後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

外国体験のいろいろ(36)戦争の空しさ、

2008年03月24日 | 旅行記

@山林の中で考えたこと、

早春の夕方、焚き火をしながら考えた。小川のほとりで。

年老いて考えることは少年の頃のこと。昭和20年7月、住んでいた仙台が一夜にして焼け野原になった。終戦、米軍の占領、戦後の荒廃した社会。そしてアメリカ留学をした。1960年になってから。

1960年当時、路上では我々へ必ず微笑みかけて、「ハーイ!」と声を掛けてくれた。老若男女関係なく皆あいさつし、歩みを少しゆっくりさせ、道を空けてくれた。荷物を持っていると重そうだから家まで車で送って行くと声をかけてくれた。戦後の荒廃した日本から行くと、突然、別世界へ飛び込んだような印象を受けた。すっかりアメリカが好きになってしまった。

@1960年頃のアメリカの自信と陽気さが完全に消える

第二次大戦で勝利を収めたアメリカは、朝鮮戦争、中南米出兵、ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争と大型戦争を行ってきた。この中で完全に敗北し、悲劇的退却をしたのはベトナム戦争だけである。この戦争は1966年からほぼ10年、アメリカ軍人の死者5万人以上とその数倍の戦傷者を出した。

人的損害が大きかったのみでなく、アメリカ社会の分裂と自信喪失をもたらした。

ベトナムで負けたあとのアメリカは意気消沈。かつての闊達な態度や自信がすっかり無くなった。1976年以後のアメリカでは、路上の人々は皆暗い顔で下を向いて歩いている。あいさつもしない。中年の男はすれ違いざま疑い深い顔で冷ややかに見る。社会全体がとげとげしくなった。あの陽気で誰に対しても親切なアメリカ人は一体どこに消えてしまったのだろう。ベトナム戦争の後遺症である。

親しいラップ教授の自宅でビールを飲みながらこの感想を話した。

「その通りだ。ベトナム戦争が正しい戦争だったか否かを君とは議論しない。ただ自分がしたことだけ言うよ」「ベトナム戦争へ何か関係したのですか?」「戦争終了後しばらくして多数のボートピープルが出た。アメリカはそのすべてを移民として受け入れた。自分は7人をこの家に泊めてあげた。彼等は臨時の仕事場を見つけ、数ヵ月後には皆出て行った」「そんな話は日本の新聞には出ていなかったですよ」「日本は何もしないで経済的恩恵のみを取った」「そんな一方的な判断は困りますね。出撃する米軍は皆日本の基地からでした」「ボートピープルが多数出たとき、アメリカやドイツの民間団体が客船をチャーターしてベトナム沖に待機させ、波間に漂う小船の難民を拾い上げた。日本だけ客船を出さなかった」アメリカやドイツは人道的だが日本人は人道的でないと非難したいらしい。礼儀上そう露骨には言わなかったが。

@アメリカ人は韓国兵を絶賛する

ロサンゼレスで乗ったタクシーの運転手は黒人でベトナム帰りであった。よく喋る男で前線の戦いぶりを振り向いて熱心に話す。

「おれの小隊はいつも韓国兵の小隊と一緒に最前線でベトコンとやりあったよ。ところが韓国兵が素晴らしいのだ。勇気があるだけじゃなく、攻撃してくるベトコンの弱い一角を必ず突く。それでおれの小隊が何回も助けられたよ。戦争慣れしているのだ。夜襲してくるベトコンを必ず追い返す。こちらの小隊長は腰抜けの少尉で、韓国の小隊長の言うことを聞いて動いていたよ。指揮権はアメリカにあるはずだが、前線に出たらそんなこと関係なくなるのさ。負傷兵を背負ってかえってきた韓国兵を見れば、だれでも韓国兵の言うことに従うよ。前線とはそういうものだ」

タクシーを降りる時、「あなたは韓国人ですね。今日のタクシー代金はいりません」と運転手が言う。残念ながら日本人だったので代金を払った。韓国人を褒めてくれたのでチップを多めにして。

我々日本人はベトナム戦争当時、ベトナムに平和を!とだけ叫んでいた。「ベ平連」という大きな組織が新聞を賑わしていた。平和を!と叫べば許されるような気がしていたと言えば反論もあろう。しかし日本の新聞には報道されなかった色々はことがあった。

一歩外国へ出てみると随分と違った戦争への見方があるのに気がつく。

どれが正しいか?という議論ほど空しいものはない。悲しさだけが心にのこる。平和な春の夕方。山林の中の小川が静かな水音をたてている。

(続く)


2 コメント

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そうだったのですか・・・ (高山)
2008-03-25 11:05:41
そうだったのですか・・・
日本がボートピープルを受け入れなかったのは本当に残念なことです。
国際国家といえませんね。
韓国兵の頑張りなど、貴兄がここでおっしゃらなかったら誰が知りえるでしょうか。

いつも知られざる歴史をありがとうございます。
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高山さん、 (藤山杜人)
2008-03-25 12:07:32
高山さん、
お褒めにあずかり有難う御座いました。
今後とも宜しくお願いいたします。敬具、藤山杜人
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