自 遊 想

ジャンルを特定しないで、その日その日に思ったことを徒然なるままに記しています。

野沢一

2009年04月06日 | Weblog
 昭和の初め頃に、甲府盆地の南、標高1170メートルの山中の四尾連(しびれ)湖畔に掘っ立て小屋を建て、6年間程独居生活をした野沢一は、『木葉童子詩経』という一冊の詩集を残した。この詩人は余り知られていないと思う。徒然想で取り上げたことがあるが、もう一度彼の詩の一つを味読しておきたい。
 
 夜の小屋
 蟻よ
 よく参りたりな
 春の夜 ぼくの寝顔を見に来たのかな
 蟻よ よく参りたりな
 ぼく ゆかにねて
 夜の雨を聴いている
 蟻よ よく歩きまわるよ
 知るや
 汝(な)れの歩めるところは
 僕の顔にして
 あごを渡り
 頬をすぎ
 鼻のところにためらいて
 又、再び頬を下るを
 蟻よ 知るや
 春の夜に牀(ゆか)にねて
 なれに慰めらるる
 この貧しき貧しき人の子を

(真似の出来る生活ではないが、彼の気持ちは何となく分かる。今の世の中、効率を求めて急ぎすぎるのだ。)