ドーナツ畑の風に吹かれて

おかわり自由のコーヒーを飲みながら、廻る季節をながめて、おもったこと。

山椒魚

2007-12-12 00:51:59 | 日記
 腹の底に棲む山椒魚がゆらりと寝返りをうつ。

 底の底の方にいるので普段は存在を認識していないけれど、たまにちょっとみじろぎをする。その動作は微細で遠くて見過ごしがちだが、確実にわたしをうごかす。そっと、ゆっくり、だけど腹の底から確実に。
 一人暮らしをはじめた時とか、そうだった。一度やつが動いたら、どんなに時間がかかっても、確実にわたしはそうするのだ。一度その気持ちがめばえたら。

 山椒魚が、旅をしたいとおもいはじめている。大学生の時、京都に一人旅した時に自分は一人旅に向いていないとつくづくおもったことであるのに、なんだかふつふつと旅がしたい。北の方へ。観光地とかはどうでもよくて、ただ海とか山とかのそばを電車で延々移動し続けるだけでもいい。
 すぐに旅の手配をはじめるような種類の情熱ではない。けれど、多分わたしはいつか旅をするだろう。山椒魚が一度みじろぎをはじめたら、それは腹の底でいつまでも消えずにたゆたい、いつか現実のものとなるのだ。

 人の意志なんじゃないだろうか。それは情熱とは対極にあるような気がする。