似の出来る生活ではないが、彼の気持ちは何となく分かる。今の世の中、効率を求めて急ぎすぎるのだ。)