まえがき、
このブログではいろいろな方に寄稿をお願いして、時々寄せて頂いたものを掲載しています。
今回は、「狩猟の趣味の深さ」という連載記事をでいしゅうさんという方にお願いいたしました。
でいしゅうさんとはネットの上で友人になりました。私自身は狩猟はしたことがありません。ただ好奇心はあります。
ですから でしゅうさんに頼んで書いて頂いているのです。毎回、今迄知らなかった面白い話を送って下さいます。
でいしゅうさんは 奥深い狩猟という趣味を生涯続けている方です。
人間性が良い方です。毎年、猟期になると狩りのための車を大型フェリーに積んで北海道に移り住みます。エゾシカを狩るためです。
その話が面白いので狩猟について気楽な連載記事を私のブログの為に書いて下さいと数週間前にお願いしました。
今日は本州でのイノシシ猟と鹿猟における勢子と撃手の緊迫した連携の見事さが書いてあります。
お楽しみ頂けたら嬉しく思います。
===でいしゅう著、「狩猟の趣味の深さ(5)勢子と撃手の緊迫した連携」 ===
日本鹿(以降は鹿)は狩猟の対象として大きなウエイトを占めてきた。一時は自然の変化により大量死(栃木県日光)もあり、その雌鹿が保護されてきた。しかし科学的見地の無い保護政策により森林の荒廃(大台ケ原)を招き、森林経営に甚大な被害を与えた。
今日では雄雌ともに狩猟の対象とされ、1日につき1頭/1人が捕獲数となっている。
しかし、ハンターの数から計算すると、今後も爆発的に増加するだろう。そして、狩猟の対象として鹿は人気が無い。猪に比べれば美味しくないからである。魚釣りで言う所の「外道」となって来ている。
「鹿猟」としての狩りを我々はしない。猪と鹿を狩るのである。
親方所有の山でグループ猟、巻狩りを行う。複数の山が含まれているが、猪や鹿の寝る場所は決まっている。風の当らない羊歯の深い場所である。
まず親方の家で打ち合わせをする。跡見(足跡や食事の跡)をした者が報告し、どの辺に居るか予測する。そして放犬の位置を決め、逃げるだろう経路も予測するから過去の経験や洞察力が必要だ。ところが我のグループのようにマチ(待ち伏せて撃つ者)が3名のグループでは予測される逃げ道全てに配置出来ない。比較的に真ん中で待つ者は勢子が通り過ぎると、最も外へ移動する。山の頂上付近は足の良い若者(50歳)が行く。私は足が悪いので道の近くと配慮してもらう。その代り、連絡を受けると車で山向こうへ走行する。こうして持ち場が決まるとスタート時刻を定め、それまでに配置に着く。猟犬もGPSを装着されると意味が分かっているので、興奮して鳴く。1年生の犬には防牙用のベストを着せる。
スタート時刻になると勢子さんが確認する。泥舟さんOKですか?一郎さんOKですか?
OKの返事が全て揃うと「では放犬します、安全に気を付けて下さい」と無線が飛ぶ。
もう誰も返事はしない。猟は始まったのである。
勢子は低位置から犬を放つ。この犬達にはGPS発信機が装着されているので、勢子には位置が把握でき、違う方へ犬達が行くと修正する。次から次へと寝屋を襲うが空である。
犬達が臭いを拾うと「◎○で臭いが有るぞ、気を付けて」と無線が飛んでくる。
そして「出た!16貫ぐらいの猪や。三郎さんの方へ行く」猪は一目散で逃げ、犬達が後を追う。ワンワンキャンキャンと山はひっくり返したような騒ぎになるが、一つ隣の山に居る私には聞こえない。
そして無線が「泥舟さん下や!そっちへ犬が走っている」と喚いてきた。嬉しさ半分と、責任感に緊張する。再度銃の安全offを確かめる。猪が飛び出した場所と、待っている場所をイメージして、飛び出しそうな獣道を推測する(予断なので誤る場合もある)
微かに犬の鳴声が聞こえた。猪は目の前のはずである。
出た!予測した獣道をやって来る。一度は羊歯で見えなくなったが、ガサガサとしている。見えた!!もう15メーターだ。ドーン、猪から血が噴き出た。一瞬停止するとズルズルと羊歯の中へ逃げ(?)込んだ。私はその位置から動かずに、銃の狙いを合わせている。
3分ほど経ても逃げないので、ぐっと近づいた。ポケットの小石を投げても動かないので、羊歯を分けて確認すると死んでいた。
無線機は呼び続けている。一発で終わったので、多分OKと思っているようだが、私の報告を待っている。
「泥舟です、コケました」
