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東海大学 vs 法政大学(関東大学リーグ戦G1部-2017.09.24)の感想

2017-10-07 00:36:20 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


リーグ戦Gの本格的な観戦を私が始めた1997シーズンは東海大にとってのひとつのラストシーズンだった。その年は1部リーグで最下位となり、入替戦にも敗れて2部に降格。当時のユニフォームは現在のようなマリンブルーではなく、典型的な段柄模様。トリッキーなラグビーで注目を集める部分はあったものの、確実性を欠くラグビーで降格もやむなしと言った感じ。その後、東海大は2シーズンを2部リーグで戦った後、2000シーズンに1部に返り咲き現在に至っている。

今やリーグ戦1部で押しも押されぬトップチームとなった東海大。しかし、1部昇格後も苦難は続く。2年連続で拓大と戦った入替戦はあわや再降格の連続で、2強の関東学院と法政にはまったく歯が立たなかった。渾身のタックルに次ぐタックルも実らずに失点を重ね、アタックでも決定力不足に泣いて防御を打ち破れない。頑張りがまったく通じない大量失点負けが続く状況に、ゲーム終了後は東海大が2強に勝てる日はやって来るのだろうか?という絶望感が競技場全体に漂っていたことを思い出す。

時は流れて、今や立場は完全に逆転している。関東学院や法政が東海大を見上げるような状況はかつては想像できなかったこと。東海大は2000シーズンからずっと木村監督がチームを率いているのに対し、法政はその間に指導者が何人も入れ替わっている。東海大が20年近い時間にわたって積み上げてきたものは、選手達の身体の厚みの違いが物語る。時間をかけて苦労を重ねながら作り上げてきた組織は、簡単には崩れないことを教えてくれる。

さて、緒戦で流経大と派手な撃ち合いを演じた末に敗れた法政。ディフェンスに課題を残した戦いではあったものの、アタックでは超攻撃的なラグビー復活を予感させる変化を見せた。東海大を相手にまずはアタックがどれだけ通じるかもさることながら、法政の持ち味とするアタッキングラグビー復活はあるのかも見極めたいところ。東海大も緒戦は前半の半ばまでとはいえ、日大と5分の戦いを演じる、まだまだ盤石とは言えないスタートだった。はたして、希望と不安の対決はどんな結果になったのか。



◆前半の戦い/目の覚めるような攻撃ラグビーで先制し、幸先良くスタートを切った法政だったが

キックオフからいきなりギアをトップに入れたかのように、法政のパス回しを主体としたスピーディーなアタックが冴え渡る。キックは封印し、しかもワイドな展開よりも短いパスを使い、ループパスなどを使って内に切れ込む鋭角的なアタックは緒戦の流経大戦でも見せたもの。やはり、今シーズンの法政はこのスタイルで攻め続けるであろうことがはっきりした。いつも試合への入りがよくない東海大だが、そうでなくてもこのアタックを受けてしまったら粘り強く守り続けるしかない。

果たして、開始から僅か2分、法政がカウンターアタックからFB萩原が東海大の防御を破り素早く右に展開。右サイドに位置した新人で東海大仰星高校出身の根塚弟(兄は法政の3年生でSH)がゴールラインまで到達する。そして、気が付いたら見事なノーホイッスルトライだった。流経大戦で7/7と絶好調だった萩原は、右サイドからのGKも難なく決めて法政が幸先良く7点を先制。それにしても、第1試合とは打って変わって、ビデオを1.3倍速にしたかのようなスピーディーな攻守の切り替えは見ていて清々しい。このまま法政がトライを重ねたら、もしかしてもあり得ると思わせるような序盤戦だった。



その後も法政の切れ味鋭いアタックの連続にスタンドは沸きに沸く。しかし、東海大も落ち着いている。法政のアタックにも怯むことはなく、選手達は前を見てしっかりと止め続ける。FBに野口主将がスタメン復帰したことも大きい。ブレイクダウンで厳しいプレッシャーに晒され続けたこともあり、法政は溜まらず反則を犯す。ボールを持てば、FWのパワーとBKのスピードで力強く漸進できるのが東海大の強み。11分、東海大は法政ゴール前ラインアウト(法政ボール)のこぼれ球を拾ってワイドな展開から、一瞬出来たFW周辺のギャップをFB野口が鋭く突いてゴールポスト中央までボールを運んだ。GK成功で7-7となったところで試合が落ち着く。

続く14分、東海大は意表を突くクイックスローを起点としてパスを受けたLO川瀬がスルスルとタッチライン際を抜けてトライ。巧みなチェンジオブペースで東海大が完全に主導権を握る。法政もキックオフで去年までのチームとはひと味違うことを見せる。浅めでタッチライン際を狙ってキックしたボールはピンポイントでパワーのある斉田に渡るが惜しくもタッチへ。ここ数年のチームは何故できなかったのかというプレーの連続は、法政のアタックを見応えあるものにする。返す返すも東海大にエンジンがかかる前に2の矢、3の矢が打てなかったことが惜しまれる。

22分、東海大は法政ゴール前のラインアウトからFWでボールキープしながら前進しトライ。パワフルなアタックではあるが、不思議とごり押し感がないのは、それだけパワーの差があると言うことだろうか。力尽くではなくても確実に前進し続けられるのは驚き。31分には同じくゴール前でのラインアウトからモールを形成して前進しテビタがトライ。直後の34分、今度は法政が自陣ゴールを背にしたラインアウトで一瞬の隙を突かれてラックでのスティールを許す。ボールは素早くオープンに展開されてWTB清水がトライ。アタックでのミスがことごとく失点に繋がってしまう法政は為す術がない。その後は両チームが一進一退の攻防が続くものの、無得点のまま前半が終了した。



