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関東学院大学 vs 中央大学(関東大学リーグ戦G1部-2016.10.02)の感想

2016-10-07 01:00:14 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


第2節に引き続き第3節も熊谷ラグビー場Bグランドでの観戦。Aグランドの改修工事の関係で本日はいつものメインスタンド側が入り口になっていた。今日こそはメインスタンドでの観戦といきたいところだったが、いざスタンドに上がってみると眼前にチーム関係者用の巨大なテントが鎮座ましましている。そうでなくても屋根がむしろ視界を遮るような感じの構造になっているので、目線は低くてもバックスタンド側に回った。ピッチが近く、選手の息づかいを感じながらの観戦はラグビーの醍醐味といえる。

いまさら言っても仕方ないが、メインスタンドを最低でも1000~2000人収容レベルの規模にしていたらと思う。ピッチはAグランドに勝るとも劣らないのだから、通常の試合ならとても観やすい競技場になるはず。つくづくAグランドのバックスタンドに築かれた土手の上は最高のビュースポットだったなと思う。そして、そこから観たBグランドでの試合は何故か印象に残っているものが多い。熊谷ラグビー場での私的20年史をひもとけば、とにかく「波瀾万丈のBグランド」なのだ。

さて、本日は1部に復帰したばかりの関東学院が中央大に挑む。とにかく一度チームの(人為的とも言える)崩壊を経験し「2部リーグでの3年間」を余儀なくされた今の関東学院はチャレンジャー。しかし、大学王者として君臨したチームの基礎が完全に崩壊してしまったわけではない。それを感じさせたのが10-42の大敗ながら復活への確かな手応えを見せてくれた大東大戦だった。本日はもしや?と何だか胸騒ぎがする中でキックオフを待つ。東海大、大東大と1部リーグのレベルを経験したところで、果たして関東学院は白星を挙げることができるか。



◆前半の戦い/中央大の攻勢に堪えた関東学院が優位に試合を運ぶ

関東学院のキックオフで試合開始。浅めに蹴って長身(190cm)のNo.8宮川にマイボール確保を託す作戦だがノックオン。アドバンテージから中央大の攻勢が始まる。FWに拘るかとも思われたが、BK展開のパワー勝負。アタックが単調というか力任せなこともあり関東学院の低いタックルにことごとく止められる。1年生から基本的にスターターを務めるSH長谷川はFWを操る選手というイメージだったが、早めのテンポでどんどんパスアウト。後半から出てくる藍好(住吉)を意識しているのかも知れないが関東学院のディフェンス面の健闘もあり、有効なアタックとはならない。

中央大は切り札のWTB伊藤にボールが渡らなければビッグゲインが望めない状況だが、関東学院は防戦一方となる。6分に関東学院が自陣10mライン付近でオフサイドの反則。PKからボールをタッチに出して得意のモールで勝負かと思われたが、中央大はショットを選択。ゴール正面ながら40mの距離のPGを浜岸が確実に決めて中央大が幸先よく3点を先制した。

リスタートのキックオフ。今度はハイタワーの宮川がボールの確保に成功し、関東学院がオープンに展開して中央大陣22m内に攻め込むものの惜しくもタッチに押し出される。単調でパワー勝負の感が強い中央大のアタックに対し、関東学院はFWをうまく使ってテンポよくボールを繋いで攻める。14分、中央は自陣からのFK(フェアーキャッチ)を起点にして関東学院陣に攻め上がるが、ターンオーバーに成功した関東学院が一気に逆襲。CTB吉良がラインブレイクして、丁寧にパスを受け取ったFB今村がゴールラインを駆け抜ける。GKも成功して関東学院が7-3と逆転に成功した。

ディフェンスを崩されたショックもあったためか、中央大はキックオフでラインオーバーの初歩的ミスを犯す。関東学院のセンタースクラムを起点としたウラへのキックに対する中央大の蹴り返しが関東学院陣10m付近でタッチを切りラインアウト。ここを起点として関東学院がBKに展開し、SO古賀のショートパントがCTB青山への絶妙のキックパスとなる。タイミングよく併走していた吉良が青山からパスを受け取りゴールラインに到達。GK成功で14-3と予想外の展開に観客席が沸く。



