[キックオフ前の雑感]
8チームで構成されるリーグ戦は全部で28試合。その中には、優勝を決める試合もあれば、最下位が決まる試合もある。だが、ひとつたりとて意味のない試合はない。出場する選手達にとっては、どの試合も大切なはず。だから、すべての試合を観ることを目標に毎年観戦を続けている。もちろんそれは物理的に不可能なのだが、理想は理想として大切にしたいと思う。
しかしながら、正直に告白すると、どうしても各試合に対する想い入れの強さには違いがある。この日の対戦カードである流経大と中央大の試合(それも熊谷ラグビー場での)は、そういった意味では最上位にランクされる試合だ。なぜなら、1997シーズンの10月12日に熊谷ラグビー場で流経大が中央大を相手に挙げた1部昇格初勝利の瞬間に立ち会ったことが、「熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦」を産むことになり、このブログを立ち上げるに至ったことの原点となっているから。翌年の中央大の激烈なリベンジも含めて、両者の闘いはリーグ戦Gでももっとも熱いものとして記憶に残るものが多い。
時は流れ、佳きライバルとも目された両者の力関係には明確な違いが見られるようになった。流経大は1部昇格から苦節10数年を経てついに頂点を極めるに至ったが、中央大は大学選手権への出場機会が減っただけでなく、何度か入替戦を経験するといった低迷状態に陥っている。かつての死闘の歴史は遠い昔の出来事となってしまった感があり、個人的にも寂しい想いがある。流経大の躍進は嬉しいが、中央大がそういった低迷状態にあることが歯がゆいのだ。
さて、流経大はディフェンディングチャンピオンとしての連覇が今シーズンの目標となる。もちろんその先にある大学選手権での国立競技場進出も含めて。だが、現実的には昨シーズンの主力メンバーの多くが卒業したこともあり、今シーズンも連覇をめざすと言うよりは再チャレンジといった方がしっくりくる。どうしても、未だに東海大の連覇が続いているような錯覚状態から抜け出すことが出来ないでいる。一方の中央大も昨シーズンは入替戦に回ったとはいえ、チーム力は確実に上がってきており、今シーズンは上位浮上への期待が高まっている。
まずは、気になる流経大のメンバーを確認。FL7の辻と今期からNo.8の高森以外はリフレッシュした顔ぶれが並ぶ。普通なら、前の6人が替わってしまえば、FWは再構築と考えた方がよさそうだ。フシマロヒがLOに入ったことで核はできているが、パワフルになってきている中央大に対して不安がないと言ったらウソになる。SHの児玉主将が引っ張るBK陣は、結局はオペティが司令塔を務めることになったようだ。矢次はFBから本来のCTBに上がり藤澤とコンビを組む。そして、FBには当初はSOでの先発が予想された期待のルーキー合谷がスタメンで出場となり、エースのリリダム・ジョセファがベンチスタート。層の厚さというよりも、もったいなさを感じさせる選手起用だ。
対する中央大は、とくにBKに大型選手を揃えたパワフルな布陣となっている。FWも流経大がやや小型化したこともあり、十分パワーで対抗できそうな顔ぶれと言えそう。中でも期待の選手はセブンズの日本代表としても活躍しているFBの羽野。ただ、これも個人的な感想だが、東日本大学セブンズでトライを量産して見せた圧倒的な存在感からも、できるだけ羽野がボールを持つ機会を多くした方がいいように思われる。去年はFBでノートライに終わっているのでよけいにそう感じるのだが、今シーズンはどうだろうか。場所が熊谷ラグビー場ということもあり、ちょっとノスタルジックな気分に漬りながらキックオフを待った。
[前半の闘い]
先週の感想で書き忘れたが、今期から熊谷ラグビー場には専属のアナウンサーが試合進行役を務めている。反則なども丁寧に分かりやすく説明がなされるので良い試みだと思う。失礼ながら昨年までの原稿棒読み型の選手紹介に比べたら格段の進歩。本日も、そんなメリハリのあるアナウンスに乗せられる形で、メインから向かって左側に陣を取った中央大のキックオフで元気よく試合が始まった。
開始早々から、両チームのFWによる激しい肉弾戦が展開される。過去のイメージで言えば流経大のFWの方が強力に思われるのだが、パワーアップした中央大FWも負けていない。ブレイクダウンの攻防でも健闘し、ターンオーバーに成功するシーンもかなり観られた。ただ、両者の違いは組織的な動きにあり、この点は流経大に明らかに分がある。流経大は効率よく前にボールを運ぶことが出来るのに対し、中央大は継続はできても手詰まりになり、ノットリリースやオーバー・ザ・トップで攻撃はあえなくストップという状況が目立った。この点が勝敗を分ける要素のひとつになったとも言えそうだ。
話をピッチ上に戻す。開始から4分にまず中央大が先制のチャンスを得る。やや右の30mの位置からSO室屋がPGを狙うがやや右に外れる。9分には中央大がスクラムからの8→9を起点としてライン参加したFB羽野がショートサイドを駆け抜けて大きくゲインする場面も見られたが、ラックでの反則でチャンスを潰す。そんな激しい攻防が続く中で10分、今度は流経大が中央大陣10mでのラインアウトを起点とした攻撃からチャンスを掴む。モールで前進した後、ラックからオープンに展開して再びFWでボールを前に運ぶ。ここではHO植村がBK選手ばりの絶妙のパスダミーで大きくゲインして見せ場を作るなどして、中央大陣22mに入ったところで中央大が反則。ゴール前でのラインアウトから得意のモールを形成して押し込み、12分に流経大がまず5点を先制した。
その後も両チームの激しい攻防が続く。22分には流経大のFB合谷が正面24mのPGを決めてリードを8点に拡げるといった具合に、確実にリードを拡げる流経大だが、両者の激しい攻防による拮抗した展開が続く。流経大がFWのサイド攻撃中心でボールを確実に前に運ぶのに対し、中央大はオープンにワイドに展開してダイナミックにボールを動かす。中央大というと、どうしても「単独行」のイメージが付きまとうのだが、羽野以外に突出した選手はいないながらもバランスのいいアタックができるBKラインが出来ている。チーム全体で見ても、去年のように2次攻撃になるとBKラインに並ぶのはFWの前5人でどん詰まりといった状況がなくなったのは大きな進歩と言える。
ただ、中央大のアタックで残念なのは、BKラインでのアタックにエース羽野が絡む形がなかなか生まれないこと。羽野がボールを持ってスタンドを沸かせるのは、流経大のキックに対するカウンターアタックの局面なのだが、ここは流経大がしっかり心得ていて、徹底マークでビッグゲインを許さない。あくまでも個人的な意見だが、羽野はロケットの1段目よりも、2段目あるいは3段目に位置した方が機能するのではないだろうか。だから、FBよりもWTBに位置していい形で頻繁にボールが渡るようにした方が相手にとって怖い存在になるし、中央大の得点力も上がるような気がする。
流経大リードの8-0から得点板が動かず、膠着状態でどんどん時計が進む中、前半終了間際の43分、中央大に待望の初得点が生まれる。右WTB松井が逆風をものともせず、正面45mのPGを決めて3点を返した。プレースキッカーの吉原の不在(おそらく負傷)が心配された中央大だったが、そんな不安を払拭するような見事なキックだった。
[後半の闘い]
本日の熊谷ラグビー場は日が陰っていることもあり涼しく感じられる。後半は前半から吹いていた南風が強くなり、中央大にとっては追い風となることが期待される状況。流経大がSOオペティを中心にFWで手堅くボールを運ぶ戦術をとっていることもあり、前半は点差通りのほぼ5分の展開だった。果たして、後半は中央大が風を味方にして逆転に成功することができるだろうか。
だが、後半開始直後から試合を優勢に進めたのは流経大の方。3分、中央大22m付近で得たラインアウトからサイドアタックを繰り返してFL今井がボールを大きく前に運びラック。辻、高森と言ったユース代表コンビに注目が集まりがちな流経大だが、6番の今井も要注目選手だと思う。流経大は中央大ゴール目前まで迫るもののパイルアップ。流経大もなかなか追加点が奪えない。流経大が組織的に前に出るディフェンスでプレッシャーをかけてゲインをなかなか許さないのに対し、中央大は懐の深いディフェンスで対抗する形で、両者とも譲らない緊迫した展開が続く。
そんな中、9分に中央大が絶好のチャンスを掴む。自陣10m付近で得たPKからタッチを狙ったボールが流経大陣22mまで到達。ここは、ラインアウトからのモールを押し込んで確実にトライを奪いたい所。だったが、何と、流経大の巧みなモールディフェンスに逢い、モールを押し戻されてしまう。16分にも同じような状況でのチャンスを活かすことが出来ずに、中央大のゼロ(トライ)行進は続く。時間は前後するが、流経大は10分に満を持してオペティに代わりWTBリリダムを投入。この交替により、FB合谷がSOに、CTB矢次がFBにそれぞれポジションチェンジした。
流経大のリードが僅か5点の緊迫した状態が続く中、その流経大に待望の追加点が生まれる。22分、流経大は中央大陣22m内でラインアウトからモールで前進しラック。ここからオープンに展開したところで、FB合谷が中央大DFにぽっかり穴が開いたのを見逃さなかった。トライの後のGKも成功して15-3と流経大はリードを12点に拡げた。オペティがSOだった時間帯と比べてボールがオープンに動くようになったことから、ゲームによっては合谷がSOで先発する形が出てくるかも知れない。流経大の選択肢は確実にひとつ増えたようだ。
中央大がなかなか得点を奪えない中、34分に流経大にダメ押し点が入る。中央大に反則が増えていく中で、No.8高森がゴール前で得たPKから速攻を仕掛けてトライ。ゴールも決まって22-3となり、ここで勝負が決まった。流経大は、このままノートライで終わりたくない中央大の猛攻を凌ぎきりノーサイド。中央大の予想を超える健闘により後半の20分過ぎまで流経大のリードは僅か5点という締まったゲーム展開となったことが強く印象に残る好ゲームだった。
[試合後の雑感]
流経大は、FWの前5人とFLの6人が総入れ替えに近い状態となった不安の旅立ちだったが、何とか中央大を振り切り、連覇に向けてまずまずの船出となった。ワイドな展開は封印に近くて両WTBが殆どボールを持つ機会がなく、流経大の得点力に不安を覗かせた形だが、FWとBKのコンビネーションが合ってくれば得点力は上がっていくものと思われる。セットプレーでは中央大に押し込まれる場面も見られたが、中央大のパワフルな攻撃を組織的な防御で耐え凌いだ点は評価できる。BKラインの構成はまだ流動的と思われるが、リリダムがトライを量産する形が確立できれば面白さも増していくはずだ。
中央大は大健闘と言える。少なくとも、シーズンスタート時にここまでチームができあがった中央大観たのは初めてのような気がする。FWとBKのチーム全体としてのバランスもよく、チーム力のアップに向けて大きな期待が持てそうだ。ただ、残念だったのは、せっかく攻めても、また、しっかり守っても最後はオフサイドなどの反則で相手に簡単にチャンスを与えてしまったこと。FWの組織的な動き方など、敗戦から学ぶことはいろいろとあるはずで、今後の進化が楽しみになってきた。
過去にいろんな想い入れが詰まった両チームのマッチアップだが、激しい攻防とは裏腹に、自分でも不思議なくらいに冷静に試合を観ることができた。ここには中央大のチーム力アップが大きく影響しているような気がする。両チームの関係は新たなステージに進んだと言ってもいいかもしれない。熱き感動とは少し違うが、感慨深い想いを禁じ得ない。とくに過去、中央大には厳しいことばかり書いてきた記憶があるので、中央大に進化の兆しがはっきりと見えてきたことがとても嬉しい。
8チームで構成されるリーグ戦は全部で28試合。その中には、優勝を決める試合もあれば、最下位が決まる試合もある。だが、ひとつたりとて意味のない試合はない。出場する選手達にとっては、どの試合も大切なはず。だから、すべての試合を観ることを目標に毎年観戦を続けている。もちろんそれは物理的に不可能なのだが、理想は理想として大切にしたいと思う。
しかしながら、正直に告白すると、どうしても各試合に対する想い入れの強さには違いがある。この日の対戦カードである流経大と中央大の試合(それも熊谷ラグビー場での)は、そういった意味では最上位にランクされる試合だ。なぜなら、1997シーズンの10月12日に熊谷ラグビー場で流経大が中央大を相手に挙げた1部昇格初勝利の瞬間に立ち会ったことが、「熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦」を産むことになり、このブログを立ち上げるに至ったことの原点となっているから。翌年の中央大の激烈なリベンジも含めて、両者の闘いはリーグ戦Gでももっとも熱いものとして記憶に残るものが多い。
時は流れ、佳きライバルとも目された両者の力関係には明確な違いが見られるようになった。流経大は1部昇格から苦節10数年を経てついに頂点を極めるに至ったが、中央大は大学選手権への出場機会が減っただけでなく、何度か入替戦を経験するといった低迷状態に陥っている。かつての死闘の歴史は遠い昔の出来事となってしまった感があり、個人的にも寂しい想いがある。流経大の躍進は嬉しいが、中央大がそういった低迷状態にあることが歯がゆいのだ。
さて、流経大はディフェンディングチャンピオンとしての連覇が今シーズンの目標となる。もちろんその先にある大学選手権での国立競技場進出も含めて。だが、現実的には昨シーズンの主力メンバーの多くが卒業したこともあり、今シーズンも連覇をめざすと言うよりは再チャレンジといった方がしっくりくる。どうしても、未だに東海大の連覇が続いているような錯覚状態から抜け出すことが出来ないでいる。一方の中央大も昨シーズンは入替戦に回ったとはいえ、チーム力は確実に上がってきており、今シーズンは上位浮上への期待が高まっている。
まずは、気になる流経大のメンバーを確認。FL7の辻と今期からNo.8の高森以外はリフレッシュした顔ぶれが並ぶ。普通なら、前の6人が替わってしまえば、FWは再構築と考えた方がよさそうだ。フシマロヒがLOに入ったことで核はできているが、パワフルになってきている中央大に対して不安がないと言ったらウソになる。SHの児玉主将が引っ張るBK陣は、結局はオペティが司令塔を務めることになったようだ。矢次はFBから本来のCTBに上がり藤澤とコンビを組む。そして、FBには当初はSOでの先発が予想された期待のルーキー合谷がスタメンで出場となり、エースのリリダム・ジョセファがベンチスタート。層の厚さというよりも、もったいなさを感じさせる選手起用だ。
対する中央大は、とくにBKに大型選手を揃えたパワフルな布陣となっている。FWも流経大がやや小型化したこともあり、十分パワーで対抗できそうな顔ぶれと言えそう。中でも期待の選手はセブンズの日本代表としても活躍しているFBの羽野。ただ、これも個人的な感想だが、東日本大学セブンズでトライを量産して見せた圧倒的な存在感からも、できるだけ羽野がボールを持つ機会を多くした方がいいように思われる。去年はFBでノートライに終わっているのでよけいにそう感じるのだが、今シーズンはどうだろうか。場所が熊谷ラグビー場ということもあり、ちょっとノスタルジックな気分に漬りながらキックオフを待った。
[前半の闘い]
先週の感想で書き忘れたが、今期から熊谷ラグビー場には専属のアナウンサーが試合進行役を務めている。反則なども丁寧に分かりやすく説明がなされるので良い試みだと思う。失礼ながら昨年までの原稿棒読み型の選手紹介に比べたら格段の進歩。本日も、そんなメリハリのあるアナウンスに乗せられる形で、メインから向かって左側に陣を取った中央大のキックオフで元気よく試合が始まった。
開始早々から、両チームのFWによる激しい肉弾戦が展開される。過去のイメージで言えば流経大のFWの方が強力に思われるのだが、パワーアップした中央大FWも負けていない。ブレイクダウンの攻防でも健闘し、ターンオーバーに成功するシーンもかなり観られた。ただ、両者の違いは組織的な動きにあり、この点は流経大に明らかに分がある。流経大は効率よく前にボールを運ぶことが出来るのに対し、中央大は継続はできても手詰まりになり、ノットリリースやオーバー・ザ・トップで攻撃はあえなくストップという状況が目立った。この点が勝敗を分ける要素のひとつになったとも言えそうだ。
話をピッチ上に戻す。開始から4分にまず中央大が先制のチャンスを得る。やや右の30mの位置からSO室屋がPGを狙うがやや右に外れる。9分には中央大がスクラムからの8→9を起点としてライン参加したFB羽野がショートサイドを駆け抜けて大きくゲインする場面も見られたが、ラックでの反則でチャンスを潰す。そんな激しい攻防が続く中で10分、今度は流経大が中央大陣10mでのラインアウトを起点とした攻撃からチャンスを掴む。モールで前進した後、ラックからオープンに展開して再びFWでボールを前に運ぶ。ここではHO植村がBK選手ばりの絶妙のパスダミーで大きくゲインして見せ場を作るなどして、中央大陣22mに入ったところで中央大が反則。ゴール前でのラインアウトから得意のモールを形成して押し込み、12分に流経大がまず5点を先制した。
その後も両チームの激しい攻防が続く。22分には流経大のFB合谷が正面24mのPGを決めてリードを8点に拡げるといった具合に、確実にリードを拡げる流経大だが、両者の激しい攻防による拮抗した展開が続く。流経大がFWのサイド攻撃中心でボールを確実に前に運ぶのに対し、中央大はオープンにワイドに展開してダイナミックにボールを動かす。中央大というと、どうしても「単独行」のイメージが付きまとうのだが、羽野以外に突出した選手はいないながらもバランスのいいアタックができるBKラインが出来ている。チーム全体で見ても、去年のように2次攻撃になるとBKラインに並ぶのはFWの前5人でどん詰まりといった状況がなくなったのは大きな進歩と言える。
ただ、中央大のアタックで残念なのは、BKラインでのアタックにエース羽野が絡む形がなかなか生まれないこと。羽野がボールを持ってスタンドを沸かせるのは、流経大のキックに対するカウンターアタックの局面なのだが、ここは流経大がしっかり心得ていて、徹底マークでビッグゲインを許さない。あくまでも個人的な意見だが、羽野はロケットの1段目よりも、2段目あるいは3段目に位置した方が機能するのではないだろうか。だから、FBよりもWTBに位置していい形で頻繁にボールが渡るようにした方が相手にとって怖い存在になるし、中央大の得点力も上がるような気がする。
流経大リードの8-0から得点板が動かず、膠着状態でどんどん時計が進む中、前半終了間際の43分、中央大に待望の初得点が生まれる。右WTB松井が逆風をものともせず、正面45mのPGを決めて3点を返した。プレースキッカーの吉原の不在(おそらく負傷)が心配された中央大だったが、そんな不安を払拭するような見事なキックだった。
[後半の闘い]
本日の熊谷ラグビー場は日が陰っていることもあり涼しく感じられる。後半は前半から吹いていた南風が強くなり、中央大にとっては追い風となることが期待される状況。流経大がSOオペティを中心にFWで手堅くボールを運ぶ戦術をとっていることもあり、前半は点差通りのほぼ5分の展開だった。果たして、後半は中央大が風を味方にして逆転に成功することができるだろうか。
だが、後半開始直後から試合を優勢に進めたのは流経大の方。3分、中央大22m付近で得たラインアウトからサイドアタックを繰り返してFL今井がボールを大きく前に運びラック。辻、高森と言ったユース代表コンビに注目が集まりがちな流経大だが、6番の今井も要注目選手だと思う。流経大は中央大ゴール目前まで迫るもののパイルアップ。流経大もなかなか追加点が奪えない。流経大が組織的に前に出るディフェンスでプレッシャーをかけてゲインをなかなか許さないのに対し、中央大は懐の深いディフェンスで対抗する形で、両者とも譲らない緊迫した展開が続く。
そんな中、9分に中央大が絶好のチャンスを掴む。自陣10m付近で得たPKからタッチを狙ったボールが流経大陣22mまで到達。ここは、ラインアウトからのモールを押し込んで確実にトライを奪いたい所。だったが、何と、流経大の巧みなモールディフェンスに逢い、モールを押し戻されてしまう。16分にも同じような状況でのチャンスを活かすことが出来ずに、中央大のゼロ(トライ)行進は続く。時間は前後するが、流経大は10分に満を持してオペティに代わりWTBリリダムを投入。この交替により、FB合谷がSOに、CTB矢次がFBにそれぞれポジションチェンジした。
流経大のリードが僅か5点の緊迫した状態が続く中、その流経大に待望の追加点が生まれる。22分、流経大は中央大陣22m内でラインアウトからモールで前進しラック。ここからオープンに展開したところで、FB合谷が中央大DFにぽっかり穴が開いたのを見逃さなかった。トライの後のGKも成功して15-3と流経大はリードを12点に拡げた。オペティがSOだった時間帯と比べてボールがオープンに動くようになったことから、ゲームによっては合谷がSOで先発する形が出てくるかも知れない。流経大の選択肢は確実にひとつ増えたようだ。
中央大がなかなか得点を奪えない中、34分に流経大にダメ押し点が入る。中央大に反則が増えていく中で、No.8高森がゴール前で得たPKから速攻を仕掛けてトライ。ゴールも決まって22-3となり、ここで勝負が決まった。流経大は、このままノートライで終わりたくない中央大の猛攻を凌ぎきりノーサイド。中央大の予想を超える健闘により後半の20分過ぎまで流経大のリードは僅か5点という締まったゲーム展開となったことが強く印象に残る好ゲームだった。
[試合後の雑感]
流経大は、FWの前5人とFLの6人が総入れ替えに近い状態となった不安の旅立ちだったが、何とか中央大を振り切り、連覇に向けてまずまずの船出となった。ワイドな展開は封印に近くて両WTBが殆どボールを持つ機会がなく、流経大の得点力に不安を覗かせた形だが、FWとBKのコンビネーションが合ってくれば得点力は上がっていくものと思われる。セットプレーでは中央大に押し込まれる場面も見られたが、中央大のパワフルな攻撃を組織的な防御で耐え凌いだ点は評価できる。BKラインの構成はまだ流動的と思われるが、リリダムがトライを量産する形が確立できれば面白さも増していくはずだ。
中央大は大健闘と言える。少なくとも、シーズンスタート時にここまでチームができあがった中央大観たのは初めてのような気がする。FWとBKのチーム全体としてのバランスもよく、チーム力のアップに向けて大きな期待が持てそうだ。ただ、残念だったのは、せっかく攻めても、また、しっかり守っても最後はオフサイドなどの反則で相手に簡単にチャンスを与えてしまったこと。FWの組織的な動き方など、敗戦から学ぶことはいろいろとあるはずで、今後の進化が楽しみになってきた。
過去にいろんな想い入れが詰まった両チームのマッチアップだが、激しい攻防とは裏腹に、自分でも不思議なくらいに冷静に試合を観ることができた。ここには中央大のチーム力アップが大きく影響しているような気がする。両チームの関係は新たなステージに進んだと言ってもいいかもしれない。熱き感動とは少し違うが、感慨深い想いを禁じ得ない。とくに過去、中央大には厳しいことばかり書いてきた記憶があるので、中央大に進化の兆しがはっきりと見えてきたことがとても嬉しい。