アメリカ文化の特徴は、Do it yourself ! である。それは自分自身でしなさい!という意味の文章である。しかし、それには深い意味が込められている。ヨーロッパ文化ではどの分野でも専門家が独自の権威を持っていて、素人の立ち入りを厳しく禁じている。アメリカでは可能な限り専門家の権威を低く見て、平等な人間関係を作ろうとする。平等の関係を作ることへ神経質になっているようにさえ見える。そんなにまで平等でなくてもい良いのではないか?と呆れることが多い。
素人が大工仕事をする。素人が配管工の仕事をする。車の修理もする。家や飛行機まで自分で作る。素人でも安全に、安くできるようにシステムが出来上がっている。
アメリカは人件費が高いから自分でするのだ。と、日本人は理解するが、それは
Do it yourself ! の表面的な意味しか分かっていないのだ。
自分で作ったものの安全性は自分の責任である。自分の安全は自分で守るという社会なのだ。医者とか弁護士だけは専門家の制度が確立しているが、その他の分野には規制がゆるやかである。
筆者は50年以上も前の高校時代に、「木工クラブ」へ入っていた。そこで電動ドリルで木材へ穴を空けることを覚えた。鋸で板をタテに切る方法を覚えた。カナヅチで釘を真っ直ぐに打ち込むことを覚えた。ところがカンナとノミの使い方は覚えなかった。
それが何十年も後になって、山林の小屋の趣味を豊かに彩っている。三畳のバンガローや2畳の風呂場を作った。八畳の焚き火小屋も作った。木製の机や椅子も作った。
しかし、カンナとノミを使えないので仕上がりの見かけが悪い。素人の作品で、とてもみっともなくて東京では使えない。山小屋の回りも何か貧乏くさくみえるので最近はすべて撤去してしまった。そういうものは作っている間が面白いのだ。
最近、小屋の近所に見事なログハウスが出来ている。先日、可愛い子供が2人いる若夫婦に会った。ご主人がこともなげに言う、「このログハウスは自分達で作ったのです」と。
吃驚して詳しく聞いてみた。アメリカから輸入した家で、すべての材木に番号が打ってあって、順序良く積んで、組み合わせて行ったそうだ。間違わないで組み上げて行くと、素人でも完成できるようなキットになっている。材木は細めの丸太を平らに削ったもので大人2人で持ち上げられる重さになっている。ただし屋根の頂上の梁や急勾配の屋根の骨組みだけは本職に作って貰ったそうだ。子供も手伝って一家4人で少しずつ完成していったという。
勿論、立派な薪ストーブもついている。排煙の再燃焼・浄化装置つきなので煙も出ないという。先日のブログでは浄化装置の開発・普及が期待されると書いたが、すでに実用されている。
山林の中の小屋の近所で見ていると、最近の若い夫婦は何でも自分で作っている。猿よけの大きな金網小屋を作って、美しい花々を咲かせている。庭には風流なベンチや野外テーブルが作ってある。薪ストーブのための薪を綺麗に切りそろえてキチンと積んである。週末になると、東京の自宅から山林の中のログハウスへ来て子供達が自然の中で遊ぶ。
10年後の日本では、このように週末に過ごす別荘が、海辺や山林の中に、今まで以上の速度で増え続けて行くと信じている。少なくとも山梨県の北杜市の山林の中を車で散策していると小奇麗な別荘がどんどん増えている。その幾つかは自分で組み立てた別荘なのだ。それこそ、Do it yourself ! である。(続く)
写真2枚の出典:http://kinoie.co.jp/log/fin.html