やんまの気まぐれ・一句拝借!

俳句喫茶店<つぶやく堂>へご来店ください。

ぶらんこに座ろう話しやすくなる:天地わたる

2021年03月16日 | 俳句
561
ぶらんこに座ろう話しやすくなる:天地わたる
公園での出会いである。立話が込み入った話になって長引いて来た。傍らにぶらんこが風に揺られている。そうだここに座って話そうよ、きっと話しやすくなる。人の悩みは聴いてもらうだけで少しは楽になる。そんな聴いてくれる友人が自分に何人いるだろうか。<ぶらんこに独りや風の心地良し:やの字>読売新聞「読売俳壇」2021年3月8日所載。
<いらっしゃいませー俳句喫茶店・つぶやく堂ーどうぞお入りください>

遊ぶ子の声を四方に春障子:久我渓霞

2021年03月15日 | 俳句
560
遊ぶ子の声を四方に春障子:久我渓霞
障子から外の気配が伝わって来る。遊び回る子供達の甲高い声が四方から響いてくる。長く感じたこの冬も終わったなと安堵する。一病息災でもう少し生き長らえたらと欲張っている。一期の春を闊歩できたら有り難い。暮れに張り替えた障子の新しさも残って障子の光りもどことなく明るく感じられる。日本茶が美味しいのも今日を元気で過ごしている証拠だろう。<鳥の影右に左に春障子:やの字>読売新聞「読売俳壇」2021年3月8日所載。
<いらっしゃいませー俳句喫茶店・つぶやく堂ーどうぞお入りください>

ほどいては腕組み直す浅き春:薄井逸走

2021年03月14日 | 俳句
559
ほどいては腕組み直す浅き春:薄井逸走
腕組みをしている。ほどいては又組み直しているのは何かの思索に耽っているのだろう。この早春の事であるただでさえ春愁いの季節に何を悩んでいるのだろう。春は別れと出会いの季節である。惜別の念もあり明日を思い煩う事またあり。ところで小生の場合高級な憂いは無いので机の位置で悩んでいる。縦の物を横にするだけだが付属する本棚はじめ家具全体のバランスが崩れてしまうからだ。願わくば明るい明日であることを。<三叉路のどの道行かむ春浅し:やの字>読売新聞「読売俳壇」2021年3月8日所載。
<いらっしゃいませー俳句喫茶店・つぶやく堂ーどうぞお入りください>

ヘリコプター春の雲載せ旋回す:内田一正

2021年03月13日 | 俳句
558
ヘリコプター春の雲載せ旋回す:内田一正
爆音に空を見上げる。ぽっかり浮かぶ春の雲の下をヘリコプターが旋回している。何処かを撮影しているのか緊急救助体勢なのかは不明である。ただ真綿色した春の雲を背景に見ればのんびりした感覚となってしまう。私の住む東京近郊では自衛隊や報道各社のヘリコプターがしばしば飛行している。首都防衛の軍事基地も密かに設営されている。今日本の平和な時代の緊急性と言えばドクターヘリ位のものだろうか。<口開けて暫し眺めし春の雲:やの字>朝日新聞「朝日俳壇」2021年3月7日所載。
<いらっしゃいませー俳句喫茶店・つぶやく堂ーどうぞお入りください>

雨意すこし含みてをりし猫柳:服部康人

2021年03月12日 | 俳句
557
雨意すこし含みてをりし猫柳:服部康人
今にも降りそうな曇天の下猫柳を見つけた。それでも光りは春のものこの中を鈍い光を放っている。近頃は陽気も良く散策にもってこいの気候となっている。ついつい手ぶらで出掛けてきたが降り出しそうな雲行きとなってきた。小川の音に足を弾ませながらいざやご帰還とするか。あ、ぽつりと雨粒だ。雨、猫柳、、、春の光りが眩しく嬉しい。<せせらぎはちゃらちゃら唄い猫柳:やの字>朝日新聞「朝日俳壇」2021年3月7日所載。
<いらっしゃいませー俳句喫茶店・つぶやく堂ーどうぞお入りください>

