パリの観光名所のモンマルトルにあるサクレクール聖堂とノートルダム寺院の写真を上と下に示します。どちらもカトリックの美しい教会です。多くの観光客はこれらの教会を訪れて「ああ、フランスはカトリック国なのだ」と思います。しかしフランスには伝統的に無神論者や反宗教者が種々の社会問題を起こしている複雑な国なのです。
先般の新聞社の襲撃事件で17名の貴い人命が失われた原因の深層には、フランス人の「宗教たたき」があるのです。その運動が表現の自由という錦の御旗を振り回した事件だったのです。
何時もそうですが大事件の後、適当な時間が経過すると原因の深層が見えて来るものです。
昨日の読売新聞の夕刊の9面に元駐ヴァチカン大使だった上野景文氏がこのフランスの「宗教たたき文化」を明快に説明しています。
パリの銃撃事件の直後、フランスでは370万人以上の規模のデモが燎原の火のように全国に広がりました。各国の大統領や首相もデモに参加したのです。
このデモは「表現の自由」を絶対視して、それを守るためのデモのように見えました。
しかしその深層にはフランスの「宗教叩き文化」が根強く流れていたのです。上野景文氏の解説ではこのフランス特有の思想と社会的運動を明快至極に描いています。
それはさておき、私はカトリックの信者なのでムハンマドを冒涜されたイスラム教徒の怒りと悲しみが痛いほど判るのです。
ところがフランス人の40%は神を信じない無神論者だそうです。上野景文氏は書いています。「ここ10年ほどの風刺漫画の発表は、「無神論者、反宗教主義者による宗教たたき」というフランス的「伝統」が漫画をかりて発現されたと考えれば理解が容易です」と。私も納得しました。
神を信じている人が人口の90%と言われているアメリカは、大統領も国務長官もフランスのデモに参加しませんでした。ローマ法王のフランシスコさんは表現の自由には限度があり宗教の指導者を冒涜すべきではないと言いました。
あらゆる民族の文化には優劣が無いと言いますが、違いがあるのです。その違いを許し合って世界の平和を作っていくのが人間の知恵というものではないでしょうか。お互いに許しあえば、お互いを大切にする心が生まれます。
今回、イスラム国で起きた残忍な事件も時間が経過するとそのいろいろな原因や深層が少しずつ明らかになって来るものと信じています。
現在は犠牲になった湯川遥菜さんと後藤健二さんの冥福を静か祈るにだけです。