やることなすことがうまくいく関東学院に対し、力強さはあっても単調感が否めない中央大。ボールを支配している時間は長いがなかなか有効なアタックに繋がらない。エリア獲得のためのキックが多い展開の中で試合は膠着状態となる。言い換えれば五分と五分。体格面では劣勢ながら2部リーグで3シーズン戦っていたチームとは思えない戦いぶりは関東学院ファンにとっても意外だったかも知れない。28分、中央大はカウンターアタックからの連続攻撃でゴールラインに到達かと思われたが惜しくもノックオンとツキにも恵まれない。後半にもゴール目前で選手がタッチに押し出されてしまう場面があった。

しかし、31分に中央大に「試合の流れを変えたかもしれないプレー」のパート1が飛び出す。関東学院陣での相手ボールスクラムを強力に押し込みターンオーバーに成功。BKに展開して関東学院陣22m内に攻め上がる。ここも中央大にノックオンがあり関東学院は命拾いするが、自陣ゴールを背にしてのスクラム。当初は劣勢ながらもスクラムで堪えていた関東学院だったが、ここもあっさりとターンオーバーを許す。こうなれば中央大は得意のモールでじっくり攻め込むだけ。中央大FWの塊がゴールラインを越えたところでレフリーはペナルティトライを宣告する。GK成功で14-10と関東学院のリードは4点に縮まった。これ以降、関東学院のスクラムが崩壊に近い状態となったことを考えると、大きな「ワンプッシュ」のように思われた。

しかし、関東学院も粘る。前半も残り僅かとなった37分、関東学院はFB今井が正面約38mのPGを成功させて17-10。さらに40分、中央陣10m/22mの位置でのラインアウトを起点としたアタックでキックパスがFB今井に渡りトライ。GKは失敗するが22-10と効率よく得点を奪った関東学院の(中央大ファンだけでなく関東学院ファンにとっても?)まさかのリードで前半が終了した。宮川主将の高さ、BK展開に絶妙のキックパスとロングPGとスクラムで劣勢だったことを除けば関東学院がほぼ完璧なゲーム運びを見せた前半。このままいけば関東学院に貴重な復帰後の初白星が記録されるはず、だった。



◆後半の戦い/地力を発揮した中央大の貫禄勝ちも実態は関東学院の自滅

中央大のパワーを耐え忍ぶ形ではあったが、ほぼ理想的なゲーム運びを見せた前半の関東学院。後半もこのままリードを保って勝利を掴みたいところ。キックが多い展開で必然的にラインアウトも多くなるのだが、中央大は宮川の高さに苦しみなかなか得意のモールに持ち込めない。その中央大は後半開始早々の2分にSH長谷川に代えて早々と住吉を投入して局面の打開を図る。しかし、テンポアップを目指すはずが、実際は前半にみせたBK展開が影を潜め、FW戦に拘る形となる。ちぐはぐ感も漂うのだが、この戦術変更がじわじわと関東学院を追い詰めていくことになる。

中央大FWが持ち味を発揮し始める中でも、後半の序盤は関東学院にツキがあった。9分、関東学院は中央大陣でパスミスを拾ったFWの選手がすれ違いのような格好で一気に中央大ゴールへ。誰もがそのままトライと思った瞬間、ピッチの内外を唖然とさせるワンプレーが出る。ゴールポストに向かって併走していたFB今井に山なりの15人制ではなかなかみかけないパスが放たれた。今井はそのままゴールポスト中央にボールを持ち込むが、スタンドから上がった「パスミスにならなくてよかった。」「スローフォワードを取られたら最悪だ。」の声も頷ける。何となくだが、ここでグランド内に張り詰めていた緊張感が一気に緩んだような状態になったことは否めない。これが正に試合の流れを変えたかも知れないプレーのパート2となった。