女傘差しゆく男春時雨:三宅久美子

2021年03月11日 | 俳句
556
女傘差しゆく男春時雨:三宅久美子
何とも艶めいた句である。月形半平太だったか「春雨じゃ、濡れて参ろう」と言うのが春の雨の感覚である。しかし時雨るる程の雨と成れば現実びしょ濡れとなってしまう。そこで傘を差さねばならないが今日は天候を読み違えて持参していない。行きつけの居酒屋の女将が「これで良かったら」と花柄の女傘をかして呉れた。詰まるところ近々再び店に傘を持って出掛ける事になる訳だ。別になあんにもこまりませんが。<初恋は一つ傘なる春時雨:やの字>朝日新聞「朝日俳壇」2021年3月7日所載。
<いらっしゃいませー俳句喫茶店・つぶやく堂ーどうぞお入りください>

ものまねを交え説法水温む:あらゐひとし

2021年03月10日 | 俳句
555
ものまねを交え説法水温む:あらゐひとし
水温む春の一日僧侶の説法を聴いている。この僧侶は手振りも大げさだが物真似を交えての説法である。檀家連中はまるで芸人を眺める様な眼差しをむけている。閑話休題、最近は足腰が弱って正座と言うものが出来ない。自分だけかと思ったら多くの人がそうらしく椅子席の寺が増えてきた。お陰様で足を痺らせる事無く法要が済んだ。そんな帰路には説法の主意がしかりとインプットされている。<水温むから万歩計少し延ぶ:やの字>朝日新聞「朝日俳壇」2021年3月7日所載。
<いらっしゃいませー俳句喫茶店・つぶやく堂ーどうぞお入りください>

ずたずたに日輪うつす蝌蚪の水:小山都址

2021年03月09日 | 俳句
554
ずたずたに日輪うつす蝌蚪の水:小山都址
足許の池に陽がきらめいている。蠢くものがあって覗き込んでみた。とたんにあわただしい波紋が広がった。お玉杓子である。たちまち映っていた日輪がずたずたにされてしまった。いよいよ春も本番である。来し方のどの春も淡い期待に満ちていた。この春にはどんな出会いや出来事があるのだろう。<棒杭に空をうかがふ蝌蚪の列:やの字>角川書店「合本・俳句歳時記」1990年12月15日所載。
<いらっしゃいませー俳句喫茶店・つぶやく堂ーどうぞお入りください>

山の湖かたくりも花濃かりけり:星野麦丘人

2021年03月08日 | 俳句
553
山の湖かたくりも花濃かりけり:星野麦丘人
山の湖に佇んでいる。湖水も色も深い春の色をなしている。ふと足許を眺めると小さく可憐な花が目に留まった。かたくりの花である。この濃い紫に何故か心が揺れ動く。♪山の淋しい湖に ひとり来たのも悲しい心~♪え、お呼びでない、こりゃまた失礼いたしました。<空青し片栗の花反り返る:やの字>角川書店「合本・俳句歳時記」1990年12月15日所載。
<いらっしゃいませー俳句喫茶店・つぶやく堂ーどうぞお入りください>

若芝に母と子のゐて小犬ゐて:木田博幸

2021年03月07日 | 俳句
552
若芝に母と子のゐて小犬ゐて:木田博幸
春の公園は人がいっぱい。まだまだ若い芝生の上で母と子供と小犬が遊んでいる。今日と言う時間を平和極まりない日本に身を置いている。こんな奇跡を誰も気付かずにいる。この幸せを永久にあれと心に祈る。余談だが近時野良犬を見なくなった。一匹ん十万以上のペットをおいそれと逃がす訳にはいかないからだ。いずれの命もこよなく愛しい。<春の芝爺婆は今青春期:やの字>読売新聞「読売俳壇」2021年3月1日所載。
<いらっしゃいませー俳句喫茶店・つぶやく堂ーどうぞお入りください>