おめでとう、と言って貰う。勢子長が「午前はこれでやめます。皆さん揚げて下さい。三郎さんともう一人猪を吊りに行って下さい」それぞれの射手(マチ)は銃から弾を抜き、助力の者以外は山を降りる。私は手頃な雑木を切り、担い棒を作った。助力に2名が来て猪を褒め「良い所に当たっている。さすが蝦夷鹿撃ちやな」と言ってくれるが、偶然そうなったのはよく承知だ。
1シーズンに2回ぐらいしか、この様な場面はありません(はっきりと断言)98㌫は寒さに震えて、山中で精神修養です。
山から親方の家まで近いので、そのまま運んだ。臓物を抜き、心臓やレバーは欲しい者が貰う。撃った私が一番の権利だが、食べないので権利を譲った。刺身で美味しいそうだ。
前の小川で猪の体温を冷やす。これで肉質がグッとよくなる。
昼飯を食べながら、勢子さんが面白く解説してくれた。やっぱり蝦夷鹿撃ちだとヨイショしてくれ、面はゆい。えらいプレッシャーだよ。
その年の初手柄だと皆さんにカツ丼を奢る事になる。既に無線を聞いていた親方の奥さんが手配してくれていた。嬉しいような、そうでないような・・・・。
午後の狩りで鹿が出たが、親方からの無線で逃がした。
午前の猪を解体する時間が無くなるからだ。これほど鹿には魅力を感じない。
駆除中、写真を撮ると鹿は穴に埋めるチームが有ると聞いている。
私達も鹿を撃つと犬が鹿の臭いを覚えて、鹿ばかり追うようになる。こうなると鹿専門の犬になるので嫌う。走る鹿はゲームとして面白いが、撃ちたくない。食べないのに撃つのは殺生だと思っているからです。食べてあげれば供養です。
鹿猟で書くつもりでしたが、ほとんど鹿猟はやって無いのです。猪の「ついでに」獲ってしまうだけなのです。
写真は でいしゅうさんが仕留めたイノシシです。(続く)
このブログではいろいろな方に寄稿をお願いして、時々寄せて頂いたものを掲載しています。
今回は、「狩猟の趣味の深さ」という連載記事をでいしゅうさんという方にお願いいたしました。
でいしゅうさんとはネットの上で友人になりました。私自身は狩猟はしたことがありません。ただ好奇心はあります。
ですから でしゅうさんに頼んで書いて頂いているのです。毎回、今迄知らなかった面白い話を送って下さいます。
でいしゅうさんは 奥深い狩猟という趣味を生涯続けている方です。
人間性が良い方です。毎年、猟期になると狩りのための車を大型フェリーに積んで北海道に移り住みます。エゾシカを狩るためです。
その話が面白いので狩猟について気楽な連載記事を私のブログの為に書いて下さいと数週間前にお願いしました。
今日は本州でのイノシシ猟と鹿猟における勢子と撃手の緊迫した連携の見事さが書いてあります。
お楽しみ頂けたら嬉しく思います。
===でいしゅう著、「狩猟の趣味の深さ(5)勢子と撃手の緊迫した連携」 ===
日本鹿(以降は鹿)は狩猟の対象として大きなウエイトを占めてきた。一時は自然の変化により大量死(栃木県日光)もあり、その雌鹿が保護されてきた。しかし科学的見地の無い保護政策により森林の荒廃(大台ケ原)を招き、森林経営に甚大な被害を与えた。
今日では雄雌ともに狩猟の対象とされ、1日につき1頭/1人が捕獲数となっている。
しかし、ハンターの数から計算すると、今後も爆発的に増加するだろう。そして、狩猟の対象として鹿は人気が無い。猪に比べれば美味しくないからである。魚釣りで言う所の「外道」となって来ている。
「鹿猟」としての狩りを我々はしない。猪と鹿を狩るのである。
親方所有の山でグループ猟、巻狩りを行う。複数の山が含まれているが、猪や鹿の寝る場所は決まっている。風の当らない羊歯の深い場所である。
まず親方の家で打ち合わせをする。跡見(足跡や食事の跡)をした者が報告し、どの辺に居るか予測する。そして放犬の位置を決め、逃げるだろう経路も予測するから過去の経験や洞察力が必要だ。ところが我のグループのようにマチ(待ち伏せて撃つ者)が3名のグループでは予測される逃げ道全てに配置出来ない。比較的に真ん中で待つ者は勢子が通り過ぎると、最も外へ移動する。山の頂上付近は足の良い若者(50歳)が行く。私は足が悪いので道の近くと配慮してもらう。その代り、連絡を受けると車で山向こうへ走行する。こうして持ち場が決まるとスタート時刻を定め、それまでに配置に着く。猟犬もGPSを装着されると意味が分かっているので、興奮して鳴く。1年生の犬には防牙用のベストを着せる。
スタート時刻になると勢子さんが確認する。泥舟さんOKですか?一郎さんOKですか?
OKの返事が全て揃うと「では放犬します、安全に気を付けて下さい」と無線が飛ぶ。
もう誰も返事はしない。猟は始まったのである。
勢子は低位置から犬を放つ。この犬達にはGPS発信機が装着されているので、勢子には位置が把握でき、違う方へ犬達が行くと修正する。次から次へと寝屋を襲うが空である。
犬達が臭いを拾うと「◎○で臭いが有るぞ、気を付けて」と無線が飛んでくる。
そして「出た!16貫ぐらいの猪や。三郎さんの方へ行く」猪は一目散で逃げ、犬達が後を追う。ワンワンキャンキャンと山はひっくり返したような騒ぎになるが、一つ隣の山に居る私には聞こえない。
そして無線が「泥舟さん下や!そっちへ犬が走っている」と喚いてきた。嬉しさ半分と、責任感に緊張する。再度銃の安全offを確かめる。猪が飛び出した場所と、待っている場所をイメージして、飛び出しそうな獣道を推測する(予断なので誤る場合もある)
微かに犬の鳴声が聞こえた。猪は目の前のはずである。
出た!予測した獣道をやって来る。一度は羊歯で見えなくなったが、ガサガサとしている。見えた!!もう15メーターだ。ドーン、猪から血が噴き出た。一瞬停止するとズルズルと羊歯の中へ逃げ(?)込んだ。私はその位置から動かずに、銃の狙いを合わせている。
3分ほど経ても逃げないので、ぐっと近づいた。ポケットの小石を投げても動かないので、羊歯を分けて確認すると死んでいた。
無線機は呼び続けている。一発で終わったので、多分OKと思っているようだが、私の報告を待っている。
「泥舟です、コケました」
おめでとう、と言って貰う。勢子長が「午前はこれでやめます。皆さん揚げて下さい。三郎さんともう一人猪を吊りに行って下さい」それぞれの射手(マチ)は銃から弾を抜き、助力の者以外は山を降りる。私は手頃な雑木を切り、担い棒を作った。助力に2名が来て猪を褒め「良い所に当たっている。さすが蝦夷鹿撃ちやな」と言ってくれるが、偶然そうなったのはよく承知だ。
1シーズンに2回ぐらいしか、この様な場面はありません(はっきりと断言)98㌫は寒さに震えて、山中で精神修養です。
山から親方の家まで近いので、そのまま運んだ。臓物を抜き、心臓やレバーは欲しい者が貰う。撃った私が一番の権利だが、食べないので権利を譲った。刺身で美味しいそうだ。
前の小川で猪の体温を冷やす。これで肉質がグッとよくなる。
昼飯を食べながら、勢子さんが面白く解説してくれた。やっぱり蝦夷鹿撃ちだとヨイショしてくれ、面はゆい。えらいプレッシャーだよ。
その年の初手柄だと皆さんにカツ丼を奢る事になる。既に無線を聞いていた親方の奥さんが手配してくれていた。嬉しいような、そうでないような・・・・。
午後の狩りで鹿が出たが、親方からの無線で逃がした。
午前の猪を解体する時間が無くなるからだ。これほど鹿には魅力を感じない。
駆除中、写真を撮ると鹿は穴に埋めるチームが有ると聞いている。
私達も鹿を撃つと犬が鹿の臭いを覚えて、鹿ばかり追うようになる。こうなると鹿専門の犬になるので嫌う。走る鹿はゲームとして面白いが、撃ちたくない。食べないのに撃つのは殺生だと思っているからです。食べてあげれば供養です。
鹿猟で書くつもりでしたが、ほとんど鹿猟はやって無いのです。猪の「ついでに」獲ってしまうだけなのです。
写真は でいしゅうさんが仕留めたイノシシです。(続く)