おそらくここで中央大の選手達(とくにFW)のハートに火が付いたに違いない。得点は29-10と関東学院にとっては安全圏に近づいた格好だが、FW周辺に拘りを見せる中央大が完全にペースを掴み、関東学院は防戦を余儀なくされる展開となる。ラインアウトからはもちろんモールだが、スクラムも押し込んでサイドを攻めてモールに持ち込む。まずは17分、そのモールから1トライを奪いGK成功で17-29と中央大のビハインドは12点に縮まる。さらに24分、関東学院は自陣22m内での中央大ボールのピンチでボールのタップに成功するものの、ゴール前に転がったボールを確保したのは中央大。ラックから住吉が持ち前のスピードを活かして一気にゴールラインを越えた。GK成功で24-29と遂に中央大のビハインドは一発逆転が可能な5点まで縮まった。



こうなると試合は完全に中央大ペース。前半は肉弾戦に対抗できていた関東学院だったが、自陣ゴールを背にしてのスクラムが多い状況になると苦しい。そして31分、この試合を決定づけるワンプレー(試合を決めたシリーズのパート3)が中央大に出る。自陣10m付近のマイボールスクラムからSO浜岸が渾身のアタックで強力にボールを前に運ぶ。このワンプレーがここまで再三関東学院の左サイドを切り裂いていたWTB伊藤のトライに結びつく。浜岸のランには鬼気迫るものが感じられた。ここで前に出れば試合を決めることが出来るという確信に満ちたアタック。地味だが堅実なプレーでチームを引っ張ってきた主将兼司令塔のここ一番のプレーにより31-29と僅か2点差だが、中央大が逆転に成功する。

大逆転とも言える展開に前半は大人しかった中央大応援席のボルテージは上がる。しかし、逆転を許したとは言え、関東学院のビハインドは2点。PGが1本決まれば再逆転は可能だ。そしてそのチャンスは4分後にやって来た。36分、中央大が自陣で反則を犯した位置は関東学院にとって左中間35mの位置。しかし、無情にもPGはゴールポストに当たって外れる。中央大応援席からも漏れ聞こえた安堵の中で、あとはFWでボールを保持しながら前進を図るのみ。終了間際の42分に住吉が疲労の色濃い関東学院のディフェンダー達が棒立ちの状態となる中、一気にゴールラインに駆け込み勝敗は決した。結果的には地力に勝る中央大の貫禄勝ち。しかし、後半の32分までリードしていたのは関東学院で、最後に試合をひっくり返すチャンスも巡ってきたことを考えると、関東学院の自滅という印象の方がより強い戦いだった。



◆試合終了後の雑感/メンタル面に見る大学ラグビーの難しさ

大学ラグビーのメンタル面の難しさを感じさせられた試合だった。ミスが起こるのは仕方ない。失敗は積極性の裏返しでもある場合も多い。一番やってはいけないのは、精神的な緩みで自ら緊張感ばかりか勝利も手放してしまうこと。言い換えれば自滅ということになる。試合内容からは大学ラグビーの未成熟な部分が散見されて好ゲームとは言い難い。しかし、見どころの多い面白いゲームではあった。それを感じることが出来たのは、ほぼグランドレベルに使い熊谷ラグビー場のBグランドでの観戦だからかも知れないと思ったりもする。

それはさておき、掴みかけた勝利をあと一歩のところで逃した関東学院だが、着実に復活への道程を歩んでいるように見える。大東大戦で感じたことがより現実味を帯びてきたのがこの試合での戦いぶりだった。キックオフやラインアウトでは宮川の高さが武器になるので、あとはFWのスクラムの強化。FWとBKの連携をみても、ピッチ上での選手達の創造性を活かしたアタックを取り戻すまでにそんなに時間はかからないと思う。

一方の中央大だが、前半と後半の戦いぶりを見比べてみると、何ともちぐはぐな感じが否めない。最初からFW戦に拘ればという想いもあるが、首脳陣としてはBKのアタックを試したい意図があったのかも知れない。逆転勝利の原動力は身体を張ったFW陣と後半から投入されて2トライを挙げた住吉になると思う。しかし、この試合で一番強く印象に残るのは、4シーズンに渡って司令塔を任されているSO浜岸の安定したプレー。派手さとは無縁の印象が強い選手だが、後半の逆転勝利を呼び込むトライに繋がった渾身のランなど勝負所でとても頼りになる選手であることを確信した。

ハルのゆく道
村上 晃一
天理教道友社

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