卵もつ公魚釣られきりもなし:岡本炎弥子

2021年03月06日 | 俳句
551
卵もつ公魚釣られきりもなし:岡本炎弥子
子持ち公魚(わかさぎ)の天ぷらは絶品である。そんな狙いで公魚を釣りに来た。公魚は群れを成して回遊している。釣れ始めれば切りも無く釣れ盛る。春先にかけて腹に卵を持つ子持ち公魚が混じってくる。忙しい竿捌きの間は無念夢中である。釣り終えた帰路はどう調理してみようかと果てしない楽しみの時間となってゆく。<ワカサギの一つ命を戴きぬ:やの字>読売新聞「読売俳壇」2021年3月1日所載。
<いらっしゃいませー俳句喫茶店・つぶやく堂ーどうぞお入りください>

白菜を切れば黄金仏かな:久我渓霞

2021年03月05日 | 俳句
550
白菜を切れば黄金仏かな:久我渓霞
切った白菜の芯に黄金の仏を見た。どことなく鮮度とみずみずしさを感じる。一病息災なれど今日も食欲旺盛に過ごしている。これも神仏のご加護の成せる技だろう。このまま健康長寿で過ごしたいがいつか来たるべき時はやって来る。どうぞ神様仏様美しき死を賜わりますように。<遙かなる菜花畑や遠き富士:やの字>読売新聞「読売俳壇」2021年3月1日所載。
<いらっしゃいませー俳句喫茶店・つぶやく堂ーどうぞお入りください>

蝶を追ふ蝶ひるがえり午も過ぎ:吉田哲二

2021年03月04日 | 俳句
549
蝶を追ふ蝶ひるがえり午も過ぎ:吉田哲二
菜の花に蝶が舞っている。その蝶をもう一頭の蝶が追って翻っている。陽光に生命が輝きこの世を謳歌している。春爛漫の午後の一時である。余談だが蝶の数は「頭」、兎は「羽」、魚は「尾」、鹿は「蹄」と数える事がある。ぼうーっと生きている小生は全て「匹」を使っている次第である。さて我が初蝶は紋白蝶なのか紋黄蝶なのか。ささやかな楽しみである。<初蝶の顔の色香をみてとりぬ:やの字>俳誌「角川・俳句」2021年3月号所載。
<いらっしゃいませー俳句喫茶店・つぶやく堂ーどうぞお入りください>

受験士の輝きながら帰り来る:椎名貴寿

2021年03月03日 | 俳句
548
受験士の輝きながら帰り来る:椎名貴寿
受験シーズンがやって来た。輝きながら帰って来たのは余程出来が良かったのだろう。この顔が待っていた家族をほっとさせている。この年代の思春期と言う複雑な心理状況の中で受験を突破することの難しさが思い知れる。目出度く突破出来ればこれ良しとする。とは言え人には人それぞれ適正もあるだろう。落第故に大成出来る事すらある。如何に自分の適正を見つけ夢を持てるか。資格を問はなければ学問は終生できる。意欲がある内が正に青春なのであろう。<受験士の顔それぞれに瞳あり:やの字>読売新聞「読売俳壇」2021年2月22日所載。
<いらっしゃいませー俳句喫茶店・つぶやく堂ーどうぞお入りください>

独り言牛にもありておぼろ月:秋野三歩

2021年03月02日 | 俳句
547
独り言牛にもありておぼろ月:秋野三歩
牛の中の一頭が牛がも~と鳴いた。牛にも独り言があるのだなと妙なことに感心する。折しも空には朧月。そう言えば最近は自分でも独り言が多くなったと思う。人に会えないコロナ禍の生活がそうさせた。テレビを見ては政治の腐敗に腹を立てて見たり、突然仲間の悪戯を思い出し笑ってみたりして独り言を言っている。夢の中の寝言を妻に聞かれて言い訳に窮したりもする。油断大敵なり独り言である。<朧夜のほろ酔いにある独り言:やの字>読売新聞「読売俳壇」2021年2月22日所載。
<いらっしゃいませー俳句喫茶店・つぶやく堂ーどうぞお入りください>