船が水に浮く。飛行船が空に浮かぶ。どちらも船や飛行船の比重が水や空気より軽いから浮くのですね。比重が軽いのですから船や飛行船は止まっていても浮いています。これは誰でも理解出来ますね。
ところが何十トンもある重い飛行機は空気をり比重が重いのに、空に浮き上がり飛んで行けます。何故でしょうか?そこで今日は、所沢航空発祥記念館へ調べに行きました。
屋外には下の写真のような、いかにも重そうな軍隊の輸送機が置いてあります。こんなにも重そうな物体が本当に空に浮き上がりことが出来るのでしょうか? とても信じられません。
記念館の一階左の方に、飛行機が浮き上がる原理を発見したスイスの物理学者、ベルヌーイの等身大の像があり、1758年に実験で証明した「ベルヌーイの定理」を説明しています。
「流速の早い流体は、遅い部分の流体より圧力が低い!」という定理です。誰にでも簡単な実験で確かめることが出来ます。下の写真はその実験です。ベルヌーイ管というガラス管の中を気体を左から入れ、右から取り出します。
このガラス管の真ん中部分は細くなっていて、其処にU字の形をした細いガラス管がつないであります。U字管の右端は太いガラス管の部分につなであります。U字管の中には色をつけた水が入っていて、U字管の左右で圧力差が出来ると色着きの水柱が上下します。
この図では左から右方向へ気体が流れているので、色着きの水柱は右が下がり、その分、左が上がります。このベルヌーイ管の水柱の左右の差は気体の流れ速度が大きくなるに従って大きくなります。
この図の左下には、飛行機の羽根の断面図があります。翼の上面が凸になっていて下面が平になっています。ですから翼の上を流れる空気の速度(線速度)が下側より大きくなります。
すると翼は上の方へ吸い上げられます。そのためには飛行機は走っていなければ浮き上げれません。止まれば墜落の始まりですね。
この現象は直感的に、あるいは体感的には理解し難い現象です。しかし誰も否定出来ない科学的定理です。ベルヌーイという人が発見した定理です。
しかしライト兄弟が始めてこの原理を応用して風洞実験を重ね、1903年にエンジン付きの飛行機を発明したのはそれから250年も後でした。
ヨットが風上45度の方向まで登れるのはやはりベルヌーイの定理のお陰です。しかしヨットが風上へ登れることはベルヌーイがこの定理を実験で発見するよりも、何百年も前から経験的に分かっていたことです。飛行機を作ったライト兄弟はベルヌーイの定理を勉強したということは強調されていません。むしろ軽くて馬力の大きなエンジンを付けたことがよく強調されています。科学の独創的な発見も重要ですが多くの人々の経験の積み重ねによる知恵も重要と思います。日本では現在でも安く、安全な航空機用エンジンが作れないのは経験の積み重ねによるノウハウの蓄積が無いからです。科学は経験で確立した技術を後から説明することしか出来ないこともあるのです。しかし科学的原理から出発した技術開発は成功の確率が高いことも一般です。ここに技術と科学の本質的な違いがあるのです。
皆様は、如何お考えでしょうか? (終わり)