焼酎のオンザロック

ただの好み。

外科医の世紀、帝国

2013年09月29日 17時12分35秒 | 本や映画、音楽
 写真は久々に買った単行本というか重たい本である。ひとつは外科医の世紀・近代医学のあけぼの、もうひとつは外科医の帝国・近代外科のいしずえ。後の方が上しかないのはまだ出版されていないからである。しかし元々は前者が第一部、後者の上下で第二部という構成らしい。

 元々は「外科の夜明け」という題名で一度翻訳出版されており、それはこの「あけぼの」の方だけであった。昔文庫版を古本屋で偶然、何も知らずに100円か200円で買ったのだが非常に面白くて二度目に読んでいるときに酔っ払って電車の中で失くしたのであった。情けない、もう十年以上前の話であるが。

 それ以来探していたのだが古本屋で見つからず(絶版である)復刻されず、アマゾンでは3000円とかで持ち主が売りに出したりしていたが、漸く新訳で出版された。しかも第二部(今は上巻だけ)も出てくるとは。しかしちょっと高い本であった。

 何が面白いといって外科という分野がいかに発達してきたかが臨場感溢れて目前に展開されるのである。わずか150年ほど前の外科医は筋骨隆々で冷酷であり、泣き喚く患者を押さえつけて怪我した手足を鋸で切り取り、舌癌にかかった舌をヤットコで引っ張り出して鋏で切り取っていたのだった。麻酔の無い時代である。

 麻酔の発見は1846年アメリカ、そこから外科は漸く医学らしくなっていく。しかしまだ細菌というものが発見されていなかった時代。手術室から悲鳴は無くなったが手術後の感染症は克服できず患者達は膿血症や敗血症で死んでいった。何しろ手も洗わずに手術をするし膿で汚れた包帯を使いまわしたりしていたのだから悲惨である。

 ようやく細菌というものの存在が認められ所謂手術熱というものは一掃されてゆく。

 この麻酔と消毒という今では当たり前のことが普及するまでにいかに大変だったか、古い権威はこぞって反論し若い医者の発見を潰しにかかるのだから、何事も進歩というのは犠牲が大きい。麻酔も消毒の必要性も普通の街医者が発見、謂わば執念に燃えて自分の体で実験して発表しても大学等の権威者は馬鹿にして取り上げないのである。

 そしていざ効果が本物であると認められると最初に発見したのは誰かという名誉争いや特許争いが起こる。大体本当の功労者は隅に追いやられるようである。

 結石の摘出、出産、帝王切開、胃の切除、心臓の手術、甲状腺摘出等全ての手術に歴史があり一歩一歩しか進歩しないし常に過去の因習、宗教的信念等が邪魔をする歴史であった。

 ま、とにかく感動の歴史である。一読の価値あり。




 
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2 コメント

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すごいですね (匿名課長)
2013-10-03 22:12:56
さすが、YAMAさんの読まれる本はレパートリーが広いですね。
難しそうな本ですが、YAMAさんのブログを読んでいたら、自分も読みたくなりました。
バリバリの文系の私でもついていけますかね?
自分はミステリー物ばかり読んでいるので。

本日、P時代の直属の上司K課長に会いました。
同じ会社なので、栃木から神奈川まで来ていました。
一緒にランチをしました。
とてもなつかしかったです。

また、集まりたいですね。
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Unknown (YAMA)
2013-10-19 17:58:55
 この本は面白いですし特に理科系の知識は不要です。是非お試しを。

 年内に一度集まりたいですね!!!!!

 
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