後半の戦い/終始安定したパフォーマンスを見せた東海大が法政を無得点に抑え圧勝

序盤に先制点を奪った頃の勢いも何処へやらの法政。ミスがことごとく失点に繋がるような状況に、前半の後半は攻め疲れがどっと出てきてしまったのかも知れない。気を取り直して、後半も先に点を取って少しでも点差を縮めたいところ。後半もキックオフから時間を忘れるようなスピーディな展開でスタンドの両校のファンを唸らせる。しかし、ここでもミスが明暗を分ける。5分、東海大は法政のノックオンで得た法政陣10m/22m右サイドのスクラムからフラットなパスで左に展開。オフロードパスを受けたCTB池田が巧みにギャップを突いてトライを奪う。本日は12番の池田だが、去年は13番を付けて試合に出ることが多く、貴重なユーティリティセンターだと思う。

フラットなパスにオフロードもまじえた東海のパスのメニューは豊富。法政も過去数年とは明らかに違った形でパスを繋いで攻めるものの、ラインが深めで必ずしも有効なゲインに繋がらないのが痛い。東海大の前に出るプレッシャーがきついためやむを得ないと言えるが、浅いラインを交えることが出来れば破壊力は確実に増しそうな気がする。しばらくは我慢と言ったところだろうか。確実に加点していく東海大だが、前にも書いたように、パワーで法政を圧倒していてもごり押しで得点を奪っているようなイメージがない。この「不思議」の原因については後で考察してみたい。



ほぼ5分に1本の割合で得点を重ねていく東海大。10分にはラインアウト、モールからLO西川がトライ。16分にはFWでのボールキープから左サイドに展開してWTB平尾がトライ。さらに24分、今度は法政陣22m付近でのスクラムを押し込み、8→9から左サイドのWTB平尾にボールを渡して難なくトライ。東海大は手綱を緩めず、アンストラクチャーからもセットプレーからもボールを前進させ、最後はBKに託す形でパスを繋いで得点を増やしていく。

この日の東海大で圧巻だったのは、後半の39分から試合終了間際までに3トライを奪った底力と集中力。法政はボールを持って攻撃する時間帯が減ると確実にゴールラインが遠くなっていく。そしてファイナルスコアは76-7と思わぬ大差が付いて試合が終了した。しかし、スコアはほぼ同じながら、かつての逆の結果となってしまっていた頃のような絶望感は感じられないことが不思議な法政の敗戦ではあった。また、東海大にしても、2戦目で法政とあたったことはラッキーだったかも知れない。緒戦の流経大戦を分析すればこのアタックは想定内。対策を練っていたことで被弾を最小限の1発に押さえることが出来たように思われる。勝敗は動かないとしても、お互いが緒戦での対戦なら法政の得点は増え、失点は減っていたような気もする。



◆試合後の雑感 Part1/まずはアタックからの法政

ここ数年は低迷状態で、昨シーズンは入替戦を闘うことになってしまった法政。どこから手を付ければいいのだろうかという状態だった。すべてを解決するには相当な年数が必要になることも危惧される。ならば、自分達が得意としている(はずの)部分でチームを作り、とにかく自信を取り戻す。法政の再建は、組織ディフェンスには多少目を瞑っても、まずはアタックに活路を見いだすことに託す。とくに前年度上位校との4連戦になる前半戦でアタックを仕上げ、その後に徐々にディフェンスを整備していき、失点を減らしていく。法政の首脳陣にはそんなシナリオがあるのかも知れない。大量失点とは裏腹に、選手達が自信を持ってプレーしているように見えたことから、まずは第一段階はクリアしたように思える。

◆試合後の雑感 Part2/強い肉体は何のため?

この試合で強く印象に残ったことは(不思議だったこととも言えるが)東海大が余裕を持ってプレーしているように見えたこと。ブレイクダウンなどの局面局面での戦いを観ても、殆どの場面で東海大の選手の方がパワーで上回り、かつ無理をしていないように見えた。それはJスポーツのオンデマンドで見てより顕著になった点と言える。

ラグビーは強靱な肉体を必要とするスポーツだと言うことは衆人が認めるところ。ケガをしないことは当然として、コンタクトで負けないことも大切だ。しかし、身体を作ることの必要性は別なところにもあるような気がする。とにかくプレーを確実かつ安定したものとするために強い肉体が必要となる。帝京大のラグビーを観ていておぼろげながら感じていた事が、この試合を観てより明確になった感がある。

帝京大の強さは僅差になればなるほど発揮される。帝京大と対戦しているファンにとっては、あと1トライが何故取れないのか不思議で仕方ない。ひとつ思ったことは、帝京大の選手は同じプレーをする場合でも、状況によって負荷を変えられるのではないかということ。負荷を上げても精度が落ちないようにプレー出来る、あるいは負荷を落としても雑にならないようにプレー出来ると言い換えるられる。同じプレーでもかける負荷が違うことで、対戦相手に「通用している」と勘違いさせているかも知れない。かける負荷をコントロールすることは試合での集中力を保つことにも繋がる。

あくまでも邪推だが、東海大も帝京大の真の強さに気付き、単に身体を強くするだけでなく、負荷をうまくコントロール出来るようにトレーニングを行っているのではないだろうか。もしかしたら、一番最初にこのことに気付いたのは関東学院かも知れない。そして帝京大が続き、その後を東海大が追う。奇しくも3校の指導者は日体大のOB。部外者の勝手な妄想かも知れないが、東海大が本当に強くなるのはこれからかも知れない。余裕(緩みではない)を見せても大勝したこの日の法政との戦いぶりを見てそんなことを想った。

ラグビー 最強・最速になるヤマハ式肉体改造法 (ヤマハラグビー部の㊙トレーニング)
大塚 潔
マキノ出